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第十一章 異邦からの来訪者と、東京スカイツリー防衛戦
さらば異世界、こんにちは表参道②
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「イッセイくん! あの! あの赤い箱! 見て見て! 食べ物が出てきたウサーッ!」
「……ルーナ、リリィ、それは自販機だ。飲み物な。でもそのテンションで買い続けると小銭が消えるぞ」
翌朝。
一行は表参道の街に繰り出していた。イッセイの案内のもと、まずは衣服と生活用品の調達を終え、慣れないスニーカーでぎこちなく歩く異世界の姫たちは、街のすべてに目を輝かせていた。
「にゃああ! 今の何にゃ!? 鉄の鳥!? 空飛ぶ機械にゃっ!?」
ミュリルが駅前のモノレールを見て歓声を上げれば、
「ひ、人が……人が多いわ……密集しすぎてる……ダメ、無理、半径一メートル以内に十人いるって、これ……!」
潔癖のセリアは完全に挙動不審モードに突入していた。
「落ち着いてセリア。これは“都会”ってやつなんだ。多少の人口密度は――」
「その“多少”が怖いんですうぅぅぅ!!」
「まあまあまあ、はいこれ!」
フィーナがコンビニで購入したばかりの冷たいアイスバーをセリアの口に突っ込む。
「……ん。……ひゃっ、ひゃい……!? な、なにこの冷たさ! 氷じゃない、氷のくせに柔らかい!?」
「これが“コンビニスイーツ”ってやつですウサ! 文明の極致ウサ!!」
リリィが誇らしげにうなずき、隣ではシャルロッテがコンビニで購入した雑誌を読み込んでいた。
「すごいわ……この世界、文字が記録媒体で印刷されてる。しかもこのグラビアってやつ、ほぼ裸……」
「そ、それ見ちゃダメーーーッ!」
クラリスが真っ赤になってシャルロッテから雑誌を奪い取る。
「い、イッセイも注意して! わたし達、王族なのよ!? 公序良俗って概念が……!」
「クラリス、それ表参道のど真ん中で叫ぶ台詞じゃないから。落ち着こうな」
* * *
マンションに帰宅した夕暮れ、全員が新しい洋服に着替え、ホットプレートを囲んで晩ごはんタイムが始まっていた。
「うーん! この“牛肉”ってやつ、うまいにゃ~! 口の中でとろけるにゃ!」
「わたし、この“カルビ”って部位、完全に推すウサ!」
「この“タレ”というソースもすごいわ……何層にも重なる風味。魔法とはまた違った、匠の味……」
「この世界、食だけで覇権取れるな……!」
全員がテンションMAXの焼肉パーティーの中、イッセイはリビングの片隅にある転移装置を見つめていた。
リリィが隣に腰を下ろし、同じように装置に視線を向ける。
「……やっぱり、一ヶ月だウサ。魔力量から見ても、それ以上は無理」
「ああ。まあ、久々の帰省だと思えば、悪くないさ」
イッセイはふっと笑う。かつて一人で過ごしていたこのマンション。今や、騒がしくも温かい仲間たちの声が響くその空間に、どこか懐かしさと新しさを感じていた。
「それにしても……」
「ん?」
「すごいな、日本って」
リリィがぽつりと呟いた。
「魔法はないのに、電車が走ってて、食べ物がすぐ買えて、寒くも暑くもない部屋に住めて……。便利すぎて、ちょっと……ズルいウサ」
「でも、何かが欠けてる気もするだろ?」
「うん、確かに。なんか、味気ない感じがするウサ」
「魔力も、精霊もいない。代わりに、情報と速度が支配する世界さ」
「でも、イッセイがいたから、この世界にも……“ぷるぷる”が広がったウサよ?」
「……いや、広がらなくていいから、それは」
笑い合う二人の傍らでは、クラリスとルーナがテレビのリモコン操作に大苦戦し、シャルロッテがネット通販で“グラビア写真集”をうっかり購入し、セリアは無菌マスクを着けて風呂掃除に没頭していた。
東京の夜景が、今日も煌々と輝いている。
イッセイはふと思った。
(ここが現実で、あっちが異世界で――いや、どっちが夢でも、どっちが現でもいい。今、彼女たちと笑っていられるなら)
それが一番だ、と。
「……ルーナ、リリィ、それは自販機だ。飲み物な。でもそのテンションで買い続けると小銭が消えるぞ」
翌朝。
一行は表参道の街に繰り出していた。イッセイの案内のもと、まずは衣服と生活用品の調達を終え、慣れないスニーカーでぎこちなく歩く異世界の姫たちは、街のすべてに目を輝かせていた。
「にゃああ! 今の何にゃ!? 鉄の鳥!? 空飛ぶ機械にゃっ!?」
ミュリルが駅前のモノレールを見て歓声を上げれば、
「ひ、人が……人が多いわ……密集しすぎてる……ダメ、無理、半径一メートル以内に十人いるって、これ……!」
潔癖のセリアは完全に挙動不審モードに突入していた。
「落ち着いてセリア。これは“都会”ってやつなんだ。多少の人口密度は――」
「その“多少”が怖いんですうぅぅぅ!!」
「まあまあまあ、はいこれ!」
フィーナがコンビニで購入したばかりの冷たいアイスバーをセリアの口に突っ込む。
「……ん。……ひゃっ、ひゃい……!? な、なにこの冷たさ! 氷じゃない、氷のくせに柔らかい!?」
「これが“コンビニスイーツ”ってやつですウサ! 文明の極致ウサ!!」
リリィが誇らしげにうなずき、隣ではシャルロッテがコンビニで購入した雑誌を読み込んでいた。
「すごいわ……この世界、文字が記録媒体で印刷されてる。しかもこのグラビアってやつ、ほぼ裸……」
「そ、それ見ちゃダメーーーッ!」
クラリスが真っ赤になってシャルロッテから雑誌を奪い取る。
「い、イッセイも注意して! わたし達、王族なのよ!? 公序良俗って概念が……!」
「クラリス、それ表参道のど真ん中で叫ぶ台詞じゃないから。落ち着こうな」
* * *
マンションに帰宅した夕暮れ、全員が新しい洋服に着替え、ホットプレートを囲んで晩ごはんタイムが始まっていた。
「うーん! この“牛肉”ってやつ、うまいにゃ~! 口の中でとろけるにゃ!」
「わたし、この“カルビ”って部位、完全に推すウサ!」
「この“タレ”というソースもすごいわ……何層にも重なる風味。魔法とはまた違った、匠の味……」
「この世界、食だけで覇権取れるな……!」
全員がテンションMAXの焼肉パーティーの中、イッセイはリビングの片隅にある転移装置を見つめていた。
リリィが隣に腰を下ろし、同じように装置に視線を向ける。
「……やっぱり、一ヶ月だウサ。魔力量から見ても、それ以上は無理」
「ああ。まあ、久々の帰省だと思えば、悪くないさ」
イッセイはふっと笑う。かつて一人で過ごしていたこのマンション。今や、騒がしくも温かい仲間たちの声が響くその空間に、どこか懐かしさと新しさを感じていた。
「それにしても……」
「ん?」
「すごいな、日本って」
リリィがぽつりと呟いた。
「魔法はないのに、電車が走ってて、食べ物がすぐ買えて、寒くも暑くもない部屋に住めて……。便利すぎて、ちょっと……ズルいウサ」
「でも、何かが欠けてる気もするだろ?」
「うん、確かに。なんか、味気ない感じがするウサ」
「魔力も、精霊もいない。代わりに、情報と速度が支配する世界さ」
「でも、イッセイがいたから、この世界にも……“ぷるぷる”が広がったウサよ?」
「……いや、広がらなくていいから、それは」
笑い合う二人の傍らでは、クラリスとルーナがテレビのリモコン操作に大苦戦し、シャルロッテがネット通販で“グラビア写真集”をうっかり購入し、セリアは無菌マスクを着けて風呂掃除に没頭していた。
東京の夜景が、今日も煌々と輝いている。
イッセイはふと思った。
(ここが現実で、あっちが異世界で――いや、どっちが夢でも、どっちが現でもいい。今、彼女たちと笑っていられるなら)
それが一番だ、と。
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