侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中！〜【奨励賞】

第十一章 異邦からの来訪者と、東京スカイツリー防衛戦

東京スカイツリー防衛戦①

「魔物が……この東京に……っ！」



　悲鳴と共に、再びスカイツリー展望台に衝撃が走った。外壁を砕いて侵入してきた魔物たちが、天井に張りつき、紫の瘴気を撒き散らしながら、四方八方へと飛び跳ねる。



　だが――。



「この程度、異世界なら初級クラスよ！　私に任せなさい！」



　クラリスが、気品と怒気をまとった剣閃を一閃。魔力の風が舞い、金色の魔法剣が闇を裂いた。



「にゃふふーん！　これはスリル満点にゃ！」



　ミュリルは展望フロアの柱を跳ね回りながら、跳躍魔法を駆使して敵を翻弄する。



「させないウサよっ！」



　フィーナは手を広げると、周囲に透明な魔力の壁を展開。《簡易結界・バニーバリア》。侵入してきた瘴気を弾き、人々を守る光の盾となった。



　イッセイが突っ込む横で、シャルロッテは展望台中央に転がる巨大な魔石の欠片に目を向ける。



「これは……空間干渉の核……。やはり、このゲートは不安定な“異界の連結口”です」



「つまり、放っておけばどんどん魔物が出てくるってことだな？」



「正確には、ここが完全に“開門”すれば、この世界が“もう一つの異界”と繋がる危険があります」



「上等だ」



　イッセイは《精霊剣リアナ》を握り直した。



「だったら――その前にぶった斬る！」



＊　＊　＊



　一方、避難誘導に回っていたルーナは、観光客たちを下層階へと誘導していた。



「みなさん落ち着いて！　非常口はあちらです！」



「うわぁあああ、姫様！？　本物の姫様が誘導してくれてる！？」



「すげぇ美人！」



「写真撮っていいですか！」



「ダメですっ！！」



　彼女の指揮の下、エレベーターが使えない中でもスムーズな退避が進んでいた。



　その頃――。



「ユイナ！　マコ！　避難できたかっ！？」



「大丈夫、展望台のカフェの奥に逃げ込んでる。でも、さっきから上の階で“空間が鳴ってる”の……まるで、こっちの世界が拒否してるみたいな……」



「うちらのせいで……東京が壊れるとか、やばくない！？」



　転移者の高校生たち、綾瀬アキト・桐原ユイナ・高梨マコの三人も、事態の深刻さを感じていた。



「オレらが帰ろうとしたせいで、門が不安定になってるとしたら……」



「ううん、それは違う。転移装置自体は正しく動いてた。多分、異世界と日本の“接点”が限界を迎えつつあるだけ」



「ってことは……誰かが“切る”しかないのか。異世界とこの世界の縁を！」



＊　＊　＊



　その頃、塔の最上層――スカイツリーの“てっぺん”に向かって、イッセイたちは走っていた。



　エレベーターは使えない。螺旋階段を駆け上がるその途中、ルーナが一歩並んでくる。



「イッセイくん、あのゲート……多分、“意志”を持ってる」



「ああ。俺にも感じた。リアナの剣が震えてる……まるで“拒んでる”みたいに」



「でも、なら尚更……行かなくちゃ。希望を守るために！」



　やがて最上階。吹き抜けの天井から、紫の裂け目――“ゲート”が禍々しい光を漏らしていた。



　空は割れ、異界の瘴気が渦を巻いている。その中心、影のように佇む魔物たち。



「来るぞ――！」



　イッセイが剣を構える。仲間たちもそれぞれの武器を手に、陣形を整える。



　異世界と現代の狭間で、世界の命運をかけた戦いが、今まさに始まろうとしていた――！