126 / 214
【番外編】―風と商機とスライム風呂―
商機は国境を越えて② 泡の陰謀、スライム爆発事件!
しおりを挟む
「ぷるぷるに酷似したスパ施設が、王都南門の近くに突如開業したウサって……!」
朝から慌てて飛び込んできたフィーナの報告に、会議室の空気が一変する。
「名称は《ぷよぷよスパリゾート》。外観も、宣伝文句も、うちと瓜二つ。ですが……」
セリアが眉をひそめ、報告書を広げた。
「使用されているスライムが粗悪で、泡が異常発泡して室内を埋め尽くす事態に。現在、王都衛生局が立ち入り検査中」
「完全にパチモンだにゃ……!」
ミュリルが尻尾を逆立てる。イッセイも真剣な表情で腕を組んだ。
「先に打った契約書と商標、設計図が守られていれば訴訟は成立するはず。だが、証拠がなければ意味がない」
すると、そこにずいっと前に出た影。
「だったら、あたしが行くにゃ!」
いつもの無表情にぽつりと力を込め、ミュリルが宣言する。
「このねこ、潜入捜査のプロにゃ。ぷよぷよの中に潜って、証拠を掴んでくるにゃ!」
「なんで探偵モード!?」「いつの間に探偵資格を……!?」などとツッコミが飛ぶ中、ミュリルはすでに変装済み。白いトレンチコートに、謎の丸眼鏡。耳はきっちり隠して、しっぽもスカーフで巻いていた。
「このために用意してたにゃ。行ってくる!」
「ぬ、抜け目ない……」
数時間後。
「にゃん! 証拠ゲットだにゃ!!」
ミュリルはイッセイ特製の《小型魔道録画珠》で撮影した映像を持ち帰ってきた。映像には、倉庫裏で“ぷるぷる”のラベルを手作業で貼る様子や、粗悪スライムに危険な魔力を注入している場面がはっきりと記録されていた。
「完璧です。これで王都商業裁定所に提出すれば、営業停止処分は確実」
セリアが契約書と映像を添えて訴状を作成する間にも、噂は瞬く間に広がっていった。
「模倣店、爆泡事件で閉鎖!」「やっぱり“本家ぷるぷる”が安全・安心ウサ!」
そして数日後。
ぷるぷる本店の玄関前には、長蛇の列が再びできていた。
「これが……信頼ってやつか……」
イッセイが呟くと、リリィは両手を広げて叫ぶ。
「これぞ、正義のスライムパワーウサ!」
「正義かは微妙にゃ……でもまあ、勝ったにゃ!」
フィーナは泡シャボンを飛ばしながら「祝・商標勝利記念ライブウサ!」と踊っていたが、セリアがすかさずスピーカーを切った。
「許可なく演奏禁止です」
そんなドタバタの中、王都だけでなくヴェルナリア王国の支店建設も正式に開始されることが決定。
「世界をぷるぷるにする計画、順調ウサ!」
リリィの言葉に、皆が頷いた。
その夜、イッセイは屋上から夜の灯火を見る。
「たかがスライム、されどスライム、か」
見上げる夜空に、薄く流れる雲。
だがその先には、確かに“未来”の光が見えていた。
朝から慌てて飛び込んできたフィーナの報告に、会議室の空気が一変する。
「名称は《ぷよぷよスパリゾート》。外観も、宣伝文句も、うちと瓜二つ。ですが……」
セリアが眉をひそめ、報告書を広げた。
「使用されているスライムが粗悪で、泡が異常発泡して室内を埋め尽くす事態に。現在、王都衛生局が立ち入り検査中」
「完全にパチモンだにゃ……!」
ミュリルが尻尾を逆立てる。イッセイも真剣な表情で腕を組んだ。
「先に打った契約書と商標、設計図が守られていれば訴訟は成立するはず。だが、証拠がなければ意味がない」
すると、そこにずいっと前に出た影。
「だったら、あたしが行くにゃ!」
いつもの無表情にぽつりと力を込め、ミュリルが宣言する。
「このねこ、潜入捜査のプロにゃ。ぷよぷよの中に潜って、証拠を掴んでくるにゃ!」
「なんで探偵モード!?」「いつの間に探偵資格を……!?」などとツッコミが飛ぶ中、ミュリルはすでに変装済み。白いトレンチコートに、謎の丸眼鏡。耳はきっちり隠して、しっぽもスカーフで巻いていた。
「このために用意してたにゃ。行ってくる!」
「ぬ、抜け目ない……」
数時間後。
「にゃん! 証拠ゲットだにゃ!!」
ミュリルはイッセイ特製の《小型魔道録画珠》で撮影した映像を持ち帰ってきた。映像には、倉庫裏で“ぷるぷる”のラベルを手作業で貼る様子や、粗悪スライムに危険な魔力を注入している場面がはっきりと記録されていた。
「完璧です。これで王都商業裁定所に提出すれば、営業停止処分は確実」
セリアが契約書と映像を添えて訴状を作成する間にも、噂は瞬く間に広がっていった。
「模倣店、爆泡事件で閉鎖!」「やっぱり“本家ぷるぷる”が安全・安心ウサ!」
そして数日後。
ぷるぷる本店の玄関前には、長蛇の列が再びできていた。
「これが……信頼ってやつか……」
イッセイが呟くと、リリィは両手を広げて叫ぶ。
「これぞ、正義のスライムパワーウサ!」
「正義かは微妙にゃ……でもまあ、勝ったにゃ!」
フィーナは泡シャボンを飛ばしながら「祝・商標勝利記念ライブウサ!」と踊っていたが、セリアがすかさずスピーカーを切った。
「許可なく演奏禁止です」
そんなドタバタの中、王都だけでなくヴェルナリア王国の支店建設も正式に開始されることが決定。
「世界をぷるぷるにする計画、順調ウサ!」
リリィの言葉に、皆が頷いた。
その夜、イッセイは屋上から夜の灯火を見る。
「たかがスライム、されどスライム、か」
見上げる夜空に、薄く流れる雲。
だがその先には、確かに“未来”の光が見えていた。
21
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる