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第七章 王都の休日
リリィ編「商会と泡立つ試作石鹸」
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王都の西端に構えるリリィ商会・王都支部――その一角にある実験室では、今日も賑やかな泡の音が響いていた。
「ん~~~っ、この香り!やっぱりラベンダー系が一番落ち着くわぁ!」
白衣姿のリリィが、両手に泡まみれの石鹸を持ってぐるぐると混ぜていた。
その頬にはうっすら汗がにじみ、耳先まで真剣さが伝わる。
「リリィさん、少し泡が多すぎるかと……」
「いいのいいの、これは“癒しの泡風呂”よ! しゅわしゅわ~って溶けて、香りで気分も上がるって寸法よっ!」
「いや、寸法って……」
助手の商会員が苦笑するのをよそに、リリィはガラス容器に入った泡立ちのテスト石鹸を慎重に型に流し込んだ。
――今回の試作名、その名も『リリィ特製・夢見るふわ泡せっけん』。
「ふふん、これであの子たちもお肌ぷるぷる、笑顔全開ね!」
試作品を棚に並べていくリリィの目は、どこか遠くを見ていた。
「……あのね。あの子たちっていうのは、旅の仲間たちのことよ。イッセイくんは絶対言わないけど、きっと無理してる。クラリスちゃんやルーナちゃんだって、緊張の連続。だからね、ちょっとでも、癒してあげたいの」
助手はしばし黙ったのち、ぽつりとつぶやく。
「――優しいんですね。商人って、もっと利を追い求めるものかと」
「ふふ、まぁ私はちょっと変わってるかもね。でも、儲かるのも、みんなが笑顔でいてくれるからだと思うの」
リリィは言葉を置いて、再び石鹸の香りを確かめる。
ほんのりと甘く、柔らかく広がる香り――まるで春風のような優しさ。
「それにね、これ……実はイッセイくんの髪、ちょっとクンクンしたら“なんか無香だけど、清潔感ある!”って思って……だから、彼にも似合う香りを模索してるってわけ!」
「……クンクンしたって……」
「しーっ、それは内緒よ?」
助手は口を押さえて笑いをこらえた。
「でも本気よ。私、これで一旗あげたい。王都でも、辺境でも、どこでも“リリィの石鹸”って言われるくらいのブランドにしたいの」
「世界制覇、ですか?」
「……うふふ、まぁ、せいぜい“世界の洗面所に癒しを”くらいで我慢してあげる!」
笑いながらも、その瞳には本気の炎が宿っていた。
その後もリリィは黙々と泡の配合や香料のバランスを調整し続けた。
ようやく夜も更けた頃、試作第十二号の石鹸が完成した。
「……これだわ」
柔らかく泡立ち、洗った後にはしっとりとした潤いと、ふんわりラベンダーと柑橘が残る香り。
自分で作ったものなのに、リリィは思わず頬を染めた。
「……イッセイくんが、これ使ってくれたら……にひひ……」
ふと、扉がノックされた。
「リリィ、おそいよー、もう夕飯の時間だよ~!」
扉を開けると、ミュリルとフィーナが顔を覗かせていた。
「にゃっ、すっごいいい匂いするにゃん!」
「ウサ! なんか泡立ってるウサ!」
「あっ、ちょっと待って! これはまだ企業秘密――ってあっ! 泡触っちゃだめー!」
わちゃわちゃと笑いながら、三人で実験室を後にする。
「……癒しは、共有してこそ価値があるのよね」
リリィはそうつぶやきながら、今度は“旅の仲間みんなの笑顔”を思い浮かべていた。
そして、次の冒険の中でも、きっと自分の石鹸が、誰かの心と体を癒すだろうと信じていた。
「ん~~~っ、この香り!やっぱりラベンダー系が一番落ち着くわぁ!」
白衣姿のリリィが、両手に泡まみれの石鹸を持ってぐるぐると混ぜていた。
その頬にはうっすら汗がにじみ、耳先まで真剣さが伝わる。
「リリィさん、少し泡が多すぎるかと……」
「いいのいいの、これは“癒しの泡風呂”よ! しゅわしゅわ~って溶けて、香りで気分も上がるって寸法よっ!」
「いや、寸法って……」
助手の商会員が苦笑するのをよそに、リリィはガラス容器に入った泡立ちのテスト石鹸を慎重に型に流し込んだ。
――今回の試作名、その名も『リリィ特製・夢見るふわ泡せっけん』。
「ふふん、これであの子たちもお肌ぷるぷる、笑顔全開ね!」
試作品を棚に並べていくリリィの目は、どこか遠くを見ていた。
「……あのね。あの子たちっていうのは、旅の仲間たちのことよ。イッセイくんは絶対言わないけど、きっと無理してる。クラリスちゃんやルーナちゃんだって、緊張の連続。だからね、ちょっとでも、癒してあげたいの」
助手はしばし黙ったのち、ぽつりとつぶやく。
「――優しいんですね。商人って、もっと利を追い求めるものかと」
「ふふ、まぁ私はちょっと変わってるかもね。でも、儲かるのも、みんなが笑顔でいてくれるからだと思うの」
リリィは言葉を置いて、再び石鹸の香りを確かめる。
ほんのりと甘く、柔らかく広がる香り――まるで春風のような優しさ。
「それにね、これ……実はイッセイくんの髪、ちょっとクンクンしたら“なんか無香だけど、清潔感ある!”って思って……だから、彼にも似合う香りを模索してるってわけ!」
「……クンクンしたって……」
「しーっ、それは内緒よ?」
助手は口を押さえて笑いをこらえた。
「でも本気よ。私、これで一旗あげたい。王都でも、辺境でも、どこでも“リリィの石鹸”って言われるくらいのブランドにしたいの」
「世界制覇、ですか?」
「……うふふ、まぁ、せいぜい“世界の洗面所に癒しを”くらいで我慢してあげる!」
笑いながらも、その瞳には本気の炎が宿っていた。
その後もリリィは黙々と泡の配合や香料のバランスを調整し続けた。
ようやく夜も更けた頃、試作第十二号の石鹸が完成した。
「……これだわ」
柔らかく泡立ち、洗った後にはしっとりとした潤いと、ふんわりラベンダーと柑橘が残る香り。
自分で作ったものなのに、リリィは思わず頬を染めた。
「……イッセイくんが、これ使ってくれたら……にひひ……」
ふと、扉がノックされた。
「リリィ、おそいよー、もう夕飯の時間だよ~!」
扉を開けると、ミュリルとフィーナが顔を覗かせていた。
「にゃっ、すっごいいい匂いするにゃん!」
「ウサ! なんか泡立ってるウサ!」
「あっ、ちょっと待って! これはまだ企業秘密――ってあっ! 泡触っちゃだめー!」
わちゃわちゃと笑いながら、三人で実験室を後にする。
「……癒しは、共有してこそ価値があるのよね」
リリィはそうつぶやきながら、今度は“旅の仲間みんなの笑顔”を思い浮かべていた。
そして、次の冒険の中でも、きっと自分の石鹸が、誰かの心と体を癒すだろうと信じていた。
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