侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第三章 武闘会編

決勝戦――誓いと覚醒

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巨大な競技場は、不穏な静けさに包まれていた。

決勝カード「イッセイ・アークフェルド vs ノワール・オルタンシア」。

騒乱の余波が残るなか、それでも多くの観客と関係者が固唾を呑んで見守っていた。



「……イッセイくん、絶対に負けないで!」

「気をつけて――私たち、ここで祈ってますわ!」



クラリスとルーナ、仲間たちの声援がイッセイの背中を押す。

セリナとメルティ、師匠たちも静かに見守る。



フィールド中央、ノワールが無表情で立つ。

黒い剣から滲み出す魔力は、明らかに常人のそれではなかった。



(……これは、普通の戦いじゃない。ノワールさん、いったい何が――)



審判の号令が響く。



「決勝戦――開始!」



開幕と同時、ノワールは人間離れした速度で斬撃を繰り出す。

イッセイは咄嗟に回避し、なんとか剣を受け止めるが、腕に鈍い痛みが走る。



(速い……! でも、動きがまるで“感情”を感じない――)



ノワールは無言のまま、次々と魔力を込めた斬撃を放つ。

その剣筋は正確無比、時に冷たく、時に暴力的だ。



イッセイは必死で防戦しながらも、徐々にダメージを負っていく。



観客席の一角では、クラリスとルーナが手を握り合い、涙ぐみながら祈る。



「イッセイくん……お願い、無事でいて!」



ノワールの魔力がさらに膨れ上がる。

その体から黒い瘴気があふれ、フィールド全体が不吉な気配に包まれた。



「制御が……きかない……ッ!」



突如、ノワールが叫び声を上げ、魔力が暴走。

観客席の柵や装飾が破壊され、魔法障壁がバチバチと軋む音が響く。



(……ノワールは、“操られている”!?)



イッセイは覚悟を決め、

「ノワールさん! 本当のあなたは、こんな戦いを望んでないはずだ!」



叫びながら間合いを詰め、必殺の剣技――

渾身の一撃を繰り出す。



ノワールも無意識に応じるように、己の必殺剣で迎え撃つ。



二人の剣がぶつかり合い、激しい閃光と魔力の奔流がフィールドを駆け抜ける――!





数瞬の沈黙。



気づけば、ノワールの剣が砕け、イッセイの剣先が静かに相手の肩を捉えていた。



「勝負あり! 優勝――イッセイ・アークフェルド!」



主審の声が響く中、ノワールはふらりと膝をつき、蒼ざめた顔でイッセイを見上げる。



「……ごめん、ぼくは……っ」



その目にようやく“人間の光”が戻っていた。



イッセイは傷だらけのまま、ノワールの手を取り、しっかりと支える。



「もう大丈夫――君はもう、ひとりじゃない」



観客席は静まり返ったあと、やがて割れるような拍手と歓声に包まれる。



仲間たち、師匠、クラリス、ルーナ――

全員が涙ぐみながら、イッセイの勝利とノワールの救済を祝福していた。



(みんなを、守れた。僕は――この世界で、これからも前に進んでいく)



イッセイはそっと剣を握りしめ、静かに誓った。
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