侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第十一章 異邦からの来訪者と、東京スカイツリー防衛戦

転移者たちと結晶探しの共闘②

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 《リュミエール旧機構》の内部は、想像以上に広大だった。



 苔むした石壁、天井を走る魔導導管、朽ちた階段と瓦礫。かつての魔導文明の息吹が残るこの場所は、今もどこか呼吸しているような、そんな不思議な空気を纏っていた。



「わっ、なんか薄暗くてゲームのダンジョンみたいだね……」



 マコがビクビクとイッセイの背中に隠れながらつぶやく。



「これは魔素が濃いせいだ。生物の活動が抑えられてる。……でも気を抜くな、トラップや魔獣が出る可能性はある」



 イッセイが冷静に警告を与えると、アキトが拳を握りしめた。



「大丈夫っす。こういうの、アニメとかで見てきたんで!」



「見るのとやるのは違うにゃ。……でも、いい目してるにゃ」



 ミュリルがニヤリと笑い、猫耳をピクリと動かす。後方では、セリアが何やら紙束を持ってブツブツ言っていた。



「契約書……魔獣に襲われた場合の免責事項……搬送費用……破損物に関する再建税……」



「セリアさん!? ここで帳簿開くのやめてくれる!?」



 リリィが額に手を当て、突っ込む。和やかさと緊張がないまぜになった探索の最中、ユイナの瞳が鋭く光った。



「……反応あり。東側、第二動力室。魔力の揺らぎがあるわ」



 導かれるように一行は通路を進み、やがてたどり着いたのは、球状の魔導炉が眠る部屋だった。そこには――



「これは……《転移結晶》!」



 クラリスが声を上げる。青白く光る巨大な結晶が、封印の中で淡く脈動していた。



「やった! これで……これで日本に帰れる!」



 アキトが思わず叫ぶ。その隣で、ユイナも一瞬だけ顔を綻ばせた。



「……まだよ。これを取り出すには、封印解除と魔素の安定化処理が必要。下手に触れば暴走するわ」



「じゃ、解除しよう。イッセイくんの出番ね!」



「いや、今回は違う」



 イッセイが一歩下がり、手のひらでユイナを示した。



「君がやってみてくれ。……これは君たちの未来に必要な結晶だろう?」



「……っ」



 ユイナの目が一瞬だけ大きくなり、やがて真剣な表情に変わった。



「わかったわ。やってみる」



 彼女は装置に近づき、静かに呪文を紡ぐ。目の前の結晶が、まるで応えるように光を放ち始めた。



 その光景を、イッセイは少し離れた場所で見守っていた。



「なんかさ、イッセイって本当のお兄ちゃんみたいっすね」



 アキトがふと漏らす。



「……本当の、か」



 イッセイの目が一瞬だけ遠くを見た。それは前世の記憶――現実世界での孤独な時間、そしてこの異世界で得た“家族”のような絆。



 その時だった。



 ゴゴゴゴ……ッ!



 突如、床が揺れ、部屋の奥の壁が崩れた。



「くっ、魔獣か!」



 瓦礫の隙間から現れたのは、半透明の粘体――巨大な“転移スライム”だった。青白い体に、転移結晶と同じ波動が宿っている。



「こいつ……結晶を喰って魔素を溜め込んでやがる!」



 イッセイがすぐさま剣を抜くが、それよりも早く、前に飛び出したのは――



「いっけえええええっ!!」



 アキトの跳躍。鍛え抜かれた肉体が、スライムの中心部へ一直線に拳を叩き込む。



 ――ドンッ!



 スライムの身体が大きく歪み、魔素が霧のように霧散した。



「ナイスにゃー!」



「ウサ、アキト、やるウサね!」



 仲間たちの声と共に、暴走する魔素が静まり、やがて結晶が完全な姿を現した。



「成功ね……結晶、取り出せるわ」



 ユイナが小さく頷く。



「よかった……!」



 マコが涙を浮かべながら結晶を抱きしめ、ぐしぐしと目をこする。



「これで……帰れるんだね……」



 その瞬間、遺跡の天井にぽっかりと光が差し込んだ。それは、彼らの希望を照らすような――未来への光だった。



* * *



 帰還のための結晶を得た高校生たちと、彼らに手を差し伸べたイッセイたち。



 だがこの出会いが、ただの通過点ではなく、運命の歯車を動かす始まりだったことを――この時、誰も知らなかった。
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