侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第一章 覚醒編

帰還の決意と、名前の贈り物

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「うん。やっぱり、名前って大事だと思うんだ」



僕は三人の少女たちを前に、ランプの明かりの下でそう切り出した。



昨夜、命をかけて救った亜人の少女たち――

銀髪の猫耳、青髪のウサ耳、褐色肌のダークエルフ。

まだお互いよそよそしい距離はあるけれど、食事を共にし、言葉を交わすことで、少しずつ表情に変化が出てきていた。



「名前……?」



青髪の少女が、小さな声で首をかしげた。



「そう。今まで、誰かにつけられた“番号”とか、“物の名前”で呼ばれてきたんだろう?

でも、これからは“自分の名前”で生きてほしい。誰かのものじゃなく、自分の人生として」



僕の言葉に、三人はそっと目を伏せる。



「それでね、よければ……僕から、名前を贈らせてほしい。もし気に入らなかったら、断ってくれて構わない」



猫耳の銀髪少女が、こちらをじっと見つめたあと、ふっと微笑んだ。



「主さまのくれる名前……欲しいにゃん」



「……わ、私も……イッセイさまの言葉、嬉しいですウサ」



ダークエルフの少女はちょっと目をそらしてから、低く答えた。



「仮、ってことで……悪くない名前なら、許す」



「じゃあ、まずは――」



僕は一人ひとりに目を向けながら、名前を紡いでいく。



「君は“ミュリル”。月明かりのような目をしてるから、月の精の意味を込めて」



「ミュリル……にゃんっ! 気に入ったにゃん!」



「君は“フィーナ”。静かに寄り添う優しさが、まるで水面の音みたいだったから」



「フィーナ……あ、ありがとうウサ……名前、嬉しい……」



「そして、君は“セリア”。強くて、賢くて、でも不器用なところもある。そんな君にぴったりの響きだと思うんだ」



「……な、なんで私の性格、そんなにわかってんのよ。……でも、嫌いじゃない。……セリア、か」



3人の顔に、少しずつ灯がともっていくのを感じた。

名前とは、ただの言葉じゃない。“これからの未来”を縫い合わせる最初の一歩だ。



  * * *



「さて……次は、大事な話なんだけど」



僕は真剣な表情で続けた。



「このまま君たちを街に置いていくことは、できない。安全も、生活も保証されない。だから、僕の家――アークフェルド侯爵家の屋敷に来てほしい」



「……貴族の屋敷……?」



「もちろん、簡単な話じゃない。家族や周囲の目もある。でも、僕は君たちを“保護する”んじゃなく、“共に生きる場所”を作りたいんだ」



「主さま……それって、ずっと一緒ってこと、にゃん?」



「私たち、迷惑じゃないウサ……?」



「……騙すつもりだったら、容赦しないからね」



「違うよ。僕が君たちと一緒にいたいと思った。ただそれだけ。

君たち自身が、“それでもいい”と思えるなら……僕は、どこまでも守るよ」



――沈黙のあと、ミュリルがぽんっと僕に抱きついた。



「行くにゃん! 主さまと一緒に! それだけで、十分にゃ!」



「フィーナも、行きたいウサ……そばにいたい……」



「……私も行くわよ。仮にね、仮。別に恩返しとかじゃないんだから」



「ありがとう」



僕は彼女たちの名を心の中でゆっくりと呼んだ。



ミュリル、フィーナ、セリア。

もう“番号”ではない。彼女たちは、彼女たち自身の名前を持つ存在だ。



(この名前が、彼女たちの人生の始まりになるなら――それを見届ける責任が、僕にはある)



  * * *



「さて。じゃあ、まずは家族へのプレゼンからだな……一番の強敵は、たぶん……姉さんか」



僕は苦笑しながらつぶやいた。



その横で、セリアが腕を組んで言った。



「ふん、貴族の姉なんて、私が黙らせてあげるわよ」



「……それは逆効果だからやめてー!」



焚き火代わりのランプの光が、部屋をあたたかく照らしていた。
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