首が勝手に右へ右へ回る奇病！～プロ棋士を目指す長男と中学受験の長女を抱えながらのジストニア闘病記～

晴れの舞台 ～新たなる道を行く～

　一通り、私の状況を話した後に、
　会議室の入り口から羽織袴とスーツを着た人が顔を覗かせる。

　二人は晴れがましい顔をしている。

　職場は、
　昨日、今日と「晴れの門出」を迎えている。

　午後四時過ぎという、
　落ち着いた時間を選んだのだが、
　この二人だけにはたまたま会うことができた。

　私の首の状態を見て、
　驚いた様子だった。

　つい、先週に会ったばかりだった。
　首に異変があることは伝えていたが、
　こんなに酷くなっているとは思わなかっただろう。

　一人は四月から沖縄県だ。
　それぞれ人生の節目を迎えている。

「私が言うのも何だけど、健康には気をつけて！」
　今の私なりの花向けの言葉だ。

　本当はもっと会いたい人はいたが、
　二人に会えただけでも幸運だった。

　もっとも、この二人は元々しっかりしているので、
　今後の人生においても困難を乗り越えていってくれそうだ。

　逆に心配な別の二人がいた。
　彼らは昨日が「晴れの舞台」だった。
　会えなくて残念だったが、こればかりは仕方がない。

　一人は脳の病気だったし、
　もう一人はこの一年で成長してはいた。
　でも、二人も心配ないと思う。
　自らの力で新たなる道を歩み始めてくれるだろう。

　私は運よく会えた二人に別れの挨拶をしたあと、
　自分のデスクとロッカーを整理した。

　デスクには、会えなかった人たちからの
　メッセージやプレゼントが置いてあった。

　あとでゆっくり確認しようと、
　急いで片づけて、職場を辞去した。

「急だったけど、職場に来れてよかったね」
　妻が運転しながら言った。

　予定になかったことだけに、
　なおさらそうかもしれない。

　みんなが心配してくれて、
　ありがたかったし、少し元気をもらった気がする。

　温かい気持ちを胸に帰路に着いた。


※副題は、「Mr.children」の「CROSS　ROAD」の歌詞一部です。