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瑞葵と雫
しおりを挟む俺陽向瑞葵と、あいつ紫水雫は幼馴染だった。
親同士も幼馴染。幼稚園から一緒で家も近く、4人で集まってはよく遊んでいたらしい。
両想いペアが2つできてそれぞれ夫婦になったんだよ、と彼らにとっての奇跡話を俺はよく聞かされていた。
だから俺も、将来そうなれたらいいと心のどこかでは期待していて、物心ついた時には雫を幼馴染よりかは異性として好く様になっていた。
母さんと父さんのように、同じ学校に行ってお互いが好きだと気付いて付き合って結婚して、普通並の、けれどこれ以上にない幸せを感じているふたりのような未来を、当たり前のように信じていた。
だけどあの日、その理想は一気に崩れ去った。
あまりにも唐突に、呆気なく。そんな当たり前に望めるような未来が、いとも簡単に消えてしまった。
雫と、彼女の両親が交通事故に遭ったその日に。
雫は重傷、両親は即死。
不幸にもその日は雫の誕生日で、彼女を祝うためにと出掛けた先で、スピード違反のトラックと正面衝突したらしかった。
ーーあの時に見た、電話前で泣き崩れる母さんを、今でも忘れられない。悲痛な声が、今でも脳裏に響く。父さんの苦しそうな耐えるような顔が、妙に現実的だった。
そして今、自分も同じ立場になってその悲しみの苦しさを知る。
何もしなくても沈んでいく深い沼のような、何をしてもしなくても逃れられない絶望感が、無理矢理口に何かを詰められているかのごとく、息苦しくしていく。
そんなんだから、知らせを受けてからの記憶はほとんどない。
雫の葬儀に出るために、彼女が6年程暮らしていた祖母の故郷へと行った。
ひっそりと行われた葬儀には、自分と同じくらいの子どもが何人かいて、そいつらが気まずげにそこにいる姿が何故か腹立たしかったような気がする。
気付いた時には、空に煙が昇っていた。一線を保たず、幾重にと虚空に広がっていた。
そこでようやく、現実を理解した。
あいつは、もう、いない。
いなくなってしまったのだと。
この離れていた6年間。あいつが何を見てきたのか、何を感じていたのか。
どうして自ら命を絶ったのか。
知りたいと思った。
知らなければならないと思った。
悲しみを紛らわせるためなのか、それとも自己満足するためなのか。理由なんて自分ですら分からないけれど。
狂っていた、でも良い。理由なんて何でも良いから、あいつの全てを知りたかった。強く思った。
本当に狂っていたのかもしれない。
きっと、最期の場所に行けばあいつに会えると、俺は本気で信じていた。
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