イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

文字の大きさ
25 / 177
第5章『イケボの向こうに、本当の“僕”がいる』

「デビュー戦、迷えるプロデューサーたち」

しおりを挟む
「レイ=アマギの単独チャンネル、開設おめでとーっ!」



LinkLiveの会議室に響くメグの元気な声。その後ろでひよりがちょこんと控えめに手を挙げて笑っていた。



「……ほんとに始まっちゃうんだね。レイくんのソロ」



テーブルを囲んだメンバーは、ひより、夜々、みなと、メグ。そして当の本人、天城コウ。

この春から正式に《レイ=アマギ》としての配信活動をスタートさせることが決まり、チャンネル準備と初配信の企画会議が開かれていた。



「まずはデビュー配信の構成だけど……自己紹介→雑談→質疑応答って感じかな?」



そう言って、夜々がタブレットを開く。すでにいくつかの案が書かれていて、その仕事ぶりは相変わらずきっちりしていた。



「その流れだと、印象が弱い。インパクト重視で行くべきじゃない? 冒頭から“イケボ朗読劇”とか。視聴者の記憶に残る方が強いって」



メグが勢いよく口を挟むと、みなとが少し眉をひそめた。



「それって“声だけ”の魅力に偏りすぎじゃない? 表情や演出とのバランスも考えた方がいい」



「へえ、じゃあみなとはどうしたいの?」



「たとえば……“誰かの心を救った瞬間”をテーマにしたエピソードトーク。声が持つ“温かさ”を大事にする方向でいくとか」



「……う~ん、重くない? 初回からそれはハードル高そう~」



メグが顔をしかめ、みなとは視線をそらす。

ややこしいことになりそうだな……と、コウは内心で汗をかいた。



ひよりは二人のやりとりを黙って見つめていたが、やがて、おずおずと口を開く。



「……あの、もしよかったら、私がナレーション原稿を書こうか? レイくんのキャラに合うように……って……」



「ひより、それって“妹目線”のナレーションになるんじゃない?」



夜々が優しく微笑みながらも、やんわりと牽制する。



「ううっ……そうかも……」

しゅんと肩を落とすひより。



「じゃあさ、ひよりは衣装まわりどう? あのクール系レイくんにぴったりのアウターとか……!」



「……っ、うん! やってみる!」



メグのフォローにひよりが笑顔を返すと、場の空気が少しだけ和んだ。



けれども、議論はすぐに再び迷走を始める。



「イラストのイメージカラー、ナイトブルーに近い感じが良いと思う」



「いや、今トレンドはグラデーション系。配信映えするし」



「BGMのテンポ、少しスローにして落ち着いた雰囲気にしたい」



「それは逆に寝落ちされるってば!」



……全員、本気なのだ。

誰よりも“レイ=アマギ”の成功を願ってくれている。

それはコウもよくわかっていた――が。



(どうして、こんなにも……うまくいかないんだろう)



頭の中が混線していく。

どの意見も的確に聞こえて、どれを選んでも誰かをがっかりさせてしまいそうだった。



「……ごめん、ちょっと水取ってくる」



椅子を立ったコウに、誰も止める言葉をかけられなかった。



* * *



会議室の外、給湯スペース。紙コップに水を注ぎながら、コウは鏡に映る自分を見た。



(僕は、なんで……こんなに不安なんだろう)



演じることには慣れているつもりだった。

ひよりの代役として“ひよこまる♪”を続けていた日々、バレないように、嫌われないように、完璧な“妹”を演じていた。



けれど今度は、自分の名前で――“レイ=アマギ”として、素顔をさらして話す必要がある。



(……僕に、それができるのか?)



ひよりじゃない。誰の代わりでもない。

演技でも、代役でもない――“僕自身”の声で、誰かの心に届く言葉を話すことなんて。



そこへ、そっと後ろから声が届いた。



「――悩んでるみたいだね、天城くん」



低く、響く声だった。どこか包み込むようでいて、芯がある。

振り返ると、そこに立っていたのは、LinkLiveの先輩男性V、月詠ルイ。



月明かりを思わせる落ち着いた雰囲気と、優雅な笑顔。

黒と銀を基調にした衣装に、軽く乱れた前髪が絶妙な色気を醸し出している。



「月詠……ルイさん?」



「ああ。噂で聞いたよ。君が、“ひよこまる”の中の人だったってことも、レイとしてデビューするってことも」



「っ……!」



コウが言葉を失うと、ルイは少し肩をすくめて言った。



「安心して。誰にも言わないよ。俺も昔、似たような秘密、抱えてたから」



その一言に、コウの胸がほんの少しだけ、ふっと軽くなった。



(この人……ただの先輩ってだけじゃない。きっと、同じものを乗り越えてきたんだ)



「よかったら、君の話……聞かせてくれない?」



静かに、そう促すルイの声に、コウは小さく頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...