ガーデン【加筆修正版】

いとくめ

文字の大きさ
31 / 41

31・だまし討ち

しおりを挟む
犬の体はしなやかで足音も軽い。
三匹は沼地の屋敷にすんなりと忍び込むことができた。

地下室の前で人に戻った杏となつめは、ドアノブに手をかけた。

鳥たちが教えてくれた通り、屋敷の老婦人は戸締りも鍵の管理もいい加減というのは本当だった。
ゴミ出しや配達の受け取りに使う勝手口は、いちいち鍵をかけるのも面倒だからといつも開けっ放しらしい。
目的の地下室に至っては、存在さえ忘れられているのだろう。長い間掃除もされず、蜘蛛の巣やホコリだらけだった。

「手分けして解毒剤を探そう」

地下室に足を踏み入れた杏となつめは、棚の小瓶をひとつずつ確かめていった。
ハスは鼻をきかせて嗅ぎ回っていく。

「あった!」

杏はカラバルマメと書いてある瓶を手に取った。
それを確認したハスは「よし帰るぞ」と宣言した。
その時だ。

「あら、いらしてたのね」

暗がりから現れたのは涼華だった。

「次からはきちんと玄関から入ってね。きちんとお出迎えできないでしょ?」

涼華が右手を上げると、地下室のドアから何かが入ってきた。
シュルシュルと床を這い回るようないやな音がする。

見ればハスとなつめの足元を、無数のツタが絡まり始めていた。
ツタはまるで意思を持っているような動きで、みるみるうちにハスとなつめの体を覆ってしまった。

「クソッ」「やだ、なにこれ」

涼華が右手で合図すると、ツタはハスとなつめを勢いよく地下室から引きずり出した。

「ハス!なつめちゃん!」

杏は追いかけようとしたが、地下室のドアは目の前で音を立てて閉じた。
外へ出ようとしたがドアは開かない。

「大丈夫よ、お友だちには少し外で待っていてもらいましょう。私はあなたとふたりきりで話したいの。だって、あのお友だちの前では、あなた本音で話せないでしょ?」

涼華は杏を見た。
その眼は妖しく光り、杏の体は身動きが取れなくなる。

「あなたが手に持っているのは解毒剤ね」

杏は手の中にある小瓶を握りしめた。

「隠さなくてもいいわ、それはあげるから」

「え?」

思いがけない言葉に、杏は戸惑った。

「大切な人たちを救いたいから、それを必要としているんでしょ?石なんてどうでもいいって思うくらい、大事なことなのよね」

涼華は優しく語りかけてくる。

「あなたは、はなによく似てる」

「母を知っているんですか?」

「ええ。私もあの子と会えないのはとてもさみしい。私、あなたの本当の望みを知ってるわ」

「わたしの本当の望み?」

「石を渡してくれれば、私が簡単に叶えてあげられる。辛かったわよね。不安を理解してくれる人がいなかったんだもの。私に任せて。」

何も心配いらないわ、と涼華は微笑みかけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...