わんこ騎士団長は伝えたい!〜2度目の異世界転移、助けた子犬が大型犬に成長してました〜

佐藤 あまり

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間章

コハクside 出会い

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 「俺、俺が一緒にいる!」

 抱きしめられたと理解するまで少し時間がかかった。暖かな腕……叫ぶようにかけられた言葉は俺が1番欲しかったものだった。

 高価なポーションを迷うことなく使ってくれたおかけで、俺を飼っていた貴族の巻き添えで負った傷の痛みが消えていく。

 「じゃあ、一緒におうちに帰ろう」

 見えなくても分かる、そっと握られた手と同じ高さから聞こえる声、優しく声をかけられ抱き上げられた。ゆらりゆらり、心地よい揺れに心が落ち着いていく。きっと、これが安心って言うものなんだろう。

 木の匂いがする暖かい家に着き、柔らかな場所に降ろされた。あ…俺汚いのに…!どうしよう…!焦って暴れてしまったにも関わらずその人はお風呂に入らせてくれるのだという、ソファも洗えばいいから大丈夫だと。

 シャンプー、リンス、ボディソープ、そっと触れさせながら説明してもらった。

 普通に入っていたつもりだったけれど、バタバタと慌てたような足音が聞こえて体を固くした俺にその人は優しくお湯を使うように言って、さらにはそのまま洗ってくれた。優しくて、あったかい……

 「ふふ、可愛い耳だな」

 可愛い……?初めて言われた。この人の言葉は俺をふわふわさせる。

 髪まで乾かしてもらった。丁寧にとかれた髪としっぽはさらさらになって、とても心地がいい。

 ご飯のテーブルまで手を繋いで歩く。たくさん手を握ってくれる……見えなくても怖くないように、なるべく触れさせながら話してくれる。

 食べてもいいのかな……その人の挨拶を真似して、恐る恐るすくって口に入れた。

 ……あったかい、美味しい……!

 泣き出した俺を心配してくれたその人に大丈夫だと必死で伝えて、夢中で食べる。
 お腹の中があったかくなって、さっきよりも考えられるようになった。

 ……この人はなんで俺を引き取ったんだろう。何の役にも立たないのに、もしかして目が治ると思ってたのかな……優しい人、あったかい手の人、心の一番奥でこの人と一緒に居たいと思っていたのに、俺は聞いてしまった。

 「役に立つとか立たないとか、そんなんで引き取ったんじゃない……!俺が、君と一緒にいたいと思ったから……!だから……!」

 声を震わせながら語るその言葉が俺の心に染み込んでいく。一緒にいよう、と手を握られてそっと触れさせられた口元は笑っていてまた涙がこぼれた。

 一緒にいてもいいんだ……!そう思ったら止まらない。しがみつく俺を抱きしめたその人が我慢しないくていいと言った瞬間、抑えていた声が溢れた。


 ……長い時間泣いていたみたいで、たくさん肩を濡らしてしまった。ソファーで膝を枕にして濡れたタオルをそっと乗せてくれたその人が声を上げた。

 その人はレイ、と言う名前らしい。どうしよう、俺には名前が無い……困らせたくなくて必死で喋っていたらその人、レイが名前を付けてくれることになった。

 俺だけの名前を付けてくれる、素敵な名前を考えなきゃな、なんて言って……嬉しくて嬉しくて、気持ちを伝えれば声に笑みが混じった。

 もう寝ような、とまた抱き上げられてふかふかなベットに運んでもらう、今日だけで一生分の幸せを使ってしまったみたいだ。

 

 夢の中で俺はいつもの生活に戻っていた。気に入らないことがあると傷が増えて、毎日痛くて悲しくて……でも、ふっと手があたたかくなった途端、まるで霧のように俺を苦しめていたものが消えた。

 代わりにあたたかさが全身を包み込み……握りしめていた指がほぐれ、あたたかさだけを感じながらゆっくりと目を閉じた。

 


❀・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈・❀
 



 目が覚めたはずなのに夢の続きを見ているようにあたたかさに包まれていた。一緒に寝ている……?!
 焦っていたら気だるげな声がまだ寝ていようと促して、そのまま抱きしめられた。夢の中の手はこの人だったんだ……あったかいのは抱きしめてもらっていたんだ……




 幸せな微睡みの中、あたたかさが離れていくのを感じて、思わず手を伸ばした。いた……!良かった……ほっとして、ぼんやりとしたままふわふわな幸せに浸る。


 「なあ、名前なんだけど、コハク、はどうだ?」

 コハク……?初めて聞く言葉に首を傾げた。

 「宝石の名前なんだ。君の髪みたいに綺麗で、握るとあったかくて、小さい頃俺はおひさまでできてると思ってた。でも本当かもな。木がたくさんたくさん陽を浴びて、大きくなって、そうしてできる、おひさまのいし。どうか、君の髪がきらきらする場所にいられるように、あったかくて優しい道を歩けるように……気に入って貰えると嬉しいんだけど」


 おひさまのいし……その名前は祝福を詰め込んだようで、告げられた意味はどれも幸せになれるようにと願うものばかりだった。

 コハク……俺の名前だと思った。俺は最初からコハクだったみたいに、その名前はするりと俺の中に収まった。


 「コハク…俺…コハク…!コハクがいい…!」

 「っ……良かった、そうだ、じゃあ……」

 きゅっと手を握られてふわりとおでこに何かが触れる。

 「おはよう、コハク」

 名前を呼ばれた……とても近くから聞こえる声におでことおでこをくっつけているのだと分かった。俺も、名前を呼びたい……!

 「お、はよう……!れい……!」

 「ふふ、俺の名前も呼んでくれたな」

 「うん…!れい…れい…!ありがとう……」

 レイ……そう呼ぶ度に心が跳ねる。握ってくれた手を握り返してまたふわふわする。

 「さあ、コハク、朝ごはんにしよう」

 また呼ばれた名前が嬉しくて嬉しくて、きっと俺は今世界で1番幸せだ、なんて思った
 




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