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第十章 ハーレム同盟、初陣!
900階層の合同訓練
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セラフィーナ、ルナリア、ブリジット、ミミ… 異世界組の四人との十年越しの「初めて」の夜が嵐のように過ぎ去った。
俺の身体は、正直、EX級のステータスをもってしても、少し、いや、かなり疲労困憊気味だったが…
それ以上に、俺の心は、不思議なほどの達成感と決意に満ちていた。
四人の、あの蕩けきった幸せそうな顔。
十年待たせた「約束」をようやく果たせたのだ。
そして、あの日、俺の部屋で結成された「ハーレム同盟」がついに本格的に始動することになった。
陽奈美とセラフィーナという、二人の「正妻(自称)」が仕切る、奇妙な、しかし恐ろしく強力な共同戦線。
彼女たちの、当面の、そして唯一の共通目標は… 「「翔太(勇者様)を、二つの世界を救う、真の英雄(王様)にする!」」 …ということらしい。
(俺の意思はどこに…)
まあ、いい。
目的は定まった。
千階層のボスを倒し、二つの世界を繋ぐポータルを制御下に置く。
そして、異世界を蝕む時空の歪みの原因を叩き潰す。
「というわけで、まずは連携強化よ!」
「ええ、その通りですわ!」
仕切り役の陽奈美とセラの鶴の一声で、俺たち九人(俺+八人の嫁)は、早速ダンジョンへと繰り出すことになった。
目指すは前人未到の九百階層。
これまでの七百階層、八百階層のボスは、俺や陽奈美たちのパーティーでギリギリ倒せる相手だった。 だが、この九人(ハーレム同盟)が揃った今、もはや敵ではないはずだ。
「フン…」
九百階層、炎が吹き荒れる灼熱の火山地帯に降り立った瞬間、ルナリアが、現代組の装備を見て鼻を鳴らした。
「なんとも、貧相な装備じゃな。そんな薄っぺらい『防弾チョッキ』のようなもので、魔物の爪が防げると思っておるのか?」
ルナリアが指差したのは、凛花が着ている最新鋭の魔導繊維で編まれた賢者用のローブだった。
凛花は、カチリ、と伊達メガネを押し上げる。
「…これは、あなたの言うような『原始的な』ものではありませんわ。魔力伝導率を最適化し物理衝撃を95%カットする、科学の結晶です」
「か、科学…? あの、レンジを爆発させた、あれか? フン、笑わせるわ」
「あら。あなたのその、肌の露出が多い『コスプレ』のような服よりは、よほど効率的かと」
「な、なんじゃと! これは森の精霊の加護を受けた、ハイエルフの『正装』じゃ!」
バチバチッ! 早くも、賢者組(インテリ)が火花を散らしている。
(やれやれ…前途多難だ)
「エレオノール殿!」
「なんですの、ブリジットさん」
今度は聖騎士組(ナイト)だ。
ブリジットが、エレオノールの白銀に輝く流麗なデザインの鎧を見て、むぅ、と眉を寄せた。
「その鎧、確かに美しい。だが、あまりにも装飾が過ぎるのではないか? 実戦において、その肩の『羽飾り』は邪魔になるだけであります!」
「まあ! 失礼ですわね! これは、わたくしの『ヴァロワ家』に伝わる、誇り高き聖騎士の装束! あなたの、その鉄塊(てっかい)のように、無骨なだけの鎧とは美意識が違いますの!」
「む! わたくしの鎧は、王国騎士団最強の証! 実用性を極めた究極の『守り』であります!」
「美しくない守りなど、守りとは言えませんわ!」
バチバチバチッ! こっちも一触即発だ。
陽奈美とセラは、そんな二組をはぁ…とため息をつきながら見ている。
「…翔太(勇者様)」
「「連携、大丈夫かしら(ですわね)…?」」
(お前ら二人が、一番バチバチしてるんだけどな)
俺は、その言葉を、ぐっと、飲み込んだ。
「グオオオオオッ!」
そこへ九百階層の洗礼。
溶岩の中から、炎を纏った『ヘルハウンド』の群れが十数体現れた。
「来たわね!」
「おしゃべりは、そこまでですわ!」
瞬時に、八人が戦闘態勢に入る。 俺は一歩下がって彼女たちの連携を見ることにした。
「陽奈美! お主の『支援』とやら、見せてもらおうか!」
「ルナリアさんこそ、口だけじゃなきゃいいけどね! 【オール・ブースト】!」
陽奈美の、詠唱破棄の支援魔法が全員に飛ぶ。
その瞬間、異世界組の四人が目を見開いた。
「なっ…!?」
「この、魔力の流れ…!?」
「力がみなぎる…! しかも、わたくしたちの魔力特性に合わせて最適化されて…!?」
「ご主人様! ミミ、足がすっごく早くなったぴょん!」
「フン…」
ルナリアが悔しそうに鼻を鳴らす。
「…やるではないか、人間。だが、魔法の『格』というもの教えてやろう! 【ボルテックス・ブリザード】!」
ルナリアが指を鳴らした、次の瞬間。
灼熱(しゃくねつ)の火山地帯に、局地的な絶対零度の吹雪が巻き起こりヘルハウンドの半数が、一瞬で氷漬けになった。
「「「「((((((すご…)))))) 」」」」
今度は、現代組が息を呑む番だった。
陽奈美の支援魔法が高度な『バフ』だとしたら、ルナリアの魔法は理不尽なまでの『破壊力』だ。
「残りは、わたくしたちで!」
「いくぞ、エレオノール殿!」
ブリジットとエレオノールが、氷を逃れた残りのヘルハウンドに同時に突っ込む。
「【アイアン・ウォール】!」
「【セイクレッド・パリー】!」
ブリジットが、真正面からヘルハウンドの炎の牙を大盾で受け止める!
ガンッ!と、一歩も引かない鋼の守り。
「(((硬い…!)))」
それとほぼ同時に、エレオノールは別の個体の爪による攻撃を流麗な剣さばきで受け流した!
キィン!と、火花が散りヘルハウンドが体勢を崩す。
「(((上手い…!)))」
「「はぁっ!」」
二人の聖騎士は、互いの「獲物」を同時に切り捨てた。
そして、互いに、ちらり、と、視線を交わす。
「…フン。力任せの脳筋剣術でありますな!」
「そちらこそ! 避けるという思考がないようですわね!」
バチバチッ! …まだ認めてないらしい。
「あーもう! 二人とも、邪魔アル!」
そこに、麗華が飛び込んできた。
「そんなデカい獲物、二人でちまちまやってないで、こっち手伝えアル!」
麗華は、ヘルハウンドの群れに単身突っ込むと、炎のブレスを身をかがめて避け、そのまま空中で回し蹴りを放つ!
「奥義! 【炎龍脚(えんりゅうきゃく)】!」
炎の魔物相手に炎の技! ヘルハウンドが仲間(?)の炎に包まれて怯む。
「な、なんと、無謀な…!」
(ブリジット談)
「科学的(?)に非効率な…!」
(凛花談)
「ご主人様! 宝箱の気配発見だぴょん!」
その、戦闘のど真ん中を、ミミが影のようにすり抜けていく。
「あ、こら、ミミ! 戦闘中だぞ!」
「宝は、早い者勝ちだぴょん! 【アンロック】!」
ミミは戦闘そっちのけで、遠くの壁際にある、罠だらけの宝箱を一瞬で開けてしまった。
「…あ」
「「「「((((((マイペースすぎる…)))))) 」」」」
全員の心が一つになった。
「…まったく。前途多難ですわね」
「同感だ、陽奈美」
セラと陽奈美が、額(ひたい)に手を当てている。
「ですが、行きますわよ!」
「ええ!」 二人のリーダーが顔を見合わせ頷く。
「【ホーリー・レイン】!」
「【ワイド・ヒール】!」
二人の広範囲(こうはんい)回復魔法が全員のかすり傷を、瞬時に癒していく。
「((((お、おお…)))) 」
今度は、残りの六人が感心する番だった。
「セラの魔法、相変わらずえげつない回復量だな…」
「陽奈美さんの、回復(ヒール)…? なんだか魔力だけじゃなくて、やる気まで回復してくる…!」
俺は、その後ろで、ただ苦笑いしていた。
((((((すげえ、バラバラ…))))))
((((((でも、個々の能力、高すぎだろ…))))))
この九百階層の道中は、そんな感じで進んでいった。
凛花とルナリアが、古代の魔法陣をお互いの知識(科学と魔法)でマウントを取り合いながら解読し。 エレオノールとブリジットが、「わたくしの方が、団長(翔太さま)のお役に立てます!」と、競い合うように敵をなぎ倒し。
麗華とミミが、「そっちの敵、ワタシの獲物アル!」「早い者勝ちだぴょん!」と、獲物(と宝箱)の取り合いを繰り広げ。
陽奈美とセラが、そのめちゃくちゃな六人を聖母(せいぼ)のような、あるいは鬼のような(?)顔で回復させ、支援し、叱咤(しった)する。
そして、ついに九百階層のボス部屋に、到達した。
そこには、『インフェルノ・ゴーレム』が待ち構えていた。
「…ルナ、凛花。分析は?」
俺が、初めて口を開く。
「フン。見たまんまじゃ。超高温の魔力炉心(まりょくろしん)で動く、ただの鉄くずじゃな」
「同感ですわ。冷却(れいきゃく)さえすればただの置物。問題はどうやってあの常時展開されている灼熱(しゃくねつ)のバリアを突破するか…」
二人の賢者が同時に結論を出す。
「「わたくし(自分)が、やります(であります)!」」
二人の聖騎士が同時に名乗りを上げる。
「麗華! ミミ!」
「「任せろ(ぴょん)!」」
二人のアタッカーが目を輝かせる。
「陽奈美、セラ」
「「ええ(うん)!」」
二人のリーダーが頷く。
「…いいか」
俺は、八人の最強の花嫁たちを見渡した。
「ブリジット、エレオノール。お前たちが同時に、最大防御で突っ込め。バリアに一瞬だけ穴を開けろ」 「「御意(承知)!」」
「ルナ、凛花。その穴に、お前たちの最大の氷結魔法を叩き込め。タイミングは、合わせろよ」
「「フン、誰に言っておる(のですか)」」
「麗華、ミミ。冷却で動きが止まったその瞬間。ゴーレムの両足の関節(かんせつ)を破壊しろ」 「「任せろ(ぴょん)!」」
「陽奈美、セラ。全員に最大出力の支援(バフ)と守護(しゅご)を。一瞬でも切らすな」
「「「「翔太(勇者様)!?」」」」
俺の、完璧な指示。 八人の最強の連携。
「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁっっ!!!」」」」」」」」
ブリジットとエレオノールの、二つの聖なる盾が、灼熱のバリアに激突する!
「ぐ、うううううっ!」
「負けません、わ!」
バリアに一瞬亀裂(きれつ)が走る。
「「今じゃ(ですわ)!」」
ルナリアと凛花の、最大級の氷結魔法がその亀裂に吸い込まれる!
ジュウウウウウウウウウッ!
ゴーレムが白い蒸気(じょうき)に包まれる!
「「そこアル(だぴょん)!」」 麗華とミミが、蒸気(じょうき)の中から、まだ動けないゴーレムの両足に致命的な一撃を叩き込む!
ガシャンッ!
巨体がバランスを崩す。
「「「「((((((とどめは!)))))) 」」」」
全員の視線が、俺に集まる。
俺は、仕方ないな、という顔で、剣(てか、もう素手)を構えた。
「…ああ、分かったよ」
俺は、一瞬でゴーレムの、懐(ふところ)に飛び込むと、 その魔力炉心(まりょくろしん)に静かに手刀(しゅとう)を突き刺した。
ピシ… 九百階層のボスは、一撃で、内側から崩壊(ほうかい)し塵(ちり)となった。
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
静寂。
八人の花嫁たちが、呆然(ぼうぜん)と俺を見ていた。
「…よ、よし。九百階層クリア」
俺がそう言うと、 「「「「「「「「翔太(勇者様)が、ぜんぶ、持っていったぁあああああ!」」」」」」」」 と、俺は八人の愛の抗議(こうぎ)に包まれることになった。
まあ、いい。
千階層は、もうすぐそこだ。
俺の身体は、正直、EX級のステータスをもってしても、少し、いや、かなり疲労困憊気味だったが…
それ以上に、俺の心は、不思議なほどの達成感と決意に満ちていた。
四人の、あの蕩けきった幸せそうな顔。
十年待たせた「約束」をようやく果たせたのだ。
そして、あの日、俺の部屋で結成された「ハーレム同盟」がついに本格的に始動することになった。
陽奈美とセラフィーナという、二人の「正妻(自称)」が仕切る、奇妙な、しかし恐ろしく強力な共同戦線。
彼女たちの、当面の、そして唯一の共通目標は… 「「翔太(勇者様)を、二つの世界を救う、真の英雄(王様)にする!」」 …ということらしい。
(俺の意思はどこに…)
まあ、いい。
目的は定まった。
千階層のボスを倒し、二つの世界を繋ぐポータルを制御下に置く。
そして、異世界を蝕む時空の歪みの原因を叩き潰す。
「というわけで、まずは連携強化よ!」
「ええ、その通りですわ!」
仕切り役の陽奈美とセラの鶴の一声で、俺たち九人(俺+八人の嫁)は、早速ダンジョンへと繰り出すことになった。
目指すは前人未到の九百階層。
これまでの七百階層、八百階層のボスは、俺や陽奈美たちのパーティーでギリギリ倒せる相手だった。 だが、この九人(ハーレム同盟)が揃った今、もはや敵ではないはずだ。
「フン…」
九百階層、炎が吹き荒れる灼熱の火山地帯に降り立った瞬間、ルナリアが、現代組の装備を見て鼻を鳴らした。
「なんとも、貧相な装備じゃな。そんな薄っぺらい『防弾チョッキ』のようなもので、魔物の爪が防げると思っておるのか?」
ルナリアが指差したのは、凛花が着ている最新鋭の魔導繊維で編まれた賢者用のローブだった。
凛花は、カチリ、と伊達メガネを押し上げる。
「…これは、あなたの言うような『原始的な』ものではありませんわ。魔力伝導率を最適化し物理衝撃を95%カットする、科学の結晶です」
「か、科学…? あの、レンジを爆発させた、あれか? フン、笑わせるわ」
「あら。あなたのその、肌の露出が多い『コスプレ』のような服よりは、よほど効率的かと」
「な、なんじゃと! これは森の精霊の加護を受けた、ハイエルフの『正装』じゃ!」
バチバチッ! 早くも、賢者組(インテリ)が火花を散らしている。
(やれやれ…前途多難だ)
「エレオノール殿!」
「なんですの、ブリジットさん」
今度は聖騎士組(ナイト)だ。
ブリジットが、エレオノールの白銀に輝く流麗なデザインの鎧を見て、むぅ、と眉を寄せた。
「その鎧、確かに美しい。だが、あまりにも装飾が過ぎるのではないか? 実戦において、その肩の『羽飾り』は邪魔になるだけであります!」
「まあ! 失礼ですわね! これは、わたくしの『ヴァロワ家』に伝わる、誇り高き聖騎士の装束! あなたの、その鉄塊(てっかい)のように、無骨なだけの鎧とは美意識が違いますの!」
「む! わたくしの鎧は、王国騎士団最強の証! 実用性を極めた究極の『守り』であります!」
「美しくない守りなど、守りとは言えませんわ!」
バチバチバチッ! こっちも一触即発だ。
陽奈美とセラは、そんな二組をはぁ…とため息をつきながら見ている。
「…翔太(勇者様)」
「「連携、大丈夫かしら(ですわね)…?」」
(お前ら二人が、一番バチバチしてるんだけどな)
俺は、その言葉を、ぐっと、飲み込んだ。
「グオオオオオッ!」
そこへ九百階層の洗礼。
溶岩の中から、炎を纏った『ヘルハウンド』の群れが十数体現れた。
「来たわね!」
「おしゃべりは、そこまでですわ!」
瞬時に、八人が戦闘態勢に入る。 俺は一歩下がって彼女たちの連携を見ることにした。
「陽奈美! お主の『支援』とやら、見せてもらおうか!」
「ルナリアさんこそ、口だけじゃなきゃいいけどね! 【オール・ブースト】!」
陽奈美の、詠唱破棄の支援魔法が全員に飛ぶ。
その瞬間、異世界組の四人が目を見開いた。
「なっ…!?」
「この、魔力の流れ…!?」
「力がみなぎる…! しかも、わたくしたちの魔力特性に合わせて最適化されて…!?」
「ご主人様! ミミ、足がすっごく早くなったぴょん!」
「フン…」
ルナリアが悔しそうに鼻を鳴らす。
「…やるではないか、人間。だが、魔法の『格』というもの教えてやろう! 【ボルテックス・ブリザード】!」
ルナリアが指を鳴らした、次の瞬間。
灼熱(しゃくねつ)の火山地帯に、局地的な絶対零度の吹雪が巻き起こりヘルハウンドの半数が、一瞬で氷漬けになった。
「「「「((((((すご…)))))) 」」」」
今度は、現代組が息を呑む番だった。
陽奈美の支援魔法が高度な『バフ』だとしたら、ルナリアの魔法は理不尽なまでの『破壊力』だ。
「残りは、わたくしたちで!」
「いくぞ、エレオノール殿!」
ブリジットとエレオノールが、氷を逃れた残りのヘルハウンドに同時に突っ込む。
「【アイアン・ウォール】!」
「【セイクレッド・パリー】!」
ブリジットが、真正面からヘルハウンドの炎の牙を大盾で受け止める!
ガンッ!と、一歩も引かない鋼の守り。
「(((硬い…!)))」
それとほぼ同時に、エレオノールは別の個体の爪による攻撃を流麗な剣さばきで受け流した!
キィン!と、火花が散りヘルハウンドが体勢を崩す。
「(((上手い…!)))」
「「はぁっ!」」
二人の聖騎士は、互いの「獲物」を同時に切り捨てた。
そして、互いに、ちらり、と、視線を交わす。
「…フン。力任せの脳筋剣術でありますな!」
「そちらこそ! 避けるという思考がないようですわね!」
バチバチッ! …まだ認めてないらしい。
「あーもう! 二人とも、邪魔アル!」
そこに、麗華が飛び込んできた。
「そんなデカい獲物、二人でちまちまやってないで、こっち手伝えアル!」
麗華は、ヘルハウンドの群れに単身突っ込むと、炎のブレスを身をかがめて避け、そのまま空中で回し蹴りを放つ!
「奥義! 【炎龍脚(えんりゅうきゃく)】!」
炎の魔物相手に炎の技! ヘルハウンドが仲間(?)の炎に包まれて怯む。
「な、なんと、無謀な…!」
(ブリジット談)
「科学的(?)に非効率な…!」
(凛花談)
「ご主人様! 宝箱の気配発見だぴょん!」
その、戦闘のど真ん中を、ミミが影のようにすり抜けていく。
「あ、こら、ミミ! 戦闘中だぞ!」
「宝は、早い者勝ちだぴょん! 【アンロック】!」
ミミは戦闘そっちのけで、遠くの壁際にある、罠だらけの宝箱を一瞬で開けてしまった。
「…あ」
「「「「((((((マイペースすぎる…)))))) 」」」」
全員の心が一つになった。
「…まったく。前途多難ですわね」
「同感だ、陽奈美」
セラと陽奈美が、額(ひたい)に手を当てている。
「ですが、行きますわよ!」
「ええ!」 二人のリーダーが顔を見合わせ頷く。
「【ホーリー・レイン】!」
「【ワイド・ヒール】!」
二人の広範囲(こうはんい)回復魔法が全員のかすり傷を、瞬時に癒していく。
「((((お、おお…)))) 」
今度は、残りの六人が感心する番だった。
「セラの魔法、相変わらずえげつない回復量だな…」
「陽奈美さんの、回復(ヒール)…? なんだか魔力だけじゃなくて、やる気まで回復してくる…!」
俺は、その後ろで、ただ苦笑いしていた。
((((((すげえ、バラバラ…))))))
((((((でも、個々の能力、高すぎだろ…))))))
この九百階層の道中は、そんな感じで進んでいった。
凛花とルナリアが、古代の魔法陣をお互いの知識(科学と魔法)でマウントを取り合いながら解読し。 エレオノールとブリジットが、「わたくしの方が、団長(翔太さま)のお役に立てます!」と、競い合うように敵をなぎ倒し。
麗華とミミが、「そっちの敵、ワタシの獲物アル!」「早い者勝ちだぴょん!」と、獲物(と宝箱)の取り合いを繰り広げ。
陽奈美とセラが、そのめちゃくちゃな六人を聖母(せいぼ)のような、あるいは鬼のような(?)顔で回復させ、支援し、叱咤(しった)する。
そして、ついに九百階層のボス部屋に、到達した。
そこには、『インフェルノ・ゴーレム』が待ち構えていた。
「…ルナ、凛花。分析は?」
俺が、初めて口を開く。
「フン。見たまんまじゃ。超高温の魔力炉心(まりょくろしん)で動く、ただの鉄くずじゃな」
「同感ですわ。冷却(れいきゃく)さえすればただの置物。問題はどうやってあの常時展開されている灼熱(しゃくねつ)のバリアを突破するか…」
二人の賢者が同時に結論を出す。
「「わたくし(自分)が、やります(であります)!」」
二人の聖騎士が同時に名乗りを上げる。
「麗華! ミミ!」
「「任せろ(ぴょん)!」」
二人のアタッカーが目を輝かせる。
「陽奈美、セラ」
「「ええ(うん)!」」
二人のリーダーが頷く。
「…いいか」
俺は、八人の最強の花嫁たちを見渡した。
「ブリジット、エレオノール。お前たちが同時に、最大防御で突っ込め。バリアに一瞬だけ穴を開けろ」 「「御意(承知)!」」
「ルナ、凛花。その穴に、お前たちの最大の氷結魔法を叩き込め。タイミングは、合わせろよ」
「「フン、誰に言っておる(のですか)」」
「麗華、ミミ。冷却で動きが止まったその瞬間。ゴーレムの両足の関節(かんせつ)を破壊しろ」 「「任せろ(ぴょん)!」」
「陽奈美、セラ。全員に最大出力の支援(バフ)と守護(しゅご)を。一瞬でも切らすな」
「「「「翔太(勇者様)!?」」」」
俺の、完璧な指示。 八人の最強の連携。
「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁっっ!!!」」」」」」」」
ブリジットとエレオノールの、二つの聖なる盾が、灼熱のバリアに激突する!
「ぐ、うううううっ!」
「負けません、わ!」
バリアに一瞬亀裂(きれつ)が走る。
「「今じゃ(ですわ)!」」
ルナリアと凛花の、最大級の氷結魔法がその亀裂に吸い込まれる!
ジュウウウウウウウウウッ!
ゴーレムが白い蒸気(じょうき)に包まれる!
「「そこアル(だぴょん)!」」 麗華とミミが、蒸気(じょうき)の中から、まだ動けないゴーレムの両足に致命的な一撃を叩き込む!
ガシャンッ!
巨体がバランスを崩す。
「「「「((((((とどめは!)))))) 」」」」
全員の視線が、俺に集まる。
俺は、仕方ないな、という顔で、剣(てか、もう素手)を構えた。
「…ああ、分かったよ」
俺は、一瞬でゴーレムの、懐(ふところ)に飛び込むと、 その魔力炉心(まりょくろしん)に静かに手刀(しゅとう)を突き刺した。
ピシ… 九百階層のボスは、一撃で、内側から崩壊(ほうかい)し塵(ちり)となった。
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
静寂。
八人の花嫁たちが、呆然(ぼうぜん)と俺を見ていた。
「…よ、よし。九百階層クリア」
俺がそう言うと、 「「「「「「「「翔太(勇者様)が、ぜんぶ、持っていったぁあああああ!」」」」」」」」 と、俺は八人の愛の抗議(こうぎ)に包まれることになった。
まあ、いい。
千階層は、もうすぐそこだ。
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【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
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第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
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※小説家になろう様にも掲載しています。
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