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第十二章 蒼穹の方舟と、空に還る想い
プロローグ 風が告げる、空の彼方の呼び声
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王都に戻って数日。イッセイはシャルロッテと共に、郊外の森にある静かな鍛錬場へと足を運んでいた。柔らかな陽光が木漏れ日となって揺れ、涼やかな風が枝葉を撫でていく。
「もう少し、踏み込みが甘いです。――はい、次」
「おっと……さすがに容赦がないな、シャルロッテ」
軽やかな槍の動きが、イッセイの剣を絶妙な角度で弾いた。続けざまの連撃を受けながらも、イッセイは笑みを浮かべ、足を踏み替える。
「剣の間合いを活かすには、まず“風”を読むことです。力任せでは、空は斬れません」
「なるほど、言うだけあって、風みたいな動きだ……」
互いに額に汗を浮かべつつも、充実した空気が二人の間を流れていた。だが――その空気が、突如として変わる。
風が、止んだ。
「……シャルロッテ?」
「いえ、違います。これは……」
静寂。森の鳥すら鳴かず、葉も揺れず。空気の流れそのものが凍ったかのような、奇妙な無音の時間が訪れた。
そして――
《――方舟が、泣いている》
無数の声が、風に乗って耳元に囁きかけてくる。人間の言葉ではない。けれど、心の深い場所に直接届く、あの“精霊の声”。
シャルロッテが、息をのむ。
「……イッセイさん。聞こえましたか? 今の、“方舟”って……」
「聞こえた。“はこぶね”って言ってたな。しかも……泣いてる、って」
その瞬間、周囲の空気が一気に震え始めた。風が唸り、葉がざわつく。目には見えない精霊たちが、一斉に騒ぎ出したかのようだった。
《――浮遊諸島の、さらにその上。空に浮かぶ、古の都市》
《――蒼穹方舟》
《――風の民が住まう、空の守り手》
《――だが、風は今、乱れ。精霊雨は途絶え、空が壊れ始めている……》
精霊たちの声が次々に重なり、まるで合唱のように空気を震わせる。
「シャルロッテ、これは……」
「はい。……精霊たちが一斉に、何かを訴えている。『方舟』の異変。『風の民』の危機。そして……」
シャルロッテが顔を上げ、空を見上げる。
「“精霊雨”が止まりつつある……。あれはただの恵みの雨ではない、魔力を調和させる“命の循環”そのものです。放っておけば、この世界のバランスが崩れます」
イッセイもまた、空を仰いだ。青空の奥、遥か彼方に、何かがある気がした。まるで、その向こうから微かに響く叫び声が、胸に触れたような気がして――
「……行くしかないな。その《蒼穹方舟》ってやつへ」
「無論です。あの空に、きっと答えがある。私も……知りたいのです、風が伝えようとしている“未来”を」
帰還の報を王都に伝えた後、イッセイたちはすぐに仲間たちを招集した。クラリス、ルーナ、リリィ、フィーナ、セリア、ミュリル、サーシャ――そして、風の声を最も感じ取れるシャルロッテ。
「“空の民”がいるってんなら……こりゃもう、行くっきゃないウサ! 新規市場の開拓チャンス、スカイ・ビジネス革命の予感だウサ!」
「浮いてる町、か……。何か、ロマンあるにゃ。泡も浮いてるし、似てるかも?」
「衛生環境が空気中にまで及ぶとは……管理項目が増えますね。万全の準備を整えなければ」
それぞれが思い思いに呟く中、イッセイは微笑み、仲間たちを見渡す。
「みんな、ありがとう。――また新しい冒険が始まる。空の果てまで、付き合ってくれ」
こうして、空に浮かぶ伝承の都市《蒼穹方舟》を巡る旅が、幕を開けた。
風が再び吹いた。精霊のささやきは、まるでその風に乗って、未来を予感させるかのように――
「もう少し、踏み込みが甘いです。――はい、次」
「おっと……さすがに容赦がないな、シャルロッテ」
軽やかな槍の動きが、イッセイの剣を絶妙な角度で弾いた。続けざまの連撃を受けながらも、イッセイは笑みを浮かべ、足を踏み替える。
「剣の間合いを活かすには、まず“風”を読むことです。力任せでは、空は斬れません」
「なるほど、言うだけあって、風みたいな動きだ……」
互いに額に汗を浮かべつつも、充実した空気が二人の間を流れていた。だが――その空気が、突如として変わる。
風が、止んだ。
「……シャルロッテ?」
「いえ、違います。これは……」
静寂。森の鳥すら鳴かず、葉も揺れず。空気の流れそのものが凍ったかのような、奇妙な無音の時間が訪れた。
そして――
《――方舟が、泣いている》
無数の声が、風に乗って耳元に囁きかけてくる。人間の言葉ではない。けれど、心の深い場所に直接届く、あの“精霊の声”。
シャルロッテが、息をのむ。
「……イッセイさん。聞こえましたか? 今の、“方舟”って……」
「聞こえた。“はこぶね”って言ってたな。しかも……泣いてる、って」
その瞬間、周囲の空気が一気に震え始めた。風が唸り、葉がざわつく。目には見えない精霊たちが、一斉に騒ぎ出したかのようだった。
《――浮遊諸島の、さらにその上。空に浮かぶ、古の都市》
《――蒼穹方舟》
《――風の民が住まう、空の守り手》
《――だが、風は今、乱れ。精霊雨は途絶え、空が壊れ始めている……》
精霊たちの声が次々に重なり、まるで合唱のように空気を震わせる。
「シャルロッテ、これは……」
「はい。……精霊たちが一斉に、何かを訴えている。『方舟』の異変。『風の民』の危機。そして……」
シャルロッテが顔を上げ、空を見上げる。
「“精霊雨”が止まりつつある……。あれはただの恵みの雨ではない、魔力を調和させる“命の循環”そのものです。放っておけば、この世界のバランスが崩れます」
イッセイもまた、空を仰いだ。青空の奥、遥か彼方に、何かがある気がした。まるで、その向こうから微かに響く叫び声が、胸に触れたような気がして――
「……行くしかないな。その《蒼穹方舟》ってやつへ」
「無論です。あの空に、きっと答えがある。私も……知りたいのです、風が伝えようとしている“未来”を」
帰還の報を王都に伝えた後、イッセイたちはすぐに仲間たちを招集した。クラリス、ルーナ、リリィ、フィーナ、セリア、ミュリル、サーシャ――そして、風の声を最も感じ取れるシャルロッテ。
「“空の民”がいるってんなら……こりゃもう、行くっきゃないウサ! 新規市場の開拓チャンス、スカイ・ビジネス革命の予感だウサ!」
「浮いてる町、か……。何か、ロマンあるにゃ。泡も浮いてるし、似てるかも?」
「衛生環境が空気中にまで及ぶとは……管理項目が増えますね。万全の準備を整えなければ」
それぞれが思い思いに呟く中、イッセイは微笑み、仲間たちを見渡す。
「みんな、ありがとう。――また新しい冒険が始まる。空の果てまで、付き合ってくれ」
こうして、空に浮かぶ伝承の都市《蒼穹方舟》を巡る旅が、幕を開けた。
風が再び吹いた。精霊のささやきは、まるでその風に乗って、未来を予感させるかのように――
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