侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第十一章 異邦からの来訪者と、東京スカイツリー防衛戦

東京スカイツリー防衛戦②

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「来るぞ……!」



 イッセイが《精霊剣リアナ》を構えた瞬間、ゲートの裂け目から現れた巨大な魔物が、空中を引き裂きながら降下してきた。四つの腕、黒き鱗、紫に輝く瞳――まさに異界の使者と呼ぶにふさわしい禍々しき存在。



「見た目は最悪だけど……ぶっ飛ばす価値はありそうね!」



 クラリスが風のように舞い、光の剣で魔物の片腕を斬り裂いた。その一撃は確かに通じたが、魔物はたちまち再生し、瘴気を撒き散らして反撃に出る。



「おいおい、ゾンビ機能まであるのかよ……!」



 イッセイの苦笑を吹き飛ばすように、後方から魔力の奔流が走る。



「泡・全開ウサーーーー!!」



 フィーナが叫ぶと同時に、彼女が展開した“癒しの泡”が一気に展望フロアを包み込んだ。《ヒーリング・スライムバブル》――その泡はダメージを負った仲間の身体を回復し、瘴気を中和する聖なる泡となった。



「さすがはぷるぷるアイドルにゃ……!」



 ミュリルが泡に乗って飛び、空中戦で魔物の視線を引きつける。セリアは即座に魔導結界を構築し、仲間たちの足元を固めた。



「この戦闘領域、汚させないウサ」



「いや、そっちじゃないだろ! もっと戦略的にだな!」



 ツッコミを入れながらも、イッセイの指揮は冴えていた。戦いの中で、彼の背には、ひとつの確信が芽生えていた。



(この“門”――リアナの力が反応してる。やっぱり、これは異世界と繋がる“未完成の縁”だ)



 それを断たなければ、未来はない。



 その時――。



「イッセイくん、あれを見て!」



 シャルロッテが指差した先。ゲートの中央に、小さく光る核のようなものが浮かんでいた。



「あれが、結節点……!」



 ゲートを閉じる鍵。魔物たちがそれを守るように位置している。



「みんな、あれを叩く! 俺が行く! フォローを頼む!」



「了解ウサ!」



「にゃふ!」



「はい、結界固定します!」



 イッセイは跳躍した。《命の継承者》の名にふさわしく、彼の剣は精霊の力を纏って輝き、飛び散る瘴気を薙ぎ払ってゆく。



「――リアナ、見ていてくれ」



 イッセイの身体を、光の粒が包んだ。精霊たちの祈りが剣に込められ、刃が蒼く輝く。



「この世界を、“未来”を――守る!」



 渾身の一撃。《精霊剣リアナ・終式ファイナル》が、ゲートの結節核を貫いた。



 ――刹那、閃光が走る。



 衝撃波がスカイツリーの最上階を包み、魔物たちが叫び声とともに光の中へと消えていった。



 ゲートは、ゆっくりと――音もなく、閉じていった。



* * *



「……終わった?」



 息を切らしながら、ルーナがイッセイの隣に腰を下ろす。東京の空は、ようやくその青さを取り戻していた。



「うん。これで、しばらくはゲートも開かないはずだ」



 イッセイがそう言うと、クラリスが一歩前に出て、高く掲げられた展望フロアから下界を見下ろした。



「……この街、綺麗ね」



「異世界と違って、建物はまっすぐだけど、空気は同じだったな」



 ミュリルが肩に乗りながら呟き、フィーナが手を広げて深呼吸する。



「空も泡も、ウサは大好きウサ」



 どこか遠い、夢のような時間だった。



 けれど。



 戦いのあとに残るものは、確かな希望だった。



* * *



 夜。



 イッセイのマンションのリビングで、リリィが転移装置の計器を確認していた。



「魔力、チャージ完了ウサ!」



「明日には、帰れる……か」



 どこか名残惜しそうに呟くイッセイの横で、仲間たちが次々に“お土産”の袋を抱えていた。



「東京バナナは外せないにゃ」



「このマッサージチェア、王都でも売れますかしら?」



「この“しょうゆラーメン”っての、持ち帰れないの?」



「イッセイくん……もう一回だけタピオカ行ってもいい……?」



 騒がしい。けれど温かい。



「……帰ったら、泡風呂でも入るか」



「うん」



 その言葉に、仲間たちが一斉に頷いた。



 そして――。



 転移装置が再び、静かに起動音を立てた。
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