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第五章 冒険編 〜ハイエルフとの出会い
決断と祝福の精霊
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森の奥深く、瘴気の中心部にもっとも近いとされる「禁域」。その結界の前に、イッセイたちはついにたどり着いた。
黒くねじ曲がった根が地表を這い、毒々しい紫煙が静かに立ち上る。空気そのものがどこか淀んでおり、息をするたびに体力が削られていくような圧迫感があった。
「ここが……魔樹の瘴気の根源か」
イッセイが剣に手をかけながら、慎重に周囲を見渡す。
「空気の密度が変わってる……まるで、この場所そのものが異界に近いような気配ですの」
クラリスが眉をひそめ、護衛のルーナがそれを支えるように立つ。
「精霊たちが……泣いている。ここにいるだけで、心が締めつけられるようだわ」
シャルロッテが胸元に手を当て、精霊との交信に集中する。
「けど、まだ完全には堕ちてない。希望は……残ってる」
フィーナが前に出て、魔力を周囲へと広げながら言った。
その瞬間、大地が大きくうねり、腐ったような臭気と共に巨大な魔物が姿を現した。
木と獣が融合したような異形の存在で、体中から瘴気が噴き出している。
無数の触手、赤黒く濁った瞳、口の代わりに裂けた顎から漏れ出す瘴気の波——。
「出やがった……ッ!」
イッセイが剣を抜き、瞬時に構える。
「イッセイくん、援護するにゃん!」
ミュリルが跳躍し、双剣を抜いて急接近。
「回復と支援は任せて、うさ!」
フィーナが結界を展開し、味方全体を包むように魔力を流し込む。
「まさか、ここまで来るとは……けれど、引くつもりなどありません!」
セリアが毅然とした態度で前線に躍り出た。
「私も行くよ!」
リリィが弓を構え、矢に魔力を纏わせる。
激戦が始まった。
魔物の触手がうなりを上げ、瘴気が空間を歪めていく。
イッセイの剣が光を切り裂き、ミュリルとルーナが左右から挟み撃ちし、セリアが鋭く踏み込む。
フィーナが全体を支援し、リリィが遠距離から狙撃する中、シャルロッテだけが一歩後ろで震えていた。
「……私に……できるの? 本当に……」
その声はかすかだったが、イッセイには届いた。
「シャルロッテ!」
イッセイが強く叫ぶ。
「君の祈りを、精霊たちはきっと聞いてくれてる。信じるんだ、自分を」
だがそのとき、魔物が怒り狂ったように瘴気を爆発させた。
濃厚な闇が辺りを包み、視界を奪い、仲間たちをそれぞれ孤立させるように押し分ける。
「っく……この、瘴気の壁……!」
ルーナが咳き込みながら剣を構えるも、視界はゼロ。
「イッセイくん! どこ……っ!」
ミュリルの叫びも、濁った空気にかき消された。
その時だった。濃霧のような瘴気の中から、無数の触手が飛び出し、セリアとフィーナを打ち倒す。
「がっ……!」
「セリア!? フィーナ!」
イッセイが声を上げた次の瞬間、瘴気が襲いかかり、イッセイの体も地面に叩きつけられる。
「……くっそ……負けられない……」
膝をつきながら、それでも剣を手放さない。
だが、誰の目にも状況は絶望的だった。
「もう、ダメ……」
シャルロッテが震える声で呟いたその時——。
森の風が大きく渦を巻き、空間がひときわ輝いた。
柔らかな光が降り注ぎ、そこに現れたのは、精霊《シェイル=アルファリア》。銀白の髪をなびかせ、気品に満ちた人型の姿をとる。
『森の娘よ。そなたの声、確かに届いている。我が名はシェイル=アルファリア。風と清浄の祝福を司るもの』
「シェイル……アルファリア……?」
シャルロッテは光の中で手を伸ばし、涙を流しながら微笑んだ。
『そなたの勇気に応えよう。我が祝福を、この地に。そして、そなたに』
精霊の力が彼女の身に宿る。
まばゆい風の光が舞い、シャルロッテの身体を包み込む。
「……これが、精霊の祝福……あたたかい……」
そして彼女は静かに瞳を開き、輝く風を纏って前へ進み出る。
「イッセイさん、今です!」
「ああっ、行くぞ!」
イッセイが前に踏み込み、全員の動きが一つに合わさる。
ルーナとセリアが魔物の動きを封じ、ミュリルが脚を切り裂き、リリィの魔法矢が急所を射抜く。
シャルロッテは精霊の加護で全員を支えながら、風の刃を放つ。
「——いけえぇっ!!」
イッセイの剣が光を放ち、魔物の心核を貫いた。
魔物が絶叫をあげ、瘴気が晴れ渡っていく。
風が吹き抜け、草木が震え、小鳥のさえずりが森へ戻ってきた。
「終わった……んだね」
シャルロッテがその場に膝をつく。
イッセイがそっと彼女に手を差し伸べた。
「君のおかげだ。君の力がなければ、この森はもう……」
「私じゃありません……精霊たちが、皆さんが……でも……私も、少しは役に立てたなら」
彼女の瞳は、澄み切った空を見上げていた。
そして、風が二人の頬を優しく撫でた。
森は、静かに呼吸を取り戻していた。
黒くねじ曲がった根が地表を這い、毒々しい紫煙が静かに立ち上る。空気そのものがどこか淀んでおり、息をするたびに体力が削られていくような圧迫感があった。
「ここが……魔樹の瘴気の根源か」
イッセイが剣に手をかけながら、慎重に周囲を見渡す。
「空気の密度が変わってる……まるで、この場所そのものが異界に近いような気配ですの」
クラリスが眉をひそめ、護衛のルーナがそれを支えるように立つ。
「精霊たちが……泣いている。ここにいるだけで、心が締めつけられるようだわ」
シャルロッテが胸元に手を当て、精霊との交信に集中する。
「けど、まだ完全には堕ちてない。希望は……残ってる」
フィーナが前に出て、魔力を周囲へと広げながら言った。
その瞬間、大地が大きくうねり、腐ったような臭気と共に巨大な魔物が姿を現した。
木と獣が融合したような異形の存在で、体中から瘴気が噴き出している。
無数の触手、赤黒く濁った瞳、口の代わりに裂けた顎から漏れ出す瘴気の波——。
「出やがった……ッ!」
イッセイが剣を抜き、瞬時に構える。
「イッセイくん、援護するにゃん!」
ミュリルが跳躍し、双剣を抜いて急接近。
「回復と支援は任せて、うさ!」
フィーナが結界を展開し、味方全体を包むように魔力を流し込む。
「まさか、ここまで来るとは……けれど、引くつもりなどありません!」
セリアが毅然とした態度で前線に躍り出た。
「私も行くよ!」
リリィが弓を構え、矢に魔力を纏わせる。
激戦が始まった。
魔物の触手がうなりを上げ、瘴気が空間を歪めていく。
イッセイの剣が光を切り裂き、ミュリルとルーナが左右から挟み撃ちし、セリアが鋭く踏み込む。
フィーナが全体を支援し、リリィが遠距離から狙撃する中、シャルロッテだけが一歩後ろで震えていた。
「……私に……できるの? 本当に……」
その声はかすかだったが、イッセイには届いた。
「シャルロッテ!」
イッセイが強く叫ぶ。
「君の祈りを、精霊たちはきっと聞いてくれてる。信じるんだ、自分を」
だがそのとき、魔物が怒り狂ったように瘴気を爆発させた。
濃厚な闇が辺りを包み、視界を奪い、仲間たちをそれぞれ孤立させるように押し分ける。
「っく……この、瘴気の壁……!」
ルーナが咳き込みながら剣を構えるも、視界はゼロ。
「イッセイくん! どこ……っ!」
ミュリルの叫びも、濁った空気にかき消された。
その時だった。濃霧のような瘴気の中から、無数の触手が飛び出し、セリアとフィーナを打ち倒す。
「がっ……!」
「セリア!? フィーナ!」
イッセイが声を上げた次の瞬間、瘴気が襲いかかり、イッセイの体も地面に叩きつけられる。
「……くっそ……負けられない……」
膝をつきながら、それでも剣を手放さない。
だが、誰の目にも状況は絶望的だった。
「もう、ダメ……」
シャルロッテが震える声で呟いたその時——。
森の風が大きく渦を巻き、空間がひときわ輝いた。
柔らかな光が降り注ぎ、そこに現れたのは、精霊《シェイル=アルファリア》。銀白の髪をなびかせ、気品に満ちた人型の姿をとる。
『森の娘よ。そなたの声、確かに届いている。我が名はシェイル=アルファリア。風と清浄の祝福を司るもの』
「シェイル……アルファリア……?」
シャルロッテは光の中で手を伸ばし、涙を流しながら微笑んだ。
『そなたの勇気に応えよう。我が祝福を、この地に。そして、そなたに』
精霊の力が彼女の身に宿る。
まばゆい風の光が舞い、シャルロッテの身体を包み込む。
「……これが、精霊の祝福……あたたかい……」
そして彼女は静かに瞳を開き、輝く風を纏って前へ進み出る。
「イッセイさん、今です!」
「ああっ、行くぞ!」
イッセイが前に踏み込み、全員の動きが一つに合わさる。
ルーナとセリアが魔物の動きを封じ、ミュリルが脚を切り裂き、リリィの魔法矢が急所を射抜く。
シャルロッテは精霊の加護で全員を支えながら、風の刃を放つ。
「——いけえぇっ!!」
イッセイの剣が光を放ち、魔物の心核を貫いた。
魔物が絶叫をあげ、瘴気が晴れ渡っていく。
風が吹き抜け、草木が震え、小鳥のさえずりが森へ戻ってきた。
「終わった……んだね」
シャルロッテがその場に膝をつく。
イッセイがそっと彼女に手を差し伸べた。
「君のおかげだ。君の力がなければ、この森はもう……」
「私じゃありません……精霊たちが、皆さんが……でも……私も、少しは役に立てたなら」
彼女の瞳は、澄み切った空を見上げていた。
そして、風が二人の頬を優しく撫でた。
森は、静かに呼吸を取り戻していた。
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