侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第十一章 異邦からの来訪者と、東京スカイツリー防衛戦

旅の終わり、再び異世界へ①

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 カーテンの隙間から差し込む陽光が、マンションの高級リビングをやわらかく照らしていた。



 東京・表参道の中心に位置するその部屋で、イッセイはソファに腰をかけ、湯気の立つカップを手にしていた。



 ブラックコーヒーの香りが、懐かしく胸に染みる。



(……あっという間だったな)



 転移してから一ヶ月。異世界の仲間たちと共に現代日本で過ごした、夢のような時間。

 だがその夢も、もうすぐ終わる。



「おはよう、イッセイくん」



 寝癖まるだしのミュリルが猫耳フードのパジャマ姿で現れ、ソファに飛び乗ってきた。



「にゃー……ラスト朝ごはん、しっかり食べてくにゃ」



「おはようって格好で言うな。あと、その“にゃ”も忘れろとは言ってないけど」



 苦笑しながらイッセイが応じると、続いてフィーナが“うさパジャマ”姿でキッチンからひょっこり顔を出した。



「朝ごはん、できてるウサよ~! 今日は“ごはん・みそしる・さけ・たまご”の王道ウサ!」



 テーブルには、彼女が見よう見まねで再現した“和食セット”が並んでいた。盛り付けは独特だが、香りは意外と本格的だった。



 次々と仲間たちが起きてきて、最後の日本の朝食を囲む。



 ルーナはタブレットでアニメを見ながら、「次元越えて見たいわね、続き……」とつぶやき、

 セリアは「この“箸”という道具、訓練が必要です」と、真剣な表情で卵焼きを摘んでいる。



 シャルロッテはすでにメモを取っていた。「冷蔵技術の民間普及レベル……この国、侮れないわ」



「この空間の技術……王都に導入したら、たぶん全部“魔導違反”で取り締まられますわね」

 クラリスの苦笑まじりのツッコミが、軽やかに空気を和ませた。



 笑って、騒いで、何気ない日常――

 それが、もうすぐ終わるとわかっているからこそ、ひとときの幸福が胸を打つ。



* * *



「さて……準備はいいか」



 転移装置のあるリビングの中心に皆が集まった。



 リリィがコンソールを操作しながら、頷く。



「魔力充填、完了ウサ! これで、いつでも出発できるウサ」



「……やっと、帰れるのね」



 ルーナがそっと胸元を押さえる。



「この世界、ちょっと好きになりかけてたけど……」



「俺もだよ。でも、帰る場所があるってのは、それだけで十分だろ」



 イッセイの言葉に、皆が微笑み返す。



 やがて装置が淡く光りはじめ、空間に振動が満ちる。



「なぁ、イッセイ」



 背後から、低く静かな声がかかった。



 綾瀬アキト――先に帰還したはずの男子高校生が、再び現れていた。



「なんだ、まだ帰ってなかったのか?」



「ああ……お前らが帰る瞬間を、見届けたくてな」



 隣には、桐原ユイナと高梨マコの姿もあった。どこか晴れやかな表情で、イッセイたちを見つめている。



「イッセイさん、皆さんと出会えてよかったです。私、帰ったら電子工学の道をもう一度志すつもりです」



「わたしも! この旅、インスタに投稿したらバズる自信あるよーっ」



「やめろ、それバレたら大騒ぎだ」



 笑い声がこだまする。



 そして。



 リリィが手を掲げた。



「それじゃ、起動ウサ――!」



 光が爆ぜるように広がる。



 まるで桜の花が舞い上がるように、転移装置から淡い粒子が噴き上がり、空間がねじれていく。



 その眩しさに目を細めながら、イッセイはふと、心の奥で“誰か”の声を聴いた気がした。



(――もう一つの世界、もう一つの未来。君が選ぶ場所に、道は続いていく)



「……リアナ?」



 囁くように呟いた瞬間、光が一行を包み込む。



 そして、音もなく――イッセイたちは姿を消した。



 表参道の空に、ただ春風だけが、柔らかく吹いていた。
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