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第二章 学園編
プロローグ 森の出会いは運命の香り
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「さて、そろそろ休憩しようか」
小鳥のさえずりと木漏れ日が降り注ぐ森の中。
僕――イッセイ・アークフェルドは、木陰で水筒の栓を開けた。
学園入学を目前に控えた今、日々の修行も最後の仕上げ段階だ。
(セリナ師匠から習った連撃技、あれはもっと繋ぎの速度が欲しい。メルティ先生の魔力制御訓練もあと数回は……)
そんなことを考えていた、そのときだった。
「――たすけてっ!」
甲高く、悲鳴が森に響く。
僕は反射的に跳ね起きると、気配を辿って茂みを走った。
開けた道に出たとき、すでに馬車は転倒していた。
魔物――甲殻に覆われた犬型のバジラウルフが三体、倒れ伏した兵士たちと、ひとつの馬車を取り囲んでいた。
そしてその馬車の傍で、かろうじて剣を構える少女。
流れる茶髪をポニーテールにまとめた、凛とした気品を感じさせる顔立ち。
その後ろには、紫髪の細身の少女が、ドレスを押さえながら彼女をかばうように立っていた。
(まずい、あと数秒も持たない――!)
「下がってください!」
僕は叫び、森を裂いて飛び出した。
一瞬の判断で巻物《氷棘の牢獄》を展開。
氷の槍が一斉にバジラウルフを串刺しにし、動きを止める。
剣を抜いた僕は、その間を縫うように魔物を斬り裂いた。
一息の間に、全てが終わった。
「……助かった、のですわね……?」
少女――いや、第三王女クラリスは、震える声で僕を見上げた。
「ご無事ですか、お二人とも。怪我は……?」
「わ、わたくしは……かすり傷だけ、ですの……あ、あなたは……?」
「イッセイ・アークフェルドと申します。通りすがりの……見習い剣士です」
「ふふ、通りすがりにしては、ずいぶん頼もしかったですこと」
そのとき、後ろの紫髪の少女――ルーナが口元を緩め、僕にぴたりと近寄ってきた。
「ん~、あなたってば、ちょっとカッコよすぎ。ねえ、ほんとに“通りすがり”?」
「……あはは、たまたま修行していただけですから」
「へぇ~。じゃあ、私たちに運命の出会いってやつかも?」
ルーナの指が僕の袖を撫でるように滑り、ちょっとだけくすぐったい。
「ルーナ、はしたないですわ。……けれど、わたくしも少し、気になりますの。あなたのこと」
クラリスが視線を逸らしながらも、頬をほんのり染めている。
(え……? なんだこの急展開)
僕は苦笑いしながら、二人を木陰へと誘導した。
「手が冷えていらっしゃる。こちらで温めます」
僕はクラリスの手をそっと包むと、彼女は目を見開いて――すぐに口を引き結んだ。
「……ぬ、ぬくもりを……その……ありがとう、ですの」
「ふふっ、クラリスってば、可愛い顔しちゃって」
「う、うるさいですわ、ルーナっ!」
一方、ルーナは僕の背中にぴたりとくっつきながら耳打ちしてきた。
「ねぇ……お兄さん。王都まで、送ってくれたりする?」
「もちろんです。怪我も心配ですし、護衛の代わりにお送りしましょう」
「やさしっ。じゃあ……その間、いーっぱいお話、してもいい?」
「……構いませんよ。たくさん質問されそうな気がしますが」
「ふふ、するよ。いーっぱい、ね」
その後の道中、クラリスは僕の出自や修行について熱心に尋ね、
ルーナはことあるごとに袖を引っ張ったり、僕の肩に顎を乗せたりと、自由気ままだった。
けれど、確かに――二人とも、心から安心した顔で笑っていた。
(こんな形で出会うなんて……世の中、何が起こるかわからないな)
そんなことを思いながら、僕は王都の城門を目指して、馬車を引いて歩いた。
その数日後。
魔法騎士学園の入学式で、ふたたび出会うとは――このとき、まだ知らなかった。
小鳥のさえずりと木漏れ日が降り注ぐ森の中。
僕――イッセイ・アークフェルドは、木陰で水筒の栓を開けた。
学園入学を目前に控えた今、日々の修行も最後の仕上げ段階だ。
(セリナ師匠から習った連撃技、あれはもっと繋ぎの速度が欲しい。メルティ先生の魔力制御訓練もあと数回は……)
そんなことを考えていた、そのときだった。
「――たすけてっ!」
甲高く、悲鳴が森に響く。
僕は反射的に跳ね起きると、気配を辿って茂みを走った。
開けた道に出たとき、すでに馬車は転倒していた。
魔物――甲殻に覆われた犬型のバジラウルフが三体、倒れ伏した兵士たちと、ひとつの馬車を取り囲んでいた。
そしてその馬車の傍で、かろうじて剣を構える少女。
流れる茶髪をポニーテールにまとめた、凛とした気品を感じさせる顔立ち。
その後ろには、紫髪の細身の少女が、ドレスを押さえながら彼女をかばうように立っていた。
(まずい、あと数秒も持たない――!)
「下がってください!」
僕は叫び、森を裂いて飛び出した。
一瞬の判断で巻物《氷棘の牢獄》を展開。
氷の槍が一斉にバジラウルフを串刺しにし、動きを止める。
剣を抜いた僕は、その間を縫うように魔物を斬り裂いた。
一息の間に、全てが終わった。
「……助かった、のですわね……?」
少女――いや、第三王女クラリスは、震える声で僕を見上げた。
「ご無事ですか、お二人とも。怪我は……?」
「わ、わたくしは……かすり傷だけ、ですの……あ、あなたは……?」
「イッセイ・アークフェルドと申します。通りすがりの……見習い剣士です」
「ふふ、通りすがりにしては、ずいぶん頼もしかったですこと」
そのとき、後ろの紫髪の少女――ルーナが口元を緩め、僕にぴたりと近寄ってきた。
「ん~、あなたってば、ちょっとカッコよすぎ。ねえ、ほんとに“通りすがり”?」
「……あはは、たまたま修行していただけですから」
「へぇ~。じゃあ、私たちに運命の出会いってやつかも?」
ルーナの指が僕の袖を撫でるように滑り、ちょっとだけくすぐったい。
「ルーナ、はしたないですわ。……けれど、わたくしも少し、気になりますの。あなたのこと」
クラリスが視線を逸らしながらも、頬をほんのり染めている。
(え……? なんだこの急展開)
僕は苦笑いしながら、二人を木陰へと誘導した。
「手が冷えていらっしゃる。こちらで温めます」
僕はクラリスの手をそっと包むと、彼女は目を見開いて――すぐに口を引き結んだ。
「……ぬ、ぬくもりを……その……ありがとう、ですの」
「ふふっ、クラリスってば、可愛い顔しちゃって」
「う、うるさいですわ、ルーナっ!」
一方、ルーナは僕の背中にぴたりとくっつきながら耳打ちしてきた。
「ねぇ……お兄さん。王都まで、送ってくれたりする?」
「もちろんです。怪我も心配ですし、護衛の代わりにお送りしましょう」
「やさしっ。じゃあ……その間、いーっぱいお話、してもいい?」
「……構いませんよ。たくさん質問されそうな気がしますが」
「ふふ、するよ。いーっぱい、ね」
その後の道中、クラリスは僕の出自や修行について熱心に尋ね、
ルーナはことあるごとに袖を引っ張ったり、僕の肩に顎を乗せたりと、自由気ままだった。
けれど、確かに――二人とも、心から安心した顔で笑っていた。
(こんな形で出会うなんて……世の中、何が起こるかわからないな)
そんなことを思いながら、僕は王都の城門を目指して、馬車を引いて歩いた。
その数日後。
魔法騎士学園の入学式で、ふたたび出会うとは――このとき、まだ知らなかった。
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