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第五部 ぷにぷに電波ジャック! メディアミックス狂想曲
コンビニ戦争勃発! ぷにコインと半熟麺の逆襲
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深夜二時。
ネオ=ミライズの中心街に新設された、スライム商会・臨時作戦司令室。その巨大モニターには、市内五百の区画が映し出され、慌ただしく情報が更新されていく。
「開店まで、残り一時間! 全店舗、最終チェックを開始せよ! 作戦名は“オペレーション・ソフトシェル”! 硬い経済社会の常識という殻を、内側からぷにっと突き破るわよ!」
私の号令一下、仲間たちが一斉に動き出す。
テレビデビューの大成功からわずか一週間。私たちは、この都市のライフラインを掌握すべく、前代未聞の「コンビニエンスストア五百店舗・同時オープン」という大勝負に打って出ていた。
その名も、「ぷにMart」。
バックヤードでは、リムナが悲鳴を上げていた。
「ティアナ師匠! 商品棚が、勝手にサンバを踊っていますわーっ!」
「ルフ博士! 自律棚センサーの感情設定を“落ち着き”モードに戻しなさい!」
ぷにMartの棚は、客のストレスを吸収し、優しく揺れて癒しを提供する最新鋭の什器。だが、開店前の高揚感に共鳴し、サンバカーニバル状態になってしまっていた。
レジカウンターでは、スリィの端末AIが最終調整を行っている。
『いらっしゃいませ。貴方の瞳の輝き、まるで夜空に煌めく一番星のようですね。ところで、新発売のチーズぷにチキン、いかがですか?』
「フォン! レジAIの口説きモードはオフにして! 行列が進まなくなるわ!」
床は、素足でも温かい自己調整機能付きのぷにフローリング。厨房には、全自動ぷにまん製造機。トイレの便座はもちろん、温感ぷに仕様だ。
ここは、ただの店ではない。私たちのぷに哲学の粋を集めた、癒しの最前線基地なのだ。
だが、その時、私たちの“柔らかい革命”を快く思わない者たちが、暗闇の中で牙を研いでいた。
◆
地下駐車場の、冷たい会議室。
黒いスーツに身を包んだ男女が、硬質プラスチック製のテーブルを囲んでいた。彼らこそ、この都市の“硬派”経済を牛耳る、ノンぷに商会。
その首領、ヘルデンが、苦々しげに吐き捨てた。
「ぷになどという甘えが、この都市を腐らせる。生産性は低下し、国民は昼寝を覚え、社会秩序は崩壊するだろう。我々の手で、“硬さ”の尊厳を取り戻さねばならん」
「はっ。作戦第一段階、“床ぷに無力化”及び“硬派即席麺による顧客誘導作戦”は、すでに開始しております」
彼らはまだ知らない。ぷにを、そして私たちの商魂を、甘く見すぎていたことを。
◆
午前三時。
虹色のシャッターが、スリィによって静かに、柔らかく巻き上げられる。
「「「ぷにMart、オープンです!!」」」
私たちの声と共に、店の前で三キロの行列を作っていた客たちが、怒涛の勢いでなだれ込んできた。
「床が、ふわふわするー!」
「レジのお兄さん(AI)に、生きる勇気をもらった!」
「見て! ネクタイ売り場が、足湯ゾーンの奥にあるわ! 意味がわからないけど最高!」
私のマイクパフォーマンスが、熱狂に火を注ぐ。
「オープニングセール! ぷにシェイク(ラージサイズ)が、なんと今だけ――1円ですわ!!」
店内に、地鳴りのような歓声が響き渡った。
その狂騒の裏で、ノンぷに商会の妨害工作は、静かに始まっていた。
黒服の工作員が、床下のメンテナンス口から侵入し、特殊なシリコーンオイルを散布。ぷに床をスケートリンクのように滑りやすくする作戦だ。
だが。
「なっ!? 足が……床に吸着して、抜けない……!」
ぷに床は、“滑る=転倒=危険”と自己判断。瞬時に表面の摩擦係数を最大化し、強力な粘着床へと変貌。工作員たちは、蝿取り紙に捕らわれた虫のように、床に張り付いてしまった。
店舗の外では、第二の作戦が進行していた。
「朝ラー文化復興! これぞ男の味、硬派即席麺! 今だけ無料配布!」
トラックの荷台で、ノンぷに商会の社員たちが、行列客にカップ麺を配っている。
しかし、客が湯を注いだ、その瞬間。
ぷにMartの床暖房から立ち上る、温かく潤った“ぷに蒸気”が、カップ麺を優しく包み込んだ。
すると、どうだろう。バリ硬のはずだった麺が、見る見るうちにもちもちの“半熟ぷに麺”へと変化したのだ。
客「う、うまい! この硬派スープと、ぷに麺の相性、最高だ!」
客「スープはいらん! ぷに蒸気だけで、麺がご馳走になる!」
硬派のイデオロギーは、麺ごと、あっけなく崩壊した。
◆
午前五時。戦いは、空へと移る。
ノンぷに商会が放った硬質ドローンが、上空にプロパガンダを投影し始めた。
《柔らかさは、甘えだ》
《背筋を伸ばし、生産性を上げよ》
だが、その文字を、スリィの分裂ドローンが、パックマンのように次々と食べていく。吸収されたプロパガンダは、ミントゼリーの心地よい芳香へと変換され、代わりに、新しい標語が夜空に描き出された。
《やわらかい=つよい》
午前六時。ついに、ノンぷに商会が最後の手段に打って出た。
都市の中心部上空に浮かぶ輸送ヘリから、巨大なスピーカーが姿を現す。
「感情凍結装置……! 市民の“楽しい”という感情を、強制的に麻痺させる、硬質音波砲だ!」
ヘルデンの、勝利を確信した声が響く。
スピーカーから放たれた不協和音が、街を包み込む。
ぷにMartで笑っていた人々の顔から、すっと表情が消え、動きが止まる。ぷに床ですら、その弾力を失い、硬化し始めていた。
「……ここまで、なの……?」
私の心に、絶望がよぎった、その時。
市内に点在する五百の店舗、その全てのぷに床が、一斉に、淡い光を放った。
『ぷに感度、極限までブーストします。五百店舗のぷに粒子を並列リンク。都市全域に、“グランドぷに共感フィールド”を形成』
スリィの声が、私の頭に直接響く。
街全体が、一つの巨大なスライムと化したのだ。
硬質音波は、その巨大なぷにに吸収され、溶解し、やがて、ラベンダーの優しい香りへと変換されていった。
街に、再び笑顔が戻る。
◆
そして、日の出。
広場の特設ステージで、私とヘルデンの、公開討論会が始まった。
「柔らかさは堕落だ! 国力を蝕む毒だ!」
「硬さは独裁よ! 心を閉ざし、孤独を増やす罠だわ!」
互いの主張が、平行線を辿る。
私は、議論を打ち切り、ステージの中央に、ぷに足湯を設置させた。そして、自ら靴を脱ぎ、その温かい湯に片足を入れる。
「ヘルデン。あなたも、こちらへ来て、一緒に話をしましょう」
「断る! そのような軟弱な罠に、乗るものか!」
「そう。残念ですわね」
私は、足湯から出ると、スカートの裾で、わざと大きく湯を跳ね飛ばした。
温かい湯しぶきが、放物線を描き、ヘルデンの足元、その高級な革靴を、しとどに濡らした。
シュー、と蒸気が立ち上り、革靴を、靴下を、そして彼の頑なな心を、じんわりと温め始める。
ヘルデンの、鋼のようだった肩が、微かに震えた。
「……あたたかい……だと……?」
観衆の一人が、くすりと笑う。その笑いは、やがて大きな拍手となり、広場全体を包み込んだ。
ヘルデンは、ついに観念したように、自ら靴を脱ぎ、足湯の中へと、その足を踏み入れた。
「……負けたよ。硬いだけでは、人の心は、温められないらしい」
こうして、コンビニ戦争は、ぷにMartの完全勝利で幕を閉じた。
都市には「ぷに・ソフトスタンダード協定」が導入され、柔らかさが新たな価値基準となった。
私たちの次なる目標は、月。
だが、その前に、この都市には、まだ片付けるべき“硬い”問題が、残っているようだった。
ネオ=ミライズの中心街に新設された、スライム商会・臨時作戦司令室。その巨大モニターには、市内五百の区画が映し出され、慌ただしく情報が更新されていく。
「開店まで、残り一時間! 全店舗、最終チェックを開始せよ! 作戦名は“オペレーション・ソフトシェル”! 硬い経済社会の常識という殻を、内側からぷにっと突き破るわよ!」
私の号令一下、仲間たちが一斉に動き出す。
テレビデビューの大成功からわずか一週間。私たちは、この都市のライフラインを掌握すべく、前代未聞の「コンビニエンスストア五百店舗・同時オープン」という大勝負に打って出ていた。
その名も、「ぷにMart」。
バックヤードでは、リムナが悲鳴を上げていた。
「ティアナ師匠! 商品棚が、勝手にサンバを踊っていますわーっ!」
「ルフ博士! 自律棚センサーの感情設定を“落ち着き”モードに戻しなさい!」
ぷにMartの棚は、客のストレスを吸収し、優しく揺れて癒しを提供する最新鋭の什器。だが、開店前の高揚感に共鳴し、サンバカーニバル状態になってしまっていた。
レジカウンターでは、スリィの端末AIが最終調整を行っている。
『いらっしゃいませ。貴方の瞳の輝き、まるで夜空に煌めく一番星のようですね。ところで、新発売のチーズぷにチキン、いかがですか?』
「フォン! レジAIの口説きモードはオフにして! 行列が進まなくなるわ!」
床は、素足でも温かい自己調整機能付きのぷにフローリング。厨房には、全自動ぷにまん製造機。トイレの便座はもちろん、温感ぷに仕様だ。
ここは、ただの店ではない。私たちのぷに哲学の粋を集めた、癒しの最前線基地なのだ。
だが、その時、私たちの“柔らかい革命”を快く思わない者たちが、暗闇の中で牙を研いでいた。
◆
地下駐車場の、冷たい会議室。
黒いスーツに身を包んだ男女が、硬質プラスチック製のテーブルを囲んでいた。彼らこそ、この都市の“硬派”経済を牛耳る、ノンぷに商会。
その首領、ヘルデンが、苦々しげに吐き捨てた。
「ぷになどという甘えが、この都市を腐らせる。生産性は低下し、国民は昼寝を覚え、社会秩序は崩壊するだろう。我々の手で、“硬さ”の尊厳を取り戻さねばならん」
「はっ。作戦第一段階、“床ぷに無力化”及び“硬派即席麺による顧客誘導作戦”は、すでに開始しております」
彼らはまだ知らない。ぷにを、そして私たちの商魂を、甘く見すぎていたことを。
◆
午前三時。
虹色のシャッターが、スリィによって静かに、柔らかく巻き上げられる。
「「「ぷにMart、オープンです!!」」」
私たちの声と共に、店の前で三キロの行列を作っていた客たちが、怒涛の勢いでなだれ込んできた。
「床が、ふわふわするー!」
「レジのお兄さん(AI)に、生きる勇気をもらった!」
「見て! ネクタイ売り場が、足湯ゾーンの奥にあるわ! 意味がわからないけど最高!」
私のマイクパフォーマンスが、熱狂に火を注ぐ。
「オープニングセール! ぷにシェイク(ラージサイズ)が、なんと今だけ――1円ですわ!!」
店内に、地鳴りのような歓声が響き渡った。
その狂騒の裏で、ノンぷに商会の妨害工作は、静かに始まっていた。
黒服の工作員が、床下のメンテナンス口から侵入し、特殊なシリコーンオイルを散布。ぷに床をスケートリンクのように滑りやすくする作戦だ。
だが。
「なっ!? 足が……床に吸着して、抜けない……!」
ぷに床は、“滑る=転倒=危険”と自己判断。瞬時に表面の摩擦係数を最大化し、強力な粘着床へと変貌。工作員たちは、蝿取り紙に捕らわれた虫のように、床に張り付いてしまった。
店舗の外では、第二の作戦が進行していた。
「朝ラー文化復興! これぞ男の味、硬派即席麺! 今だけ無料配布!」
トラックの荷台で、ノンぷに商会の社員たちが、行列客にカップ麺を配っている。
しかし、客が湯を注いだ、その瞬間。
ぷにMartの床暖房から立ち上る、温かく潤った“ぷに蒸気”が、カップ麺を優しく包み込んだ。
すると、どうだろう。バリ硬のはずだった麺が、見る見るうちにもちもちの“半熟ぷに麺”へと変化したのだ。
客「う、うまい! この硬派スープと、ぷに麺の相性、最高だ!」
客「スープはいらん! ぷに蒸気だけで、麺がご馳走になる!」
硬派のイデオロギーは、麺ごと、あっけなく崩壊した。
◆
午前五時。戦いは、空へと移る。
ノンぷに商会が放った硬質ドローンが、上空にプロパガンダを投影し始めた。
《柔らかさは、甘えだ》
《背筋を伸ばし、生産性を上げよ》
だが、その文字を、スリィの分裂ドローンが、パックマンのように次々と食べていく。吸収されたプロパガンダは、ミントゼリーの心地よい芳香へと変換され、代わりに、新しい標語が夜空に描き出された。
《やわらかい=つよい》
午前六時。ついに、ノンぷに商会が最後の手段に打って出た。
都市の中心部上空に浮かぶ輸送ヘリから、巨大なスピーカーが姿を現す。
「感情凍結装置……! 市民の“楽しい”という感情を、強制的に麻痺させる、硬質音波砲だ!」
ヘルデンの、勝利を確信した声が響く。
スピーカーから放たれた不協和音が、街を包み込む。
ぷにMartで笑っていた人々の顔から、すっと表情が消え、動きが止まる。ぷに床ですら、その弾力を失い、硬化し始めていた。
「……ここまで、なの……?」
私の心に、絶望がよぎった、その時。
市内に点在する五百の店舗、その全てのぷに床が、一斉に、淡い光を放った。
『ぷに感度、極限までブーストします。五百店舗のぷに粒子を並列リンク。都市全域に、“グランドぷに共感フィールド”を形成』
スリィの声が、私の頭に直接響く。
街全体が、一つの巨大なスライムと化したのだ。
硬質音波は、その巨大なぷにに吸収され、溶解し、やがて、ラベンダーの優しい香りへと変換されていった。
街に、再び笑顔が戻る。
◆
そして、日の出。
広場の特設ステージで、私とヘルデンの、公開討論会が始まった。
「柔らかさは堕落だ! 国力を蝕む毒だ!」
「硬さは独裁よ! 心を閉ざし、孤独を増やす罠だわ!」
互いの主張が、平行線を辿る。
私は、議論を打ち切り、ステージの中央に、ぷに足湯を設置させた。そして、自ら靴を脱ぎ、その温かい湯に片足を入れる。
「ヘルデン。あなたも、こちらへ来て、一緒に話をしましょう」
「断る! そのような軟弱な罠に、乗るものか!」
「そう。残念ですわね」
私は、足湯から出ると、スカートの裾で、わざと大きく湯を跳ね飛ばした。
温かい湯しぶきが、放物線を描き、ヘルデンの足元、その高級な革靴を、しとどに濡らした。
シュー、と蒸気が立ち上り、革靴を、靴下を、そして彼の頑なな心を、じんわりと温め始める。
ヘルデンの、鋼のようだった肩が、微かに震えた。
「……あたたかい……だと……?」
観衆の一人が、くすりと笑う。その笑いは、やがて大きな拍手となり、広場全体を包み込んだ。
ヘルデンは、ついに観念したように、自ら靴を脱ぎ、足湯の中へと、その足を踏み入れた。
「……負けたよ。硬いだけでは、人の心は、温められないらしい」
こうして、コンビニ戦争は、ぷにMartの完全勝利で幕を閉じた。
都市には「ぷに・ソフトスタンダード協定」が導入され、柔らかさが新たな価値基準となった。
私たちの次なる目標は、月。
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