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自分を殺すということ
しおりを挟む頬を伝う熱は消えることを知らない。瞼の先で景色が変わっても、心は涙を止めることをしなかった。
抱きしめたフリしかできない今は、彼女の虚像にしか触れることができずに温もりを失う。
ずっと抱きしめていたかった。だけど映像は止まらない。雫の終わりへと確実に時を進める。
ここにずっといれば、雫と一緒にいられる。そんなずるい思考を見透かすように、勝手に映像は流れる。
再び瞼を開けた俺は、勢いで尚更その目を見開いた。
橋。雫の最期の場所。そこでは白い帽子をかぶった彼女が、橋の上でしゃがんでいつも通り泣いていた。
……季節は、雨を誘う頃。夏より少し手前。
確か祖母が亡くなったのは、彼女がいなくなる一ヶ月ほど前だった。ということは……
彼女の死……雫の……
俺は、自殺の瞬間まで見せられなくてはならないのか。
雫が世界を見放し返して、最期を迎える時を俺は見なくてはいけないのか。知らなくてはいけないのか。
止めることが出来なかった恨むべき過去を、今度は自分の目で見なくてはいけないのか。
だがそう思うと同時に、見届けるべきだと分かっていた。
終わりは着々と進んでいく。そこで留まることを許さない。
知らなくてはいけない。
いつか多くの人の記憶から消えてなくなるであろう雫の事を、俺だけは忘れないように、覚えていられるように。
覚悟した。受け止めきれなかった雫の死を、今、見届けるべきだ。
そう覚悟したのにーー、、
映像はふとそこで止まった。
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