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後日譚 聖女の祈りと、新しい命の鼓動
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⚫︎平和なリゾートの女将として
魔王ヘルヴィが陥落し、世界に真の平和が訪れてから数ヶ月の時が流れた。
かつて瘴気に包まれていた魔王城は今や大陸全土にその名を轟かせる『超高級温泉リゾート・ヘルヴィ城』として生まれ変わっていた。
黒かった外壁は白く磨き上げられ、殺風景だった荒野には色とりどりの花が植えられ、地下のマグマを利用した大展望温泉からは今日も真っ白な湯けむりが立ち上っている。
「いらっしゃいませ。旅の疲れは癒やされましたか?」
エントランスのロビーで柔らかな微笑みを浮かべて宿泊客を出迎える美女がいた。
元・聖女であり、今はカイトの正妻(筆頭)を務める神宮寺サオリだ。
彼女は、リゾートの制服としてカイトが用意した『着物(訪問着)』を艶やかに着こなし、その清楚な佇まいで客たちを魅了していた。
「あ、ああ……噂通りの美人だ……」
「ここが魔王城だなんて信じられないな」
客たちの感嘆の声を聞き流しながらサオリは優雅に会釈をする。
カイトがオーナーであるこのリゾートで、彼女は実質的な「女将」として日々の運営を取り仕切っていた。
計算高いユミが経理を、美意識の高いセラフィナがスパや美容部門を、鼻の利くショコラが食材管理や警備を、そして元魔王のヘルヴィが「マスコット(兼、ゲームコーナーの主)」を担当している。
完璧な布陣。
そして夜になれば最上階のスイートルームで、愛する夫・カイトとの甘い時間が待っている。
すべてが順調で、すべてが幸福だった。
――はずだった。
「……あら、可愛い」
ふと、サオリの視線がロビーの隅に釘付けになった。
そこには人間の家族連れがいた。
若い夫婦とその手にはよちよち歩きの小さな子供。
母親が子供を抱き上げ、父親がそれを愛おしそうに撫でている。
「きゃっきゃっ!」
子供の無邪気な笑い声がロビーの高い天井に響く。
その光景を見た瞬間、サオリの胸の奥にズクリと鋭い痛みが走った。
(……いいなぁ)
羨ましい。
妬ましい。
そして焦れったい。
サオリは無意識のうちに、着物の帯の上から自分の平らなお腹をさすっていた。
毎晩のようにカイトと愛し合い、彼の一部をたっぷりと注ぎ込まれている。
避妊などしていない。
カイトの遺伝子(LP)は強力で、私たちヒロインの体も活性化しているはずだ。
それなのに、なぜ「兆候」がないのだろう。
「……サオリ?どうした、顔色が悪いぞ」
背後から心配そうな声がかかった。
振り返ると、作業着(ツナギ)姿のカイトが立っていた。
どうやら温泉設備の点検に行っていたらしくタオルで汗を拭っている。
その逞しい腕、男らしい首筋、そして漂う雄の匂い。
それだけでサオリの子宮がキュンと収縮する。
「あ……カイトさん。お疲れ様ですわ♡」
「ああ。……あの親子を見ていたのか?」
カイトが視線を家族連れに向ける。
「最近は家族連れの客も増えたな。平和になった証拠だ」
「ええ……そうですわね。とても幸せそうです」
サオリは微笑んだが、その笑顔はどこか寂しげだった。
カイトはそれに気づいたのか優しく彼女の肩を抱いた。
「俺たちも、負けないくらい幸せだろ?」
「……はい。もちろんですわ♡」
サオリはカイトの胸に顔を埋めた。
幸せだ。
嘘ではない。
でも、だからこそ「欲」が出る。
この幸せを永遠の形として残したい。
カイトさんとの愛の結晶をこのお腹の中で育てたい。
そして何より――。
(わたくしの体が、カイトさんの子供を孕んで……誰の目にも明らかなほどお腹を大きくして……『カイトさんに種付けされたメス』だと世界中に見せつけたい……♡)
それは聖女としての祈りではなく、歪んだ独占欲と被虐心が入り混じった、
彼女特有の業(カルマ)だった。
⚫︎A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)の予知能力
その日の夕方。
リゾートの事務室でカイトはAmazonの管理画面を開いていた。
「在庫チェックよし。……今月の売上も右肩上がりだな」
平和な世界で、A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)スキルは物流の要となっていた。
食材、アメニティ、建築資材。
全てがここから供給されている。
ユミと共に開発したシステムは安定稼働していた。
【ピンポーン♪】
不意に、軽快な通知音が鳴った。
画面上に見たことのないポップアップウィンドウが表示される。
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【AIによる行動・生体データ解析に基づき、以下のパッケージを作成しました】
「ん?おすすめ商品?いつもならセール品の通知なのに『至急』ってなんだ?」
カイトは首を傾げた。
今まで自分が欲しいと思ったものを検索して買うことはあっても、AI側からプッシュ通知で、しかもセット商品を送りつけてくることなどなかった。
「……誤作動か?まあ、ポイントは腐るほどあるし確認してみるか」
カイトは軽い気持ちで【注文確定】のボタンを押した。
数秒後。
空間が歪みデスクの上に一つの段ボール箱が現れた。
いつもの茶色い箱ではなく、淡いピンク色のリボンが印刷された少し特別なパッケージだ。
「なになに……?」
カイトがカッターで封を開ける。
横でお茶を淹れていたサオリも興味深そうに覗き込んだ。
「何が届いたんですの?」
「いや、A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)が勝手に勧めてきたんだよ。……中身は……えっ?」
カイトの手が止まった。
箱の中から出てきたのは、戦場にもリゾート運営にも全く関係のないアイテムたちだった。
一つ目。
【デジタル排卵日検査薬(高精度・スマイルマークでお知らせ)】
二つ目。
【葉酸サプリメント(妊娠初期の胎児形成をサポート)】
そして、三つ目。
【高級シルクサテン・マタニティランジェリー(授乳機能付き・ベビードールタイプ・黒)】
「…………は?」
カイトはアイテムを手に取り固まった。
検査薬に、サプリに、妊婦用の下着。
どう見ても「子作り」および「妊娠」のためのセットだ。
「おいおい、なんだこれは。……AIのやつ先走りすぎだろ」
カイトは苦笑した。
確かに夜の営みは激しいが、まだ誰も妊娠していない。
これはバグか、あるいは余計なお世話というやつだ。
「あはは、参ったな。これは返品して……」
「……カイトさん」
カイトが箱を閉じようとした時、サオリの震える手が彼の腕を掴んだ。
見ると、サオリの瞳が異様なほどの熱量で箱の中身――特に『検査薬』と『黒いランジェリー』に釘付けになっていた。
「サ、サオリ?」
「……返品、なさるのですか?」
「え?ああ、だってこれ、必要ないだろ?サイズも合うかわからないし……」
「必要……ありますわ」
サオリの声が上ずっていた。
彼女は箱の中から『デジタル排卵日検査薬』を素早く抜き取った。
「A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)は、こちらの世界の理(ことわり)を超えた高度な知性を持っているとユミさんが言っていました」
「ま、まあ、そうだけど」
「ならば……これは『啓示』ですわ」
サオリの瞳が妖しく潤む。
「A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)は計算したのです。……今夜こそがその『タイミング』であると」
⚫︎鏡の前の受胎告知
「……少し、休憩をもらってもいいですか?」
サオリはそう言い残し、箱を持って足早に自室(カイトとの寝室)へと消えていった。
カイトは呆気に取られて見送るしかなかったが、彼女の背中から立ち上るフェロモンがいつもとは違う「決意」を帯びていることには気づいていた。
◇
寝室に入ったサオリは、鍵をかけ震える手で箱を開けた。
「……カイトさんの、赤ちゃん……」
彼女は『マタニティランジェリー』を取り出した。
それは妊婦用とは思えないほど淫らで洗練されたデザインだった。
大きくなるお腹を優しく包み込みつつ、胸元は授乳のために大きく開き、太ももは露わになるような機能美とエロティシズムが融合した一品。
サオリは着物を脱ぎ捨て素肌の上にそのランジェリーを纏った。
「…………ぁ」
姿見の前に立つ。
鏡の中の自分。
お腹はまだ平らだ。
だからこそ、お腹周りの布地が少し余っているのが、逆に「不在」を強調し、空虚さを感じさせる。
「……ここが、膨らむのですわ……」
サオリは自分の下腹部を両手で包み込んだ。
想像する。
カイトの種を受け入れ、着床し、命が芽生え、十月十日をかけて大きくなっていく様を。
(わたくしの体が変形してしまうほどカイトさんの遺伝子に侵食されたい……)
(お腹が大きくなればもう隠せない。誰が見ても『カイトに種付けされた女』だと分かる……♡)
(聖女が孕んで、母乳を出して……ただの『お母さん』になる……なんて背徳的で幸福なのでしょう……♡)
彼女の中の被虐心(マゾヒズム)が母性という新たな燃料を得て、爆発的に燃え上がった。
ゾクゾクと背筋が震え、秘部が勝手に潤み出し、黒いランジェリーを濡らしていく。
「……確認、しなければ」
サオリは『検査薬』の封を切った。
もし、A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)の予測が正しければ。
今日が、その日だ。
数分後。
「……っ!」
液晶画面に浮かび上がったのはくっきりとした『ニコちゃんマーク(排卵日・受精可能ピーク)』だった。
「……あぁ……神様、いいえ、A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)様……」
サオリは検査薬を胸に抱き、鏡の中の自分に向かってとろけるような笑みを向けた。
それは清楚な女将の顔ではない。
発情期を迎えた、貪欲な雌の顔だった。
「……今夜です。……今夜、絶対に頂きますわ……♡」
ガチャリ。
ドアノブが回る音がした。
カイトだ。
彼が様子を見に来たのだ。
「サオリ?大丈夫か?ずっとこもって……」
「……カイトさん」
サオリは振り返った。
夕闇が迫る部屋の中で黒いマタニティランジェリーを纏い、妖艶に浮かび上がる白い肌。
その瞳には、退路を断った女の覚悟が宿っていた。
「……見てくださいまし。……わたくしのこの『空っぽ』なお腹を」
彼女はゆっくりとカイトに歩み寄り、その手を取って自分の下腹部へと導いた。
「……ここを、埋めてください。……ただの精液(みず)ではなく貴方の『命』で……♡」
「サオリ……お前、その格好……」
「準備は、整いました。……A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)も、体も、心も。……あとはカイトさんが注いでくれるだけです……♡」
サオリはカイトをベッドへと押し倒した。
いつもは奉仕される側を好む彼女が、今夜は「奪う側」としてカイトの上に跨った。
リゾートの夜景よりも輝く、生命の神秘と欲望の宴が今始まろうとしていた。
魔王ヘルヴィが陥落し、世界に真の平和が訪れてから数ヶ月の時が流れた。
かつて瘴気に包まれていた魔王城は今や大陸全土にその名を轟かせる『超高級温泉リゾート・ヘルヴィ城』として生まれ変わっていた。
黒かった外壁は白く磨き上げられ、殺風景だった荒野には色とりどりの花が植えられ、地下のマグマを利用した大展望温泉からは今日も真っ白な湯けむりが立ち上っている。
「いらっしゃいませ。旅の疲れは癒やされましたか?」
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元・聖女であり、今はカイトの正妻(筆頭)を務める神宮寺サオリだ。
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「あ、ああ……噂通りの美人だ……」
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カイトがオーナーであるこのリゾートで、彼女は実質的な「女将」として日々の運営を取り仕切っていた。
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そして夜になれば最上階のスイートルームで、愛する夫・カイトとの甘い時間が待っている。
すべてが順調で、すべてが幸福だった。
――はずだった。
「……あら、可愛い」
ふと、サオリの視線がロビーの隅に釘付けになった。
そこには人間の家族連れがいた。
若い夫婦とその手にはよちよち歩きの小さな子供。
母親が子供を抱き上げ、父親がそれを愛おしそうに撫でている。
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子供の無邪気な笑い声がロビーの高い天井に響く。
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カイトの遺伝子(LP)は強力で、私たちヒロインの体も活性化しているはずだ。
それなのに、なぜ「兆候」がないのだろう。
「……サオリ?どうした、顔色が悪いぞ」
背後から心配そうな声がかかった。
振り返ると、作業着(ツナギ)姿のカイトが立っていた。
どうやら温泉設備の点検に行っていたらしくタオルで汗を拭っている。
その逞しい腕、男らしい首筋、そして漂う雄の匂い。
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「あ……カイトさん。お疲れ様ですわ♡」
「ああ。……あの親子を見ていたのか?」
カイトが視線を家族連れに向ける。
「最近は家族連れの客も増えたな。平和になった証拠だ」
「ええ……そうですわね。とても幸せそうです」
サオリは微笑んだが、その笑顔はどこか寂しげだった。
カイトはそれに気づいたのか優しく彼女の肩を抱いた。
「俺たちも、負けないくらい幸せだろ?」
「……はい。もちろんですわ♡」
サオリはカイトの胸に顔を埋めた。
幸せだ。
嘘ではない。
でも、だからこそ「欲」が出る。
この幸せを永遠の形として残したい。
カイトさんとの愛の結晶をこのお腹の中で育てたい。
そして何より――。
(わたくしの体が、カイトさんの子供を孕んで……誰の目にも明らかなほどお腹を大きくして……『カイトさんに種付けされたメス』だと世界中に見せつけたい……♡)
それは聖女としての祈りではなく、歪んだ独占欲と被虐心が入り混じった、
彼女特有の業(カルマ)だった。
⚫︎A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)の予知能力
その日の夕方。
リゾートの事務室でカイトはAmazonの管理画面を開いていた。
「在庫チェックよし。……今月の売上も右肩上がりだな」
平和な世界で、A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)スキルは物流の要となっていた。
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「…………は?」
カイトはアイテムを手に取り固まった。
検査薬に、サプリに、妊婦用の下着。
どう見ても「子作り」および「妊娠」のためのセットだ。
「おいおい、なんだこれは。……AIのやつ先走りすぎだろ」
カイトは苦笑した。
確かに夜の営みは激しいが、まだ誰も妊娠していない。
これはバグか、あるいは余計なお世話というやつだ。
「あはは、参ったな。これは返品して……」
「……カイトさん」
カイトが箱を閉じようとした時、サオリの震える手が彼の腕を掴んだ。
見ると、サオリの瞳が異様なほどの熱量で箱の中身――特に『検査薬』と『黒いランジェリー』に釘付けになっていた。
「サ、サオリ?」
「……返品、なさるのですか?」
「え?ああ、だってこれ、必要ないだろ?サイズも合うかわからないし……」
「必要……ありますわ」
サオリの声が上ずっていた。
彼女は箱の中から『デジタル排卵日検査薬』を素早く抜き取った。
「A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)は、こちらの世界の理(ことわり)を超えた高度な知性を持っているとユミさんが言っていました」
「ま、まあ、そうだけど」
「ならば……これは『啓示』ですわ」
サオリの瞳が妖しく潤む。
「A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)は計算したのです。……今夜こそがその『タイミング』であると」
⚫︎鏡の前の受胎告知
「……少し、休憩をもらってもいいですか?」
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カイトは呆気に取られて見送るしかなかったが、彼女の背中から立ち上るフェロモンがいつもとは違う「決意」を帯びていることには気づいていた。
◇
寝室に入ったサオリは、鍵をかけ震える手で箱を開けた。
「……カイトさんの、赤ちゃん……」
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それは妊婦用とは思えないほど淫らで洗練されたデザインだった。
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「…………ぁ」
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カイトの種を受け入れ、着床し、命が芽生え、十月十日をかけて大きくなっていく様を。
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彼女の中の被虐心(マゾヒズム)が母性という新たな燃料を得て、爆発的に燃え上がった。
ゾクゾクと背筋が震え、秘部が勝手に潤み出し、黒いランジェリーを濡らしていく。
「……確認、しなければ」
サオリは『検査薬』の封を切った。
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今日が、その日だ。
数分後。
「……っ!」
液晶画面に浮かび上がったのはくっきりとした『ニコちゃんマーク(排卵日・受精可能ピーク)』だった。
「……あぁ……神様、いいえ、A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)様……」
サオリは検査薬を胸に抱き、鏡の中の自分に向かってとろけるような笑みを向けた。
それは清楚な女将の顔ではない。
発情期を迎えた、貪欲な雌の顔だった。
「……今夜です。……今夜、絶対に頂きますわ……♡」
ガチャリ。
ドアノブが回る音がした。
カイトだ。
彼が様子を見に来たのだ。
「サオリ?大丈夫か?ずっとこもって……」
「……カイトさん」
サオリは振り返った。
夕闇が迫る部屋の中で黒いマタニティランジェリーを纏い、妖艶に浮かび上がる白い肌。
その瞳には、退路を断った女の覚悟が宿っていた。
「……見てくださいまし。……わたくしのこの『空っぽ』なお腹を」
彼女はゆっくりとカイトに歩み寄り、その手を取って自分の下腹部へと導いた。
「……ここを、埋めてください。……ただの精液(みず)ではなく貴方の『命』で……♡」
「サオリ……お前、その格好……」
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サオリはカイトをベッドへと押し倒した。
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