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吾輩は転生者である
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吾輩は転生者である。
吾輩にはこことは別の世界で生きた記憶がある。しかし、それが特別だと知ったのは最近の事。二度目の生だからと言ってすぐに歩き出したり特別賢かったりする事もなく。ただ、当たり前のように以前の話をしたところ、今の家族が驚いてどこぞへ連絡したらしい。あれよあれよと言う間に馬車で運ばれ、煌びやかな場所へと連れて来られた。
なんでも、このように他の世界で生きた記憶を持つ人間と言うものはたまにある事らしい。最近はテンプレなどと言ってすぐに理解する者もいるらしいが、生憎吾輩はラノベとやらを読んだ事がない。新しい異界の知識なども期待されたが、そちらも残念ながらこれと言って教えられるような物はなかった。
ただ、これまでの異世界人が既に色々広めている為に、有用な知識はそもそも稀らしい。何かしらの専門家でなかったのは残念だが、そこまで落胆はしていないようだった。代わりに転生者のよくあるもう一つの特徴として、何かしらの特技を持つ方を期待されたが、そちらは多少人より身軽と言う自負はある。吾輩としてはそれが役に立とうが立たなかろうがどちらでも良いが。彼奴も有能だったのだが、遅くに家に帰って壊れたように吾輩の名を呼んでは、よくそのまま疲れ果てて寝ていた。あれは大丈夫だったのだろうか?
そもそも前世の事で人に説明出来る程覚えている事は少ない。異世界のどこで生まれたかなどもとんと見当がつかぬ。ただ大事な家族がいて、互いに甘やかし甘やかされ仲良く暮らしていた事だけは記憶している。ああ、この話し方は家族の影響だな。当時は妙な話し方をする程度にしか思っていなかったが。この芝居がかった話し方が好きだったようで、お互いしかいない時はよくこの話し方をしていた。他の人がいる時は猫を被っているのか、他の話し方をしていたがな。
彼奴は吾輩の唯一の家族だ。出会いは大人になってからだが、思えば随分長い付き合いだった。初めて彼奴の家に入った時は殺風景だった。その後は吾輩の為と言って色々買い揃えて、かなり生活感が出て来た。吾輩が来る前の彼奴はどうやって暮らしていたのだろうな?
こちらの世界とは違って遠出はほぼしなかったな。元々彼奴の家の前でよく顔を合わせていて、しばらくしてから彼奴が招き入れたのだ。彼奴の家はがらんとしていたから寂しかったのだろうな。それから10年くらい同居していた。吾輩も彼奴に会うまでは人並みに出歩いてはいたが、彼奴の隣はなかなか悪くなかったからな。暖かい家に美味い飯。気の合う家族がいれば文句はない。
彼奴は家族ではあったが、血の繋がりはなく、伴侶でもないから、まあ、ただの同居人か。しかし、彼奴の手は優しいのだ。出会って最初に話しかけて来たのは彼奴でな。顔を合わせる度に話しかけて来て、しかし無理に距離を詰めるような事はしなかった。その内に、此奴なら一緒にいてもいいと思ったのだ。
しかし、今頃彼奴はどうしているだろうな。吾輩は彼奴を置いて来てしまったが、いつかまた会えたりするのだろうか。ん? 会話を覚えているのなら名前は覚えていないのかと? ほう、縁のある者が後から来る事は時々あるのか。ふむ、会話も雰囲気程度しか覚えていないが、吾輩は彼奴を名前で呼んだりはしなかったからなあ。しかし、吾輩の方は色々呼ばれていた覚えはあるな。……ああ、そうだ。
たしか、「ミーチャンカワイイ」と、呼ばれていたな。
吾輩は転生者である。こことは別の世界で、猫として生きていた記憶がある。
吾輩にはこことは別の世界で生きた記憶がある。しかし、それが特別だと知ったのは最近の事。二度目の生だからと言ってすぐに歩き出したり特別賢かったりする事もなく。ただ、当たり前のように以前の話をしたところ、今の家族が驚いてどこぞへ連絡したらしい。あれよあれよと言う間に馬車で運ばれ、煌びやかな場所へと連れて来られた。
なんでも、このように他の世界で生きた記憶を持つ人間と言うものはたまにある事らしい。最近はテンプレなどと言ってすぐに理解する者もいるらしいが、生憎吾輩はラノベとやらを読んだ事がない。新しい異界の知識なども期待されたが、そちらも残念ながらこれと言って教えられるような物はなかった。
ただ、これまでの異世界人が既に色々広めている為に、有用な知識はそもそも稀らしい。何かしらの専門家でなかったのは残念だが、そこまで落胆はしていないようだった。代わりに転生者のよくあるもう一つの特徴として、何かしらの特技を持つ方を期待されたが、そちらは多少人より身軽と言う自負はある。吾輩としてはそれが役に立とうが立たなかろうがどちらでも良いが。彼奴も有能だったのだが、遅くに家に帰って壊れたように吾輩の名を呼んでは、よくそのまま疲れ果てて寝ていた。あれは大丈夫だったのだろうか?
そもそも前世の事で人に説明出来る程覚えている事は少ない。異世界のどこで生まれたかなどもとんと見当がつかぬ。ただ大事な家族がいて、互いに甘やかし甘やかされ仲良く暮らしていた事だけは記憶している。ああ、この話し方は家族の影響だな。当時は妙な話し方をする程度にしか思っていなかったが。この芝居がかった話し方が好きだったようで、お互いしかいない時はよくこの話し方をしていた。他の人がいる時は猫を被っているのか、他の話し方をしていたがな。
彼奴は吾輩の唯一の家族だ。出会いは大人になってからだが、思えば随分長い付き合いだった。初めて彼奴の家に入った時は殺風景だった。その後は吾輩の為と言って色々買い揃えて、かなり生活感が出て来た。吾輩が来る前の彼奴はどうやって暮らしていたのだろうな?
こちらの世界とは違って遠出はほぼしなかったな。元々彼奴の家の前でよく顔を合わせていて、しばらくしてから彼奴が招き入れたのだ。彼奴の家はがらんとしていたから寂しかったのだろうな。それから10年くらい同居していた。吾輩も彼奴に会うまでは人並みに出歩いてはいたが、彼奴の隣はなかなか悪くなかったからな。暖かい家に美味い飯。気の合う家族がいれば文句はない。
彼奴は家族ではあったが、血の繋がりはなく、伴侶でもないから、まあ、ただの同居人か。しかし、彼奴の手は優しいのだ。出会って最初に話しかけて来たのは彼奴でな。顔を合わせる度に話しかけて来て、しかし無理に距離を詰めるような事はしなかった。その内に、此奴なら一緒にいてもいいと思ったのだ。
しかし、今頃彼奴はどうしているだろうな。吾輩は彼奴を置いて来てしまったが、いつかまた会えたりするのだろうか。ん? 会話を覚えているのなら名前は覚えていないのかと? ほう、縁のある者が後から来る事は時々あるのか。ふむ、会話も雰囲気程度しか覚えていないが、吾輩は彼奴を名前で呼んだりはしなかったからなあ。しかし、吾輩の方は色々呼ばれていた覚えはあるな。……ああ、そうだ。
たしか、「ミーチャンカワイイ」と、呼ばれていたな。
吾輩は転生者である。こことは別の世界で、猫として生きていた記憶がある。
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