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繰り返し
しおりを挟む傷つきたくなくて、傷つけたくなくて。
自分だけ残されてしまって、言葉を話せなくなって、居場所さえもなくして。
何にも縋るものが手元にない。掴もうとしても掴めるものがない。
そんな中で生きることが出来るだろうか。ただ苦しいだけじゃないのか。
だけど俺が雫だったらなんて、口が裂けても言えない。自分の父さんと母さんが死ぬ未来など見たくない。
代わりになってあげられるほど、俺自身、達観することが出来ない。
だから苦しみだけ、悲しみだけ、、
ーーあいつの代わりになりたい……
閉じ込めきれるかはわからない。でも、雫が辛いのはどうしても嫌なんだ。
ーーダメだよ、みっ君……まだ……
俺の中に声が響く。知らないはずの、声が…
ーー我慢したよ、俺だって……雫が近くにいない日々も、母さんが泣いている姿も。それに苦しいんだ。今は酷く、淋しいんだ……
弱音を吐いたのはいつだったか。駄々をこねることはあったけれど、強がりな俺は言うことなんてなかった気がする。
なのにどうしてだろう?今は何も、隠し通せない。
ーーそれはみっ君の心じゃないよ。苦しいのも淋しいのも、私だって同じ。ねぇ、みっ君。進んでよ。私たち、約束、したでしょ……?ーー
ハッと我に返る。目を開ければ、また病院の風景が広がった。
ひとつのベットを囲んで、慌ただしく看護師が行き来する。
部屋の隅には、全てを悟ったように壁に寄りかかりながら涙を流し、ベッドに横たわる人を見つめている雫の姿があった。彼女は寝間着姿で、半分以上の重力を壁へと預け、立っていることさえ不思議に思うくらいに震えている。
これ、は……?
夢の中で夢から目覚めたような感覚に追いつこうとして軽く目を擦った。滲んだ視界がクリアになり、頭の中で整理がつく。
自殺のきっかけであろう、祖母の死。
泣いた彼女にとどめを刺すように、頭を劈くような機械音が部屋へと響き渡る。無機質な謎の音は一定の高さでなり続け、死という旅立ちを嫌でも教えてくる。
ーー……時……分、ご臨終です。
横たわった顔に白い布がかけられる。そんな光景でさえも彼女はしっかりと目を逸らさず見つめて、それでも我慢ができずにペタンと座り込んだ。
あの時と同じ、顔を伏せて、そのまま声も出さずに泣いた。施設の女性が雫の背を優しく撫でる。
あの日と全く同じだったから、俺は、あいつの悲しみを半分くらいは汲めるように、同じようにそっと抱きしめる。
その体は、異様に小さく感じた。
涙で滲む目を閉じて、頬を伝った熱にそのまま意識を委ねた。
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