侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第十一章 異邦からの来訪者と、東京スカイツリー防衛戦

さらば異世界、こんにちは表参道①

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「……準備はいいな? これより《転移装置》を起動する」



 イッセイの声に、三人の高校生たち――アキト、ユイナ、マコが頷く。



 ここは帝国領の最西部、《星降りの台座》と呼ばれる古代転移遺跡。転移結晶をセットし、魔力充填を終えた装置は淡く青白い光を放っていた。



「よし、スイッチ、オンっす!」



 アキトの叫びと共に、装置が光を放ち始めた。回転する魔導陣が地面に広がり、次第にその輝きは空間ごと包み込むほどに膨れ上がっていく。



「すごい……!」



「マジ、眩しっ! っていうか風! 髪の毛ぺったんこになるんだけどー!」



 マコの金髪がばさばさとはためく中、ユイナは冷静に目を閉じ、イッセイへと一礼を送った。



「本当にありがとう。あなたたちのおかげで、私たちは――」



 その瞬間だった。



 ――ボウッ!!



 装置の輝きが突然激しさを増し、まるで魔力が暴走したように周囲の空間が歪んだ。



「これは……魔力がっ、膨張してる……!? 退避しろッ!!」



 イッセイの警告も虚しく、光の奔流が一気に拡大し、そこにいた全員を――イッセイ、クラリス、ルーナ、サーシャ、フィーナ、セリア、ミュリル、シャルロッテ――全員を包み込んでいった。



 そして次の瞬間。



 ――どこまでも深く、どこまでも遠く。

 あらゆる魔力の流れが交錯し、重力も、時間も、境界も消え去るような光の渦の中で。



 彼らは、跳んだ。



* * *



 ――ピッ、ピッ、ピッ。



「ん……」



 イッセイがゆっくりとまぶたを開けると、見慣れた天井があった。



 白いクロス張り、間接照明、エアコン、そして――



「……テレビ、あれ、リモコン? ここは……表参道の、俺の部屋……?」



 彼は勢いよく起き上がり、リビングのガラス戸を開け放つ。



 ――目の前に広がっていたのは、東京の夜景。表参道ヒルズの一角、12階の高級マンション。そのバルコニーから見える風景は、かつて彼が暮らしていた“元の世界”だった。



 と、後ろで何かがゴソゴソと動く音がした。



「……イッセイくん……? ここどこ、なの?」



 クラリスが眠たげに立ち上がる。続いてルーナ、リリィ、フィーナ、ミュリル、セリア、シャルロッテ、サーシャ――全員が目を覚まし、次々と室内を見渡しては、ぽかんと口を開けた。



「わ、わ、ウサ!? 天井が白いっ!? 木じゃない!?」



「にゃ……なんか、空気が薄いけど……いいにおいがするにゃ」



「ここはどこなんだウサ!? 魔力の気配が……薄すぎるっウサ!!」



「ま、待って!? あの透明の箱、なんか光ってるわよ!? ……何あれ、冷蔵庫!? コールドゴーレムの一種!?」



「落ち着いてください皆さん! とりあえず水源を確保しましょう、念のためトイレの位置を確認――」



「セリア、戦時体制モード入らないでッ!」



 リビングは一瞬にして、異世界パニック劇場となった。



「……これが、現代の日本か」



 シャルロッテが静かに窓際に立ち、ガラス越しに高層ビルのネオンと車のヘッドライトを見つめる。



「やっぱり……魔導都市アルセントを超えてるわ。こっちが“現代文明”ってやつね」



「すごいにゃ……人間、ここまで進化してたのにゃ……」



 感動に震えるミュリルの耳がぴょこぴょこと揺れる中、リリィは一人、床に埋もれていた《転移装置》の破片に目を止めた。



「……動いてないウサ。……魔力、ゼロね」



「一応調べてみよう。こいつの仕組みは見覚えがある」



 イッセイとリリィが装置に手をかざすと、淡く反応した魔力の痕跡が浮かび上がる。



「……やっぱり。魔力切れだ。再充填に、少なくとも一ヶ月はかかるな」



「つまり……それまで、この世界に滞在ってことね」



「おお、なんかワクワクしてきたウサ! じゃあさっそく、探索しよう探索!」



「待てウサ! まずは服装を整えようウサ! この世界では下着姿で街に出ると通報されるウサ!!」



「……ミュリル、ルーナ、セリア、みんなストップだにゃーッ!! 勝手に扉を開けるなにゃッ!!」



 そして、リビングのテレビが突然つく。



《――現在、東京地方は快晴です。交通情報によりますと、表参道通りは現在も混雑――》



「しゃ、喋った……箱が……喋った……!!」



「しかも未来予知!? これが、この世界の神託装置……!」



「違う違うテレビだからッ!!」



* * *



 ――こうして、異世界組による、現代日本“表参道ライフ”が、波乱の幕を開けたのだった。
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