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第14章 魅惑のポーションは誰のため? どきどき☆恋愛サバイバル!
爆発は恋の合図!? ピンク色の監獄
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翌日の午後。
工房では、いつも通りの光景が繰り広げられていた。
僕、アルト・フォン・レヴィナスは、研究室のデスクで、新たなプリズム・チャームの設計図と睨めっこしていた。
その、僕だけの聖域の外…工房のリビングスペースからは、平和の象徴とも言える、賑やかな声が聞こえてくる。
「だから!アルトのおやつは、愛情のこもった、この手作りクッキーに決まってるでしょ!」
リゼットが、ハートの形をした、少しだけ焦げ目のついたクッキーの皿を、テーブルに、ドン、と置く。
「非論理的ね、ブラウンさん。彼の脳が必要としているのは、糖分による一時的な覚醒作用ではなく、持続的なエネルギー供給を可能にする、良質なタンパク質とビタミンよ。私が持ってきた、このナッツとドライフルーツの盛り合わせこそが、最適解だわ」
クラウディアが、リゼットの皿の隣に、これまた、ドン、と、木の実の皿を置く。
「む…!拙者の用意した、この兵糧丸は、栄養バランスも腹持ちも完璧でござるぞ!」
天井の梁から、菖蒲が、黒い玉の入った小袋を、テーブルへと投下する。
「あらあら、うふふ。皆さん、とっても美味しそうです。わたくし、お紅茶を淹れてきますね」
そんな、一触即発の空気の中、エミリアさんだけが、聖母の微笑みを浮かべていた。
そう。
アルトは研究に没頭し、リゼットとクラウディアは「アルトのおやつは栄養バランスか愛情か」で口論し、菖蒲は物陰から主君の寝首を掻く機会を虎視眈眈と狙い、エミリアはそんな全員にお茶を淹れている。
それが、僕たちの、愛おしい日常だった。
その日常の裏側で、ただ一人。
世界の法則を、そして、自らの運命を、根底から覆そうとしている者がいた。
悪の組織の幹部、ルージュ・ブリッツだ。
彼女は一人、工房の片隅で、怪しげな大鍋を、必死にかき混ぜていた。
その顔は、真剣そのもの。
だが、その口元は、だらしなく緩みっぱなしだった。
「サラマンダーの鱗に、月光草の涙、そして…乙女のため息を一さじ…。ふふん、これで、あの男も、アタシの虜よ!」
うふ♡ うふふ♡ うふふふ♡
彼女の脳内スクリーンには、成功後の、輝かしい未来予想図が、フルカラーで上映されていた。
この薬を飲んだアルトが、理性のタガを外し、獣のような瞳で、アタシに迫ってくる。
「ルージュ…君がいないと、僕は、ダメになってしまう…」
そんな、甘い言葉を囁きながら、アタシを、壁際に追い詰めて…。
きゃー!
迫られたらどうしよう。
最初は、ちょっと、焦らしてあげようかしら。
「な、何するのよ!」なんて、お約束のセリフを言ってみたりして。
でも、そうなったら、アタシ、我慢できるかな…。
いや、無理ね!絶対、無理!そのまま、彼の胸に飛び込んで、思いっきり、その唇を、奪ってやるんだから!
と、妄想が全開になっていた。
楽しみで、仕方ない。
顔がずっと、にやけて、とめられない。
だが、彼女は気づいていなかった。
古代の魔導書に記された「乙女のため息」とは、比喩表現ではなく、高純度の魔力を秘めた希少な触媒のことだったということを。
そして、その横のページに、小さな文字で、こう書かれていたことにも。
『――警告:術者が、対象への強すぎる恋心を抱いている場合、魔力が暴走し、術者の意図しない、予測不能な効果を、広範囲に及ぼす危険性あり。特に、嫉妬、独占欲などの不純な感情が混ざった場合、その効果は、劇薬へと変ずるであろう――』
「よし、仕上げよ!」
ルージュは、高鳴る鼓動を抑えながら、大鍋の前に立つ。
そして、目を閉じ、愛しい、彼の顔を、思い浮かべた。
僕の、研究に没頭する、真剣な横顔。
時折見せる、子供のような、無邪気な笑顔。
そして、あの日、アタシを、その腕で、力強く、助けてくれた、たくましい背中。
彼女が、恋する想いを、アルトのことを、一途に想った、熱く、甘い吐息を。
「ふぅぅぅぅぅ……………」
と、ため息を、鍋に吹き込んだ、その瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!
鍋の中身は、凄まじい化学反応を起こし、ピンク色の光の柱となって、天を突いた。
「きゃあああああっ!?」
工房全体を揺るがすほどの大爆発。
爆心地である大鍋は、跡形もなく消し炭と化し、代わりに、ピンク色の、甘ったるい香りのする、濃密な霧が、一瞬にして工房を満たす。
「な、何事だ!?」
研究室から飛び出してきた僕の目の前で、工房の全ての扉と窓が、青白い光を放ちながら、ガシャン!という、重い音を立てて閉鎖されていく。
僕が、万が一のために設置していた、最高レベルの防衛システムが、工房内で発生した、高密度の、未知の魔力エネルギーを「敵性存在」と誤認し、作動したのだ。
分厚い魔力障壁によって、僕たちは、完全に、この工房という名の監獄に、封鎖されてしまった。
「みんな、警戒しろ!これは、ただの爆発じゃない!」
僕は、即座に、プリズム・チャームの解析機能を起動させる。
だが、その僕の警告は、一足、遅かった。
ピンク色の霧を吸い込んだ、ヒロインたちの様子が、おかしい。
「…アルト…」
リゼットが、うっとりとしたような、熱っぽい声で、僕の名前を呼ぶ。
「…プロデューサー…あなたの、その、理知的な瞳…」
クラウディアが、いつもの冷静さはどこへやら、恍惚とした表情で、僕を見つめてくる。
「アルトさん…なんだか、身体が、ぽかぽかしますです…」
エミリアさんが、その豊満な胸を押さえ、恥じらうように、頬を染める。
「主殿…ああ、主殿…!なんと、雄々しいお姿…!」
菖蒲が、その場で、へなへなと崩れ落ちそうになるのを、必死に堪えている。
「…アルト…見つけたわ、アタシの、王子様…」
そして、元凶であるルージュが、その瞳を、完全なハートマークにして、僕に、ふらふらと、近づいてきた。
みんなは、警戒体制に移ろうとするが、もはや、その思考は、完全に、ピンク色の欲望に、上書きされていた。
アルトのことを熱い眼差しで見つめて、ふらふらと近づいてきた。
その姿は、さながら、一人の獲物を狙う、飢えた、五匹の雌の肉食獣。
僕の、科学者としての冷静な頭脳が、警鐘を鳴らす。
これは、まずい。
非常に、まずい状況だと。
僕の、人生最大の、貞操の危機が、今、始まろうとしていた。
工房では、いつも通りの光景が繰り広げられていた。
僕、アルト・フォン・レヴィナスは、研究室のデスクで、新たなプリズム・チャームの設計図と睨めっこしていた。
その、僕だけの聖域の外…工房のリビングスペースからは、平和の象徴とも言える、賑やかな声が聞こえてくる。
「だから!アルトのおやつは、愛情のこもった、この手作りクッキーに決まってるでしょ!」
リゼットが、ハートの形をした、少しだけ焦げ目のついたクッキーの皿を、テーブルに、ドン、と置く。
「非論理的ね、ブラウンさん。彼の脳が必要としているのは、糖分による一時的な覚醒作用ではなく、持続的なエネルギー供給を可能にする、良質なタンパク質とビタミンよ。私が持ってきた、このナッツとドライフルーツの盛り合わせこそが、最適解だわ」
クラウディアが、リゼットの皿の隣に、これまた、ドン、と、木の実の皿を置く。
「む…!拙者の用意した、この兵糧丸は、栄養バランスも腹持ちも完璧でござるぞ!」
天井の梁から、菖蒲が、黒い玉の入った小袋を、テーブルへと投下する。
「あらあら、うふふ。皆さん、とっても美味しそうです。わたくし、お紅茶を淹れてきますね」
そんな、一触即発の空気の中、エミリアさんだけが、聖母の微笑みを浮かべていた。
そう。
アルトは研究に没頭し、リゼットとクラウディアは「アルトのおやつは栄養バランスか愛情か」で口論し、菖蒲は物陰から主君の寝首を掻く機会を虎視眈眈と狙い、エミリアはそんな全員にお茶を淹れている。
それが、僕たちの、愛おしい日常だった。
その日常の裏側で、ただ一人。
世界の法則を、そして、自らの運命を、根底から覆そうとしている者がいた。
悪の組織の幹部、ルージュ・ブリッツだ。
彼女は一人、工房の片隅で、怪しげな大鍋を、必死にかき混ぜていた。
その顔は、真剣そのもの。
だが、その口元は、だらしなく緩みっぱなしだった。
「サラマンダーの鱗に、月光草の涙、そして…乙女のため息を一さじ…。ふふん、これで、あの男も、アタシの虜よ!」
うふ♡ うふふ♡ うふふふ♡
彼女の脳内スクリーンには、成功後の、輝かしい未来予想図が、フルカラーで上映されていた。
この薬を飲んだアルトが、理性のタガを外し、獣のような瞳で、アタシに迫ってくる。
「ルージュ…君がいないと、僕は、ダメになってしまう…」
そんな、甘い言葉を囁きながら、アタシを、壁際に追い詰めて…。
きゃー!
迫られたらどうしよう。
最初は、ちょっと、焦らしてあげようかしら。
「な、何するのよ!」なんて、お約束のセリフを言ってみたりして。
でも、そうなったら、アタシ、我慢できるかな…。
いや、無理ね!絶対、無理!そのまま、彼の胸に飛び込んで、思いっきり、その唇を、奪ってやるんだから!
と、妄想が全開になっていた。
楽しみで、仕方ない。
顔がずっと、にやけて、とめられない。
だが、彼女は気づいていなかった。
古代の魔導書に記された「乙女のため息」とは、比喩表現ではなく、高純度の魔力を秘めた希少な触媒のことだったということを。
そして、その横のページに、小さな文字で、こう書かれていたことにも。
『――警告:術者が、対象への強すぎる恋心を抱いている場合、魔力が暴走し、術者の意図しない、予測不能な効果を、広範囲に及ぼす危険性あり。特に、嫉妬、独占欲などの不純な感情が混ざった場合、その効果は、劇薬へと変ずるであろう――』
「よし、仕上げよ!」
ルージュは、高鳴る鼓動を抑えながら、大鍋の前に立つ。
そして、目を閉じ、愛しい、彼の顔を、思い浮かべた。
僕の、研究に没頭する、真剣な横顔。
時折見せる、子供のような、無邪気な笑顔。
そして、あの日、アタシを、その腕で、力強く、助けてくれた、たくましい背中。
彼女が、恋する想いを、アルトのことを、一途に想った、熱く、甘い吐息を。
「ふぅぅぅぅぅ……………」
と、ため息を、鍋に吹き込んだ、その瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!
鍋の中身は、凄まじい化学反応を起こし、ピンク色の光の柱となって、天を突いた。
「きゃあああああっ!?」
工房全体を揺るがすほどの大爆発。
爆心地である大鍋は、跡形もなく消し炭と化し、代わりに、ピンク色の、甘ったるい香りのする、濃密な霧が、一瞬にして工房を満たす。
「な、何事だ!?」
研究室から飛び出してきた僕の目の前で、工房の全ての扉と窓が、青白い光を放ちながら、ガシャン!という、重い音を立てて閉鎖されていく。
僕が、万が一のために設置していた、最高レベルの防衛システムが、工房内で発生した、高密度の、未知の魔力エネルギーを「敵性存在」と誤認し、作動したのだ。
分厚い魔力障壁によって、僕たちは、完全に、この工房という名の監獄に、封鎖されてしまった。
「みんな、警戒しろ!これは、ただの爆発じゃない!」
僕は、即座に、プリズム・チャームの解析機能を起動させる。
だが、その僕の警告は、一足、遅かった。
ピンク色の霧を吸い込んだ、ヒロインたちの様子が、おかしい。
「…アルト…」
リゼットが、うっとりとしたような、熱っぽい声で、僕の名前を呼ぶ。
「…プロデューサー…あなたの、その、理知的な瞳…」
クラウディアが、いつもの冷静さはどこへやら、恍惚とした表情で、僕を見つめてくる。
「アルトさん…なんだか、身体が、ぽかぽかしますです…」
エミリアさんが、その豊満な胸を押さえ、恥じらうように、頬を染める。
「主殿…ああ、主殿…!なんと、雄々しいお姿…!」
菖蒲が、その場で、へなへなと崩れ落ちそうになるのを、必死に堪えている。
「…アルト…見つけたわ、アタシの、王子様…」
そして、元凶であるルージュが、その瞳を、完全なハートマークにして、僕に、ふらふらと、近づいてきた。
みんなは、警戒体制に移ろうとするが、もはや、その思考は、完全に、ピンク色の欲望に、上書きされていた。
アルトのことを熱い眼差しで見つめて、ふらふらと近づいてきた。
その姿は、さながら、一人の獲物を狙う、飢えた、五匹の雌の肉食獣。
僕の、科学者としての冷静な頭脳が、警鐘を鳴らす。
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