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第九章 浮遊諸島の聖女と時の遺跡
時の選ばれし者
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時の意識空間。
世界の記憶が、嵩れるような光の流れとなって眺める。
誰かの記憶、誰かの感情、誰かの幸福の瞬間。
「…ここは…リアナの記憶…なのか…」
イッセイは目の前に広がる光景にそっと触れる。
軍衣を着た少女の裏で、同じ衣装を着た一群の女たちが笑い合っていた。その中心で笑みを流す、金髪の少女。
「わたしは、この世界を守るためなら、何だってできる。笑っていて。わたしも、笑っていられるから」
リアナの声が、光の中でぼんやりと響く。それは、けっして記憶の再現ではなく、時空間そのものに、不確定に保存されたリアナの「応答」のようだった。
「イッセイ。あなたは…選ばれし者。時の経緯の尾。これから光を選ぶか、闇を選ぶか。世界のあらゆる実像は、あなたの視点により分かれる」
「…平和な世界を、見たいだけだ。そのために我は切って進む。それだけだよ」
少しの間をおき、リアナはほのみ笑みを流す。
「なら、証明してみて。あなたが選ばれたわけを。時の闇を、こえて…」
光は一点の迷いもなく遠ざかりの闇へ向かい、イッセイの周囲を昆然と輝かせた。
その光の光景に輝くように、前方にノワールの姿が現れる。しかも…その姿は、まるで終末を持っているかのように、金色の光を織り成した街裏の裏面。それは…変身したノワールだった。
「ノワール、お前は何をしてるんだっ…」
「選ばれし者の試練を。もしこの時の意識を超えられぬなら、お前はその志も問われる」
イッセイは、剣を抜い、前へ出る。
「なら、ノワール。そのあなたの試練、伝えてみせようじゃないか…」
旧友、密伝者、信頼しき相手。その姿を植えたまま、本当の戦いが始まろうとしていた――。
薄暗い神殿の回廊に足を踏み入れたイッセイたちは、ひときわ冷たい空気に身を包まれた。
「……妙だな。さっきまでの時空の歪みが、ここではぴたりと止んでいる」
クラリスが足を止め、魔力探知の呪式を行う。その目がほんのわずかに見開かれる。
「この先に……“核心”がある。断言できるわ」
石畳を踏みしめながら、イッセイは手の内の剣に微かな緊張を込めた。
「油断するな。向こうも待ち構えているだろう」
回廊の奥、かすかな魔力の脈動が鼓動のように感じられた。まるで心臓のように、神殿全体が何かを支えているかのような異様な感覚。
やがて、広間へと続く扉が視界に入る。その扉には、古代の聖刻文字が浮かび上がっていた。
「封印……じゃない。これは、警告だわ」
フィーナがつぶやいた。「ここから先は、聖女リアナの魂が眠る場所だと」
その名に、仲間たちの間に緊張が走る。
イッセイがゆっくりと扉を押し開けた。
広間の中央には、白銀の装束をまとった女性が、一輪の花のように静かに立っていた。その背後には、黄金の羽を思わせる巨大な魔法陣が浮かび、空間そのものが揺らいでいる。
「ようこそ、旅人たちよ。ここが“記憶の核”」
その声は澄みきっていた。だが、目を凝らせば――その姿は、あの詐欺師の少女と瓜二つだった。
「まさか……君は……」
「ええ、私は“影”。リアナの想念の残滓。そして、あなた方を試す者」
言葉と同時に、魔法陣が咆哮するように唸りをあげ、空間が歪んだ。
「覚悟はあるか? これは未来を選ぶ戦い――」
イッセイは頷いた。仲間たちも、背後からそれぞれの武器を構え、一歩ずつ前に出る。
「行くぞ。これが、俺たちの……次の運命を決める一手だ!」
世界の記憶が、嵩れるような光の流れとなって眺める。
誰かの記憶、誰かの感情、誰かの幸福の瞬間。
「…ここは…リアナの記憶…なのか…」
イッセイは目の前に広がる光景にそっと触れる。
軍衣を着た少女の裏で、同じ衣装を着た一群の女たちが笑い合っていた。その中心で笑みを流す、金髪の少女。
「わたしは、この世界を守るためなら、何だってできる。笑っていて。わたしも、笑っていられるから」
リアナの声が、光の中でぼんやりと響く。それは、けっして記憶の再現ではなく、時空間そのものに、不確定に保存されたリアナの「応答」のようだった。
「イッセイ。あなたは…選ばれし者。時の経緯の尾。これから光を選ぶか、闇を選ぶか。世界のあらゆる実像は、あなたの視点により分かれる」
「…平和な世界を、見たいだけだ。そのために我は切って進む。それだけだよ」
少しの間をおき、リアナはほのみ笑みを流す。
「なら、証明してみて。あなたが選ばれたわけを。時の闇を、こえて…」
光は一点の迷いもなく遠ざかりの闇へ向かい、イッセイの周囲を昆然と輝かせた。
その光の光景に輝くように、前方にノワールの姿が現れる。しかも…その姿は、まるで終末を持っているかのように、金色の光を織り成した街裏の裏面。それは…変身したノワールだった。
「ノワール、お前は何をしてるんだっ…」
「選ばれし者の試練を。もしこの時の意識を超えられぬなら、お前はその志も問われる」
イッセイは、剣を抜い、前へ出る。
「なら、ノワール。そのあなたの試練、伝えてみせようじゃないか…」
旧友、密伝者、信頼しき相手。その姿を植えたまま、本当の戦いが始まろうとしていた――。
薄暗い神殿の回廊に足を踏み入れたイッセイたちは、ひときわ冷たい空気に身を包まれた。
「……妙だな。さっきまでの時空の歪みが、ここではぴたりと止んでいる」
クラリスが足を止め、魔力探知の呪式を行う。その目がほんのわずかに見開かれる。
「この先に……“核心”がある。断言できるわ」
石畳を踏みしめながら、イッセイは手の内の剣に微かな緊張を込めた。
「油断するな。向こうも待ち構えているだろう」
回廊の奥、かすかな魔力の脈動が鼓動のように感じられた。まるで心臓のように、神殿全体が何かを支えているかのような異様な感覚。
やがて、広間へと続く扉が視界に入る。その扉には、古代の聖刻文字が浮かび上がっていた。
「封印……じゃない。これは、警告だわ」
フィーナがつぶやいた。「ここから先は、聖女リアナの魂が眠る場所だと」
その名に、仲間たちの間に緊張が走る。
イッセイがゆっくりと扉を押し開けた。
広間の中央には、白銀の装束をまとった女性が、一輪の花のように静かに立っていた。その背後には、黄金の羽を思わせる巨大な魔法陣が浮かび、空間そのものが揺らいでいる。
「ようこそ、旅人たちよ。ここが“記憶の核”」
その声は澄みきっていた。だが、目を凝らせば――その姿は、あの詐欺師の少女と瓜二つだった。
「まさか……君は……」
「ええ、私は“影”。リアナの想念の残滓。そして、あなた方を試す者」
言葉と同時に、魔法陣が咆哮するように唸りをあげ、空間が歪んだ。
「覚悟はあるか? これは未来を選ぶ戦い――」
イッセイは頷いた。仲間たちも、背後からそれぞれの武器を構え、一歩ずつ前に出る。
「行くぞ。これが、俺たちの……次の運命を決める一手だ!」
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