侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

文字の大きさ
208 / 214
第十七章 最後の神具と、神々の審判

エピローグ:揺り籠への扉、最後の旅路へ

しおりを挟む
オリオンが消え、《創生の祭壇》には静寂が戻った。
目の前には、全ての始まりの場所へと続く、星屑を散りばめたかのような光の扉が、静かに佇んでいる。

俺たちの、そしてこの世界の運命を変えるための、最後の扉だ。

「……行ったのね」

ルーナが、ぽつりと呟いた。
その声には、強大な敵が去った安堵と、これから始まる最後の戦いへの緊張が入り混じっていた。

「ええ。そして、わたくしたちの“答え”は、神々の理にさえ“認められた”のですわ。……神々に、挑む者として」

クラリスの言葉には、もはや揺らぎはなかった。
王女としての誇りと、一人の仲間としての決意が、彼女の中で完全に一つになっていた。

そうだ。
俺たちは、神々の用意した絶望的な二者択一を拒絶し、俺たち自身の道を選ぶと宣言した。

その結果、神の理の象徴であった天秤は砕け散った。
もう、迷いはない。俺たちの進むべき道は、ただ一つ。

俺は、仲間たちに向き直り、そっと右手を差し伸べた。

「……最後にもう一度だけ、聞かせてくれ。この先にあるのは、世界の根源だ。千年の哀しみと、神々の罪、その全てが渦巻く場所だ。生半可な覚悟じゃ、魂ごと飲み込まれる。それでも……みんな、一緒に来てくれるか?」

それは、リーダーとしての問いかけではなかった。
共に死線を潜り抜けてきた、一人の仲間としての、問いかけだった。

最初に、俺の手の上に、力強く、そして温かい手が重ねられた。クラリスだった。

「当たり前ですわ。あなたのいない未来など、わたくしにはありえません。あなたが神々に挑むというのなら、わたくしは、あなたの隣に立つ、最初の剣となりましょう」

次に、しなやかな指が、俺の手にそっと触れた。ルーナだ。

「決まってるじゃない。こんな面白そうなクライマックス、見逃す手はないわ。それに……あんたが独りで格好つけるなんて、あたしが許さないんだから。最後まで、ちゃんとあたしを楽しませなさいよね」

「当然よ! あたしたちの『イッセイ&カンパニー』は、神々の理不尽な経営方針(システム)を覆して、世界一のハッピーエンドっていう利益(リターン)を出すの! その最終プレゼンに、社長(あんた)だけ行かせるわけないでしょ!」

リリィが、快活な笑顔で、ぐっと力強く手を重ねる。

一人、また一人と、その手が重ねられていく。

「イッセイ様。私の剣と、私の心臓は、最初からあなたのものです。あなたが赴く場所こそが、私のいるべき場所です」

セリアの不器用だが、絶対的な忠誠。

「イッセイ殿。拙者の剣は、貴殿と出会い、初めて守るべき未来を見つけた。その未来の果てを、この目で見届けるまで、退くことなどありえぬ」

サーシャの揺るぎない覚悟。

「精霊たちが、歌っています。あなたと共に、世界の哀しみを癒す時が来た、と。わたくしは、その声に応えます」

シャルロッテの清らかな祈り。

「ボクの歌は、もう迷わないウサ! 一番哀しい魂にこそ、一番優しい歌を届けるんだ! イッセイくん、連れてって!」

フィーナの太陽のような希望。

「……みんなが行くなら、ミュリルも行くにゃ。だって……家族は、ずっと一緒だにゃ」

ミュリルの無垢な信頼。

八人のヒロインと、俺。九つの手が、一つの塊となる。
その温もりこそが、神々の理を超えた、俺たちの答えであり、力だった。

俺は、重ねられた皆の手を、力強く握りしめた。

「……ありがとう、みんな。もう、何も言うことはないな」

俺は、光の扉へと向き直る。

「行くぞ、みんな」

俺たちは、共に誓った仲間たちと、光の扉へと足を踏み入れた。
世界の最も深い場所、魔王とリアナの魂が眠る、最後の聖域へ。

それは、破壊のための戦いではない。
千年の孤独に涙する、二つの魂を救い出すための、最後の旅路。

俺たちの、本当の戦いは、ここから始まる。
光の向こう側で、世界の始まりの君が、きっと俺たちを待っている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...