『転生悪役令嬢、スライムで世界を変える』 ~追放先で見つけたヌルヌルが産業革命を巻き起こしました~

のびすけ。

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第一章:スライム工房、爆誕!

爆発は発明の母! ツンデレ鍛冶師と踏み出すぬるぬるの第一歩

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「ふふっ……ふふふふふっ!」

洞窟の入り口、朝日に照らされながら、私は仁王立ちで不敵な笑みを浮かべていた。私の目の前には、ここ数日の努力の結晶がずらりと並んでいる。

【ティアナ印・ぷるぷる魔道具シリーズ(試作品)】

エントリーNo.1: スライムヒートパック(じんわり温かい、最高の抱き心地)

エントリーNo.2: ぬめぬめ保湿ジェル(スリィの粘体を精製。乾燥肌の救世主)

エントリーNo.3: 形状記憶スライムクッション(洗っても干しても、元のぷるぷるに!)

どれもこれも、私のスライム愛と前世の商品開発ノウハウが詰まった逸品だ。

『ティアナ様。朝から何やら悪巧みをしているような笑い方ですが』
「これは悪巧みじゃないわ、スリィ。事業計画よ!」

私は胸を張り、高らかに宣言した。

「この素晴らしいぷるぷる製品たちを、世に広めるの! 失われた地位や名誉はどうでもいい。私はいま、“スライム専門商会の創業者”として、新たな人生の第一歩を踏み出すのよ!」
『……要するに、売りたい、と』
「そういうこと!」

元・悪役令嬢? 追放された姫? そんな肩書、商売の役には立たない。むしろ「いわくつき」という付加価値がつくかもしれないじゃない? なんてポジティブ思考!

というわけで、私は意気揚々と、最も近い村へと向かったのだった。

◆ ◆ ◆

「…………」
「…………」

村の広場は、静まり返っていた。
無理もない。ボロはまとえど、育ちの良さは隠せない私のような女が、怪しげなゼリーや布袋を並べているのだ。村人たちの「あの追放されたお嬢様、ついに気が触れたか?」という視線が、痛いほど突き刺さる。

(くっ……心が折れそう! でも、ここで負けては商売人失格よ!)

私は一番近くで編み物をしていたお婆さんの前にしゃがみ込み、最高の笑顔(元・社交界仕様)を向けた。

「奥様、最近、腰のお痛みなどございませんか?」
「……ん? ああ、年だからねぇ」
「でしたら、こちらの“スライムクッション”をお試しあれ! どんな姿勢にもフィットして、腰への負担を驚くほど軽減いたしますのよ!」

半信半疑のお婆さんがクッションに腰を下ろした瞬間、その目が見開かれた。

「なっ……! なにこの、吸い付くようなぷにぷには!? 腰が……楽……!?」
その声を聞きつけ、他のお婆さんたちもわらわらと集まってくる。

「こっちのジェル、手に塗ったらシワが伸びた気がするよ!」
「この湯たんぽ、優しい温かさだねぇ。孫に買ってやりたいよ」

ティアナ、まさかのシルバーマーケティングで初陣大勝利!
あっという間に商品は完売し、私の懐には温かい銅貨が数枚。これが、自分の力で稼いだ初めてのお金だった。

『村での販売網、確保できそうですね』
「ええ! これで次の生産ラインを……あ」

そこで、私は重大な問題にぶち当たった。
スライムという“素材”は無限にある。けれど、製品の“器”となる部分、例えばジェルの容器や、ヒートパックの留め具といった金属部品が作れない。私の知識はあくまで企画と素材開発まで。製造加工、特に専門技術が必要な鍛冶の領域は完全に素人だ。

「……探すしかないわね。腕の立つ、そして“変な依頼”にも乗ってくれる鍛冶師さんを!」

◆ ◆ ◆

そして翌日、私たちは村はずれの鍛冶場を訪れた。
カン、カン、とリズミカルな金属音が響く中、一人の男が汗だくで槌を振るっている。

(うわ……想像以上に……)

筋骨隆々、という言葉がぴったりの体躯。煤と汗にまみれた顔には無数の傷跡。低く、地を這うような声。そして何より、人を寄せ付けないほど不機嫌そうなオーラ。

「……用か?」
「は、はい! よろしくお願いします! すごくビビってますけど、仲良くしてください!」

彼の名は、ライオネル・ストローム。
この辺りでは右に出る者はいないと言われる、凄腕の鍛冶師。ただし、無愛想で偏屈なことでも有名らしい。

私は恐る恐る、持参した設計図(という名のスケッチ)とスライムの粘体サンプルを見せた。

「これを加工してほしいんです! このぷるぷる素材を金属のケース内部に密閉して、熱伝導率と保湿効果を最大化させた、新世代の魔道具を……」
「…………」

ライオネルは私の顔と、ぷるぷる揺れるサンプルを無言で交互に見つめた後、深く、深ーいため息をついた。

「……変なやつだな、あんた」
「最高の褒め言葉として受け取っておきますわ!」

意外なことに、彼は依頼を断らなかった。面白半分か、あるいは私のあまりの熱意に根負けしたのか。それから数日間、私とライオネル、そしてスリィによる奇妙な魔道具開発が始まった。

しかし、それは困難の連続だった。

「よし、試作品A、完成だ。魔力、流すぞ」
「スイッチ、オン!」

──ドカンッ!!

鍛冶場が揺れ、黒煙が立ち上る。

『爆発しました』
「なんで!? これ、ただのヒートパックのつもりだったのに! スライムの何がどうなって引火したの!?」
ライオネルが煤だらけの天井を見上げながら、冷静に分析する。
「……魔力の流れ、逆だったな。熱を増幅させる回路が、圧縮爆発の回路になってた」
「ごめんなさい! 私の設計ミスです!!」
『もはやティアナ様の日常風景です』

これが後に「爆発型スライム湯たんぽ(第一次試作品)」として、村の歴史に小さく刻まれることになる逸品である。

私たちは諦めなかった。
スライム保冷バッグ(冷えすぎて中の魚が化石みたいにカチコチになった)。
スライム圧縮ボール(跳ねすぎてライオネルの家の屋根を破壊した)。
スライムマッサージ器(振動が強すぎてライオネルが白目を剥いて昇天しかけた)。

失敗の連続。トラブルの嵐。
なのに、不思議だった。気づけば、ライオネルの口数が少しだけ増え、彼が槌を振るう横顔に、時折笑みが浮かぶようになったのだ。

そしてある日、夕日に染まる鍛冶場で、彼がぽつりと呟いた。

「……おまえ、見てて飽きないな。面白い」

その不器用な言葉に、私の心臓がトクン、と跳ねた。悪役令嬢だった頃には感じたことのない、温かい感情。

(え、これって……もしかして……)

「それって……惚れた?」
「うるせえッ!」

顔を真っ赤にしてそっぽを向くライオネル。その反応が、答えのすべてだった。
私の足元で、スリィがぷるぷると不満そうに揺れている。

『……これは、明確なラブコメのフラグですね。記録しておきます』
「スリィ、あなたまでうるさい!」

こうして、元悪役令嬢と、ツンデレ鍛冶師と、嫉妬深いスライムによる、
“時々爆発系・ぷるぷる魔道具開発チーム”が、ここに誕生したのであった。
その発明が、やがて恋と革命の嵐を巻き起こすとも知らずに。
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