侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第一章 覚醒編

ただいま、僕の家へ

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「――ご帰還ですね、若様」



屋敷の正門が開くと同時に、執事のヴァルトが恭しく頭を下げた。

無表情だが、ほんの少し目元が緩んでいるような気がした。たぶん、気のせいじゃない。



「ただいま、ヴァルト。ちょっと、人数増えたけど気にしないでね」



僕の後ろには、緊張気味のミュリル、フィーナ、セリア。

三人ともきちんとした服を着せているが、どこか落ち着かない様子だった。



「……誰でございますか?」



「旅の途中で助けた子たちで、今後は僕の保護下に置きたいと思ってる。彼女たちには、ちゃんとした生活と選べる未来が必要なんだ」



ヴァルトは少しだけ目を見開き、それからふっと息をついて静かにうなずいた。



「かしこまりました。屋敷としてはすでに三部屋ご用意いたしました。早速ご案内を」



「えっ、なんで準備できてるの!?」



「……お帰りの頃合いと、若様の“予想される行動”を考慮いたしました」



さすが有能執事。先読みがすぎる。



  * * *



「――まあ! なんて可愛らしい子たち!」



食堂に通されると、そこには僕の母、セリーナ様が待っていた。

やわらかな金髪を結い上げた優美な姿に、優雅な微笑み。

だけど……内面はおっかない。



「い、イッセイ、これは一体?」



姉のマリエ姉様も隣で怪訝な表情。

兄のレオン兄様は苦笑しながらもどこか楽しそう。



「えーと……色々あって、旅の途中で助けた子たちなんだ。事情を話したら、しばらく僕の保護下で暮らしたいって」



「ほう?」



姉様の目が鋭くなる。が、すかさず母が微笑みながら口を挟んだ。



「マリエ、顔が怖いわよ。イッセイがこうして“守りたい”と思える人に出会えたなら、それは素晴らしいことじゃない?」



「……それはそうだけど……まったく、子ども扱いしていたら、いつの間にか頼もしくなって……」



「わっ、姉さん、今ちょっと褒めた!?」



「褒めてない!」



家族の空気が一気に和らぐ。

ミュリルたちも、少しだけ安心した表情を浮かべた。



「にゃん……優しい人たち、なのにゃ」



「……こ、ここで暮らしていいのかなウサ……」



「……想像してたよりマシかも。……ちょっとだけね」



  * * *



その日の夕食後。



三人には個室が与えられ、着替えや生活用品も準備されていた。



「すごい……ふかふかのベッドウサ……!」



「ごはんも美味しかったにゃん! お風呂も入れるし!」



「……なんか、貴族ってイメージ変わったわ……」



「明日からは、家の中での過ごし方とかを教える係もつけるよ。慣れるまで、無理しなくていいからね」



「……うん。主さま……ありがとう」



「ありがとウサ……わたし、ちゃんと恩返しする……」



「……べ、別に感謝してなんか――あ、でもその……ありがと」



そうして、新しい生活が始まった。



“奴隷”だった少女たちは、少しずつ“名前のある生活者”になっていく。

僕の屋敷で、僕の家族と、そして――僕と共に。



これは、ほんの小さな一歩。

でも、たしかに世界が変わっていく音が、聞こえた気がした。
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