侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

文字の大きさ
45 / 214
第五章 冒険編 〜ハイエルフとの出会い

精霊の試練と少女の微笑み

しおりを挟む
 ハイエルフの森の奥。苔むした石畳が連なる古の祭壇――“ユグリスの環”。神秘と静寂に包まれたその地に、イッセイたちは足を踏み入れていた。森の奥深く、木漏れ日が差し込むその空間は、まるで時が止まったかのように厳かで、美しかった。



「……ここが、試練の地、なんですね」

 イッセイは一歩前に進み、目を細めて周囲を見渡す。彼の表情には緊張と覚悟が浮かんでいた。



「ええ。ここ“ユグリスの環”は、精霊たちと心を通わせる者にのみ開かれる契約の地……」

 シャルロッテが静かに答える。その声音には敬意と、どこか試すような響きがあった。



 その瞬間、森の空気がぴたりと張りつめた。



 地面から淡く輝く緑の光が湧き上がり、小さな精霊たちが次々と姿を現す。蝶のように舞うその姿に、フィーナが思わず声をあげた。



「わわっ、これが精霊……なのかウサ! きれい……」



「ふわぁ……ちっちゃい妖精さんがいっぱいにゃん……」

 ミュリルがうっとりと両手を広げるも、精霊たちはひらりとそれを避けて舞い続けた。



「ふふっ、こりゃ簡単には懐かないって感じね」

 ルーナがいたずらっぽく笑いながら、イッセイに視線を送る。



「さて……僕の番だね」

 イッセイは膝をつき、静かに目を閉じた。胸に手を当て、心を込めて精霊たちに語りかける。



「この地に宿る精霊たちよ。我々は、敬意と共に訪れました。試練を与えるのなら、僕が受けましょう。真心をもって、あなたたちに向き合います」



 その言葉に、精霊たちが一斉にイッセイの周囲へと舞い降りる。淡い光が肩や額に触れ、柔らかく彼を包み込んでいく。



「すごい……完全に心を開いてる……」

 シャルロッテの口から、思わず漏れる驚きの言葉。



 そして、突如として空気が変わった。

 精霊たちが中央に集まり、緑の風の渦を描く。その中心に、一際大きな光が生まれる。



「……来るウサ! 何か、とんでもない存在が……!」

 フィーナが思わず身構えた瞬間、そこに姿を現したのは――人の姿を模した長髪の精霊。



「……我が名は、ユグリス。大樹の守り手なり。汝の真心、しかと見届けた」

 その声は、風が森の枝葉を優しく撫でるような響きを持っていた。



「この者、心に偽りなし。よって試練、合格とする」



 ユグリスの言葉に、周囲の精霊たちが歓喜のように舞い、祝福の風がイッセイを包んだ。



「すごい……試練、成功だにゃん……!」

 ミュリルがぱちぱちと拍手を送ると、ルーナもにっこり笑って言った。



「さすがイッセイくん。やるじゃない」



 イッセイは立ち上がりながら、少し照れくさそうに笑った。

「ありがとう。けど……僕だけの力じゃない。みんながそばにいてくれたから、ここまで来られたんだ」



 その言葉に、シャルロッテがゆっくりと近づいてくる。淡い陽光の中で彼女の銀髪がきらめき、少しだけ頬を赤らめていた。



「……イッセイさん。あなたのような人に、この森で出会えるとは思っていませんでした」



「僕も、あなたに出会えてよかった。精霊とも通じ合えるその心、僕にはとてもまぶしく見える」



 その一言に、シャルロッテの目がわずかに見開かれる。

「……もう少し、あなたと話をしてみたい。もし、許されるなら……」



 ルーナが横から口を尖らせる。

「ちょっとぉ、イッセイくんはモテすぎなんじゃないの?」



「ふふっ……でも、ちゃんと私たちにも時間、作ってくれるにゃん?」

 ミュリルがいたずらっぽく笑いながら身を寄せる。



「もちろん。みんな、僕の大切な仲間だから」

 イッセイの笑顔に、シャルロッテも小さく頷いた。



「では、その仲間に……いつか私も加われるように」



 少女のその微笑みは、まだ遠いけれど、確かに希望に満ちていた。



 こうして試練を終えた一行は、次なる目的地――精霊の里を目指して、新たな一歩を踏み出した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...