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第五部 ぷにぷに電波ジャック! メディアミックス狂想曲
ぷにカルチャーショックと深夜三時の生放送!
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異世界の魔王を“ととのわせる”という、前代未聞の平和的攻略を終えた私たち。
仲間たちが待つ故郷へと続くはずの次元の門をくぐった、その瞬間。世界は、再び、私たちの予想を裏切った。
「きゃああああああああああああああ!?」
眼下に広がっていたのは、懐かしい我が国の風景ではなかった。
天を突く、ガラスと鉄の塔。光の川となって流れる、見たこともない乗り物。そして、夜空よりも明るく輝く、巨大なホログラム広告。
私たちは、空から、落ちていた。
「ティアナ師匠! これはいったい、どういう状況ですの!?」
「わたくしが知るわけないでしょう!」
「全員、俺に捕まれ!」
落下しながらも、ライオネルが私たちを力強く引き寄せ、フォンが風の抵抗を計算し、ノエルが「ご無事でー!」と叫びながら気絶している。カオスだ。
地面が目前に迫った、その絶体絶命の瞬間。
『皆様、衝撃に備えてください。形態変化――“ぷにぷにエアバッグ・マキシマム”』
スリィが、その身体を限界まで膨張させ、巨大なクッションとなって私たち全員を包み込んだ。
ぷにんっ。
マシュマロにダイブしたかのような、驚くほど柔らかい衝撃と共に、私たちはとあるビルの屋上ヘリポートへと、無事に(?)軟着陸を果たした。
私たちが着地したビルの壁面には、巨大なホログラムが瞬いていた。
【PNIテレビ 深夜生放送中!】
「……テレビ?」
私たちが状況を理解できずにいると、けたたましいプロペラ音と共に、無数の小型ドローンが私たちを取り囲んだ。その一つから、合成音声が響き渡る。
《速報です! PNIテレビ屋上に、謎の異世界コスプレ集団が上空から降臨しました!》
「コスプレじゃないわよ!」
私のツッコミも虚しく、ヘリポートの扉が勢いよく開き、目の下に深い隈を作った、キャリアウーマン風の女性が、鬼の形相で駆け寄ってきた。
「あなたたち、最高じゃない! その衣装! その登場の仕方! 完璧よ! 今日の深夜番組『異次元のプリプリ生物 大検証SP』のシークレットゲスト、あなたたちに決定!」
「け、決定!?」
「PDのエリカよ! 詳しい話は、オンエアしながら聞くわ! とにかく、面白い画が撮れれば、それでOKなの!」
有無を言わさず、私たちはテレビ局の内部へと引きずり込まれていった。
廊下の壁には「視聴率こそ正義」「面白いは作れる」といった、どこか既視感のある標語が貼られている。
どうやら私たちは、ファンタジー世界から、いきなり“業界”という名の戦場に放り込まれてしまったらしい。
◆
本番5分前。
楽屋は、まさに修羅場だった。
「あなたたち、芸名は!? 特技は!? 火とか噴ける!?」
矢継ぎ早に質問するADさん。
ルフ博士が、目を輝かせて答える。
「火気上等! ぷにマグマ噴出実験ならお任せだよーん!」
「ダメです! 消防法で局が吹っ飛びます!」
シャルロッテは「わたくしのぷに剣舞はいかがかしら?」と刀を抜き、ライオネルは「ここの壁、少し強度が足りないな」と壁を叩き始め、ノエルは「皆様に、夜食のぷにおにぎりを……」とマイペースにお米を炊き始めている。
異世界人の自由さに、ADさんの顔はどんどん青ざめていく。
最終的に、私が「では、ぷに足湯なら……安全ですわ」と提案し、企画はギリギリのところで固まった。
そして、スタジオの眩いライトの中に、私たちは押し出された。
「さあ、今夜のシークリェットゲストは、時空の彼方からやってきたという“ぷに王国”の皆さんでーす! 見てください、この情報量の多いビジュアル!」
軽薄な、しかしプロの風格を漂わせた司会者、MCタツヤが、大げさな身振りで私たちを紹介する。
観客席からの好奇の視線、無数に向けられるテレビカメラ。私は、意を決してマイクを握った。
「こんばんは。硬い心を、半熟にする者――ティアナです!」
私の決め台詞に、観客席から「半熟ー!」という、謎のコールが返ってきた。
番組は、カルチャーショックの連続だった。
私が「ぷにとは、哲学であり、友達です!」と説明すれば、観客は「食べるの!? 友達を!?」とざわめき、スリィが<ぷに = “触れ合いを肯定する弾力性”>という翻訳字幕を空間に投影すれば、MCタツヤに「なるほど……わからん!!」と叫ばれる始末。
そして、目玉企画の「ぷに足湯デモンストレーション」。
ステージ中央に設置された透明なプールに、ルフ博士が開発した“桃色のぷにバスボム”を投入する。湯は、ラベンダーの香りと共に、美しいゼリー状へと変化した。
観客代表数名が、恐る恐る足を入れる。
「あ……足の指が……勝手にほぐれていく……!」
「ふくらはぎが……天国に……!」
体験者の恍惚の表情に、スタジオのボルテージは最高潮に達した。
だが、その時。バスボムのエネルギーが想定以上に膨張し、足湯プールの境界が決壊! 桃色のゼリー湯が、津波のようにスタジオの前列へと押し寄せたのだ。
「ぎゃああああ! スタジオがぷにまみれに!」
スタッフの悲鳴が響き渡る中、ADが叫ぶ。
「CM! CM入れろぉおおお!!」
◆
緊急CM中。
局長室では、青ざめた局長が「弁償だ! 機材が! カーペットが!」と頭を抱えていた。
だが、その時、スタジオから戻ってきたADが、信じられない、という顔で報告した。
「局長! 床が……床が、勝手に乾いていきます!」
スタジオでは、スリィが巨大な吸水シートと化し、こぼれたゼリー湯を全て吸収。そして、スタジオの強力な照明の熱を利用して、吸収した水分を“心地よい加湿ミスト”として蒸発させていたのだ。
床は、ものの5分で、サラサラの状態に戻っていた。
局長は、その光景を見て、膝から崩れ落ちた。
「……すごい。いや、スゴすぎる……。君たち、うちの局と、専属清掃契約を結ばないか!?」
こうして、私たちは放送事故を起こしながら、なぜか大型契約を勝ち取ってしまった。
CM明けの生放送は、さらにカオスを極める。
番組のスポンサーである「ぷにFOOD株式会社」の社長が、なんと生放送中に電話で乱入してきたのだ。
『もしもし!? ティアナさん!? 我が社と、ぜひコラボ商品を! ぷに牛丼! ぷにバーガー! なんでもやります!』
「OKですわ! まずは“半熟ぷにたまご丼”から始めましょう!」
『名前だけで100万食売れる! 感謝ァァァ!』
テレビ画面には、ぷにFOOD社の株価がリアルタイムで急騰していく様子が映し出され、スタジオのSEが「ギャーン!」と鳴り響く。経済ニュースまで、ぷに一色に染まっていった。
番組が終わる頃には、私たちのぷに文化は、この都市の現象となっていた。
放送局の前で「柔らか主義は国を腐らせる!」と抗議していた“リアル堅派”のデモ隊は、リムナが差し出した“移動式ぷに足湯”の心地よさの前に、全員が陥落。「ぷに最高」というプラカードを掲げて、大合唱を始めていた。
◆
翌朝。都市の風景は、一変していた。
地下鉄の吊り革はぷにぷにした素材に変わり、カフェの椅子はスライムクッションになり、全ての企業で「ぷに休憩」が導入された。
私たちは、たった一夜の生放送で、この都市の文化を、根底からひっくり返してしまったのだ。
テレビ局の最上階。
PDのエリカが、私たちに深々と頭を下げた。
「ありがとう、あなたたちのおかげで、昨日の番組は、局の歴代最高視聴率を叩き出したわ。次は、ゴールデンで特番を組みましょう!」
そんな私たちの様子を、都市で最も高いビルの最上階から、冷ややかに見下ろす影があった。
黒いスーツに身を包んだ、冷徹な目をした男。
彼は、街中に溢れる“ぷに”の文字を忌々しげに見つめ、低く呟いた。
「柔らかい商売……。甘ったるくて、反吐が出る。――面白い。潰してやろう、その“ぷに”とやらを」
男の背後で、彼の凝り固まった肩を、どこからともなく現れたスリィの小さな分裂体が、そっと揉み始めた。
男「……ん? ……あ゛……そこ、効く……!」
私たちの、メディアミックスという名の、次なる戦いが、今、始まろうとしていた。
仲間たちが待つ故郷へと続くはずの次元の門をくぐった、その瞬間。世界は、再び、私たちの予想を裏切った。
「きゃああああああああああああああ!?」
眼下に広がっていたのは、懐かしい我が国の風景ではなかった。
天を突く、ガラスと鉄の塔。光の川となって流れる、見たこともない乗り物。そして、夜空よりも明るく輝く、巨大なホログラム広告。
私たちは、空から、落ちていた。
「ティアナ師匠! これはいったい、どういう状況ですの!?」
「わたくしが知るわけないでしょう!」
「全員、俺に捕まれ!」
落下しながらも、ライオネルが私たちを力強く引き寄せ、フォンが風の抵抗を計算し、ノエルが「ご無事でー!」と叫びながら気絶している。カオスだ。
地面が目前に迫った、その絶体絶命の瞬間。
『皆様、衝撃に備えてください。形態変化――“ぷにぷにエアバッグ・マキシマム”』
スリィが、その身体を限界まで膨張させ、巨大なクッションとなって私たち全員を包み込んだ。
ぷにんっ。
マシュマロにダイブしたかのような、驚くほど柔らかい衝撃と共に、私たちはとあるビルの屋上ヘリポートへと、無事に(?)軟着陸を果たした。
私たちが着地したビルの壁面には、巨大なホログラムが瞬いていた。
【PNIテレビ 深夜生放送中!】
「……テレビ?」
私たちが状況を理解できずにいると、けたたましいプロペラ音と共に、無数の小型ドローンが私たちを取り囲んだ。その一つから、合成音声が響き渡る。
《速報です! PNIテレビ屋上に、謎の異世界コスプレ集団が上空から降臨しました!》
「コスプレじゃないわよ!」
私のツッコミも虚しく、ヘリポートの扉が勢いよく開き、目の下に深い隈を作った、キャリアウーマン風の女性が、鬼の形相で駆け寄ってきた。
「あなたたち、最高じゃない! その衣装! その登場の仕方! 完璧よ! 今日の深夜番組『異次元のプリプリ生物 大検証SP』のシークレットゲスト、あなたたちに決定!」
「け、決定!?」
「PDのエリカよ! 詳しい話は、オンエアしながら聞くわ! とにかく、面白い画が撮れれば、それでOKなの!」
有無を言わさず、私たちはテレビ局の内部へと引きずり込まれていった。
廊下の壁には「視聴率こそ正義」「面白いは作れる」といった、どこか既視感のある標語が貼られている。
どうやら私たちは、ファンタジー世界から、いきなり“業界”という名の戦場に放り込まれてしまったらしい。
◆
本番5分前。
楽屋は、まさに修羅場だった。
「あなたたち、芸名は!? 特技は!? 火とか噴ける!?」
矢継ぎ早に質問するADさん。
ルフ博士が、目を輝かせて答える。
「火気上等! ぷにマグマ噴出実験ならお任せだよーん!」
「ダメです! 消防法で局が吹っ飛びます!」
シャルロッテは「わたくしのぷに剣舞はいかがかしら?」と刀を抜き、ライオネルは「ここの壁、少し強度が足りないな」と壁を叩き始め、ノエルは「皆様に、夜食のぷにおにぎりを……」とマイペースにお米を炊き始めている。
異世界人の自由さに、ADさんの顔はどんどん青ざめていく。
最終的に、私が「では、ぷに足湯なら……安全ですわ」と提案し、企画はギリギリのところで固まった。
そして、スタジオの眩いライトの中に、私たちは押し出された。
「さあ、今夜のシークリェットゲストは、時空の彼方からやってきたという“ぷに王国”の皆さんでーす! 見てください、この情報量の多いビジュアル!」
軽薄な、しかしプロの風格を漂わせた司会者、MCタツヤが、大げさな身振りで私たちを紹介する。
観客席からの好奇の視線、無数に向けられるテレビカメラ。私は、意を決してマイクを握った。
「こんばんは。硬い心を、半熟にする者――ティアナです!」
私の決め台詞に、観客席から「半熟ー!」という、謎のコールが返ってきた。
番組は、カルチャーショックの連続だった。
私が「ぷにとは、哲学であり、友達です!」と説明すれば、観客は「食べるの!? 友達を!?」とざわめき、スリィが<ぷに = “触れ合いを肯定する弾力性”>という翻訳字幕を空間に投影すれば、MCタツヤに「なるほど……わからん!!」と叫ばれる始末。
そして、目玉企画の「ぷに足湯デモンストレーション」。
ステージ中央に設置された透明なプールに、ルフ博士が開発した“桃色のぷにバスボム”を投入する。湯は、ラベンダーの香りと共に、美しいゼリー状へと変化した。
観客代表数名が、恐る恐る足を入れる。
「あ……足の指が……勝手にほぐれていく……!」
「ふくらはぎが……天国に……!」
体験者の恍惚の表情に、スタジオのボルテージは最高潮に達した。
だが、その時。バスボムのエネルギーが想定以上に膨張し、足湯プールの境界が決壊! 桃色のゼリー湯が、津波のようにスタジオの前列へと押し寄せたのだ。
「ぎゃああああ! スタジオがぷにまみれに!」
スタッフの悲鳴が響き渡る中、ADが叫ぶ。
「CM! CM入れろぉおおお!!」
◆
緊急CM中。
局長室では、青ざめた局長が「弁償だ! 機材が! カーペットが!」と頭を抱えていた。
だが、その時、スタジオから戻ってきたADが、信じられない、という顔で報告した。
「局長! 床が……床が、勝手に乾いていきます!」
スタジオでは、スリィが巨大な吸水シートと化し、こぼれたゼリー湯を全て吸収。そして、スタジオの強力な照明の熱を利用して、吸収した水分を“心地よい加湿ミスト”として蒸発させていたのだ。
床は、ものの5分で、サラサラの状態に戻っていた。
局長は、その光景を見て、膝から崩れ落ちた。
「……すごい。いや、スゴすぎる……。君たち、うちの局と、専属清掃契約を結ばないか!?」
こうして、私たちは放送事故を起こしながら、なぜか大型契約を勝ち取ってしまった。
CM明けの生放送は、さらにカオスを極める。
番組のスポンサーである「ぷにFOOD株式会社」の社長が、なんと生放送中に電話で乱入してきたのだ。
『もしもし!? ティアナさん!? 我が社と、ぜひコラボ商品を! ぷに牛丼! ぷにバーガー! なんでもやります!』
「OKですわ! まずは“半熟ぷにたまご丼”から始めましょう!」
『名前だけで100万食売れる! 感謝ァァァ!』
テレビ画面には、ぷにFOOD社の株価がリアルタイムで急騰していく様子が映し出され、スタジオのSEが「ギャーン!」と鳴り響く。経済ニュースまで、ぷに一色に染まっていった。
番組が終わる頃には、私たちのぷに文化は、この都市の現象となっていた。
放送局の前で「柔らか主義は国を腐らせる!」と抗議していた“リアル堅派”のデモ隊は、リムナが差し出した“移動式ぷに足湯”の心地よさの前に、全員が陥落。「ぷに最高」というプラカードを掲げて、大合唱を始めていた。
◆
翌朝。都市の風景は、一変していた。
地下鉄の吊り革はぷにぷにした素材に変わり、カフェの椅子はスライムクッションになり、全ての企業で「ぷに休憩」が導入された。
私たちは、たった一夜の生放送で、この都市の文化を、根底からひっくり返してしまったのだ。
テレビ局の最上階。
PDのエリカが、私たちに深々と頭を下げた。
「ありがとう、あなたたちのおかげで、昨日の番組は、局の歴代最高視聴率を叩き出したわ。次は、ゴールデンで特番を組みましょう!」
そんな私たちの様子を、都市で最も高いビルの最上階から、冷ややかに見下ろす影があった。
黒いスーツに身を包んだ、冷徹な目をした男。
彼は、街中に溢れる“ぷに”の文字を忌々しげに見つめ、低く呟いた。
「柔らかい商売……。甘ったるくて、反吐が出る。――面白い。潰してやろう、その“ぷに”とやらを」
男の背後で、彼の凝り固まった肩を、どこからともなく現れたスリィの小さな分裂体が、そっと揉み始めた。
男「……ん? ……あ゛……そこ、効く……!」
私たちの、メディアミックスという名の、次なる戦いが、今、始まろうとしていた。
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