侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

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第五章 冒険編 〜ハイエルフとの出会い

断絶域への踏破と、精霊たちの囁き

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 霊樹ノアシェルの迎賓館で夜を明かした翌朝、空は透き通るような青さを湛えていた。

 だが森の奥へ進むにつれて、空気は次第に重く、濁っていく。



「……これが瘴気……」

 イッセイが鼻をかすかにしかめながら、地面を注意深く踏みしめる。



「空気の流れが歪んでるにゃん。まるで、森の怒りが渦巻いてるみたい……」

 ミュリルが耳をぴくぴくと動かしながら、声を潜めた。



「精霊たちの囁きも、断片的になってきたウサ。どんどん遠ざかっていく感じ……」

 フィーナが指先を宙にかざし、目を細める。



 ルーナは軽く苦笑しながらも、隣を歩くイッセイに肩を寄せた。

「イッセイくん、しっかりね? ここからが本番だよ」



「もちろん」

 イッセイは微笑み返し、背に携えた剣に手をかける。



 その後ろで、シャルロッテが一歩遅れて歩きながら、視線を地面に落としていた。



「……大丈夫、かな……私……」



「シャルロッテ」

 リリィがふいに声をかけると、彼女はびくっとして顔を上げた。



「不安なのはわかる。でも、無理に強がらなくていいよ。私たちは仲間……でしょ?」



 その言葉に、シャルロッテの瞳が揺れる。



「私は……まだ、その覚悟が……」



 イッセイが立ち止まり、彼女の方を向いて言った。

「仲間になるかどうかは、君が決めていい。でも、君がこの森を大切に想っているのは、もう伝わってるよ」



 その声には、決して強要する色はなかった。

 けれど、優しく、力強い響きがあった。



「……ありがとう。イッセイさん……」

 小さく呟いたその言葉は、まるで森に抱かれるように、静かに空へ溶けていった。



 そのとき——



 ぶわっ、と濁った風が吹き抜け、前方の木々の間から、黒紫の瘴気が吹き上がった。



「来るッ!」

 セリアが即座に剣を抜く。



 濃密な瘴気の中から、獣とも植物ともつかない魔物がうごめきながら姿を現した。

 まるで樹皮が溶けたような体躯、触手のような根が地を這い、毒々しい赤い眼がぎらつく。



「っ、瘴気獣です! 正面から来ますよ!」

 フィーナが警告を叫ぶや否や、魔物は巨体を揺らして突進してきた。



「行くぞ!」

 イッセイが抜刀し、真正面から迎え撃つ。



 セリアとルーナが左右から挟み込むように動き、リリィは後方から支援魔法を唱える。

 ミュリルの短剣が機敏に閃き、フィーナの治癒術が絶えず味方を守る。



 戦いの最中、シャルロッテは茂みの陰に身を伏せながら、その様子を見ていた。



(怖い……でも、皆が命を懸けて戦ってる……)



 彼女の両手が震える。

 けれど、その瞳には迷いとは違う色が宿り始めていた。



 イッセイが剣を振り抜き、魔物の片腕を裂いた。

 魔物は呻くような声を上げ、残る触手を振り回して反撃に出る。



「くっ……!」



 セリアが一瞬、足場を崩して体勢を崩す。その瞬間、魔物の触手が彼女を襲う——



「セリアさん、危ないッ!」

 シャルロッテの叫びと共に、彼女の手から放たれた光の矢が触手を撃ち落とした。



 光の中に、精霊の声が響く——



『お前の祈り、聞こえたぞ。選ぶは汝の決意なり』



 シャルロッテの体を、精霊の光が包む。



 仲間たちの目が見開かれた。



「シャルロッテ……君……!」



「私は、戦います。自分の森を、自分の手で守りたい……!」



 その言葉に、イッセイは力強く頷いた。
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