好きになった女子が愛人にしかなる気がないと言っていたので、形だけの彼女を作って愛人として付き合ってもらった。

無自信

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第9話

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 朝になってスマホを確認するとナツキからメッセージが7,8個来ていた。内容を見てみると、「ホントにごめん。」、「私が悪かった。」、「許してほしい。」みたいなことがほとんどだったので、強く言い過ぎたかな?と一瞬、自分の言動を反省したが、「でも、心配だったんだ。」というメッセージを見て、何で幼馴染とはいえナツキにそこまで心配されなきゃいけないんだ!心配していたら、俺のことを裏で調べてもいいのかよ!と少し怒りがぶり返してきたため謝罪のメッセージを送るのはやめておいた。


 放課後4人で集まって話すことが出来ないので、昼休みに4人で集まって漫画の話をした。カジワラの様子は相変わらずだったので、俺もいつも通りに振舞った。あまり時間がなかったので話せたのは最近の「チェン〇ーマン」についてだけだった。でも、昨日だけとはいえ4人で漫画の話をしない日があったのでかなり盛り上がった。

放課後になっても、ナツキは俺に会いに来なかった。俺から謝りに行くのは何か違う気がしたのでこちらからは会いに行かなかった。しかし、さすがにナツキの方から直接謝りに来たら許してあげようと思っていたが、なかなか目論見通りにはいかなかった。

考えてみるとナツキはラインのメッセージとはいえ謝っているわけだから俺が返事をするべきではないか?う~ん、でもなぁ。今更ラインで返事をしてもおかしい気もするし、学校でナツキに直接会いに行くのは何か恥ずかしいし、やっぱりあの手しかないか。

俺なりに最善だと思う解決案を見出したので、もうそれ以上悩むのはやめてやるべきことをやろうと考えた。

 
 昨日と同じく5時前にキョウヘイの家にやってきて、シュート練習と中間試験の勉強を交互に行った。シュートは200本中93本入った。成功率が急激に上がることはなかったが少しずつ着実に上がっていた。問題はシュート練習よりも中間試験の勉強の方にあった。さすがに暗記ばかりではテストでいい点数を取れる気がしなかった。

その疑問をキョウヘイにぶつけると、キョウヘイは、「そうだよな。セイがそう思うのも分かるよ。だから明日は中間試験の勉強時間を1時間にして問題集を解こう!」と返答してきた。

「え!いいのか?1時間も時間を取って?」

「大丈夫だよ。明日は何曜日だと思ってるんだよ?」

「え~と、明日は土曜日だよな?……そっか!授業は午前中で終わるのか!」

「そうそう。だから勉強時間を1時間取ってもシュート練習の時間が減ることはないよ。まあ、セイの体力が持ったらの話だけどね。」

「分かってるよ。」

この日も8時までに俺の家に着くように7時半過ぎにはキョウヘイの家を出た。


 車の中で俺がサンドイッチを頬張っていると、キョウヘイが、「そういえば今日もナツキが俺のところへ来たぞ。」と話しかけてきた。俺は急に振られた話題が気にかけていたナツキのことで驚き、サンドイッチを喉に詰まらせかけてしまった。

俺がそれをカフェオレで飲み下そうとしているとキョウヘイが、「おいおい。大丈夫か?」と心配そうに声を掛けてきた。何とか飲み下すことが出来た俺は、「ごめんごめん。大丈夫だ。それでナツキは何か聞いて来なかったか?」とキョウヘイに尋ねた。

「昨日聞いてきたセイの様子がおかしいってことについては聞いて来なかったな。なんか『セイ、私のこと怒ってなかった?』って聞いてきたけど、昨日何かあったのか?」

「いや、実はその……。」

俺は昨日のナツキとのやり取りをキョウヘイに説明した。キョウヘイは説明の間、終始無言だったが、俺の説明が終わると、「心配だからって裏で俺に聞いていたナツキも悪いが、セイも少し言い過ぎたな。一応は心配してくれたわけだし。」と忠告してきた。

「分かってるよ!だから今日帰ったら謝ろうと思ってるよ!」

「そっか。ならいいけど。あと……。」

「なんだよ?まだあるのかよ?」

「あと、ナツキのことだからって気軽にセイに話した俺も悪かったな。あとでナツキに謝っとくよ。」

「うん。その方がいいかもな。」

俺もキョウヘイもお互いにナツキへの罪悪感から気分が落ち込んだため、その後は一切会話しなかった。


 俺の家に着くとキョウヘイとカミオカさんにお礼を言って車を降りた。玄関のドアを開けると母さんがやってきて、夕飯を食べるか聞いてきた。俺はまだ少しお腹がすいていたから、「食べる。」と返事をした。

「分かった。用意するから、荷物置いてきちゃいなさい。」と母さんに言われて、自室に荷物を置きに行った。

部屋に入ると、すぐにナツキに謝った方がいいかな?と思ったが、夕飯を食べてからでもいいだろう。と思い直しリビングへ向かった。

夕飯を食べ終えると、よしっ!それじゃあ、ナツキに謝ろう!と思ったが、母さんに「お風呂沸いているから、後で入りなさいね。」と言われて、お風呂に入ってからでもいいか。と思い直してしまった。

ここまでくれば自分でも嫌というほど分かるが、俺はナツキに謝るのを先延ばしにしていた。もちろん、すぐに謝りたいという気持ちもあった。だが、謝るのなら今朝謝った方が一番良かったのではないか?という思いが浮かぶとなかなか実行に移せずにいた。

そもそも謝ったところで許してくれるのだろうか?許してもらえないなら謝らなくていいのではないか?という酷い考えまでが浮かんできたが、許してもらえなくても謝るということが大事なんだ!謝らなかったら、今後ナツキとの付き合いはなくなってしまうぞ!それでもいいのか!と考え直し、よしっ!お風呂から出たら謝るぞ!と意気込んだが、結局長風呂をしてしまった。

さすがにお風呂から出たら先に延ばすことができず、自室の窓の前でラインのメッセージをナツキに送ろうとした。タイミングよくナツキからメッセージが来ないかな?と期待したが、そううまく行くことはなく、意を決して「窓開けてくれないか?」とメッセージをナツキに送った。

俺は窓を開けてナツキの部屋の窓が開くのを待ったが、送ってから数分(体感ではそれ以上に感じたが)経っても既読にはならなかった。仕方ない。返信が来るまで気長に待つか。と考え、窓を閉めようとした時、ナツキの部屋の窓が勢いよく開いてナツキが顔を出した。パッと俺とナツキの目が合うとお互いに気まずさがあったため、しばらく無言の時間が流れた。しかし、このままでは良くないと思った俺はまず謝ろうと思い立った。

「「ごめん!」」

「「え?」」

俺が謝ると同時にナツキも謝ってきた。俺はナツキが謝る理由が思いつかず、ナツキに、「何でナツキが謝るんだよ?」と聞いた。

「だって昨日、裏でキョウヘイにセイのこと聞きだしたりしてセイを怒らせたから。むしろセイの方こそ何で謝るの?」

「それは昨日怒ってたとはいえ、ナツキに対して言い過ぎたと思ったからだよ。ホントにごめん!」

「ううん。私の方こそごめん!」

「いや、俺の方こそごめん!」

「いやいや、私の方こそごめん!」

「いやいやいや、俺の方こそごめん!」

「いやいやいやいや、私の方こそごめん!」

「「ぷっ!あっはっはっは!」」

俺とナツキは同時に吹き出し笑い始めた。というのも俺とナツキは小・中学生の時によくケンカをしては、こうしてお互いに窓を開けて謝り合って仲直りをしていたからだ。久しぶりだったが、今まで通りで笑いがこみ上げてきてしまった。

「それじゃあ、お互い悪かったってことで!」とナツキが提案してきたので、「ああ、そうしよう!」と同意した。

「それじゃ、もう寝るね。おやすみ~。」
と言って、ナツキが窓を閉めようとしたので、俺は「待った!」とナツキが窓を閉めるのを止めてしまった。

ナツキが驚いた顔で「どうしたの?」と聞いてきたが、俺も自分自身に驚いていた。ナツキが窓を閉めようとした時、キョウヘイの「一応は心配してくれたわけだし。」という発言を思い出してしまい、ナツキにこのまま黙っておくのは良くないのではないか?と思ってしまった。

まあ、ナツキにカジワラに振られたことを話しても誰かに言いふらすようなやつではないからな。

「あのさ、3日前から俺の様子がおかしいってナツキ言ってたじゃん?実は俺、3日前に告白して振られたんだ。」

ナツキは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに寂しそうな表情になった。

「……そっか。まあ、そんな気もしてたんだよね。相手はハタケさんでしょ?いくら仲良くても、あんな美人がセイに振り向くわけないじゃん。身の程をわきまえなさいよね。」

「は?」

「は?」

「いやいや、確かにハタケは美人だけど、俺が振られたのはハタケじゃなくてカジワラ!」

「カジワラさん?何でカジワラさん?(ハタケさんだったら諦めがついたのに……。)」

最後のごにょごにょ言ったところは聞き取れなかったが好きなった相手をバカにされた気がしたので、「カジワラだって可愛いし、性格もいいし、何より話が合う!好きになるには十分な理由だろ!外見だけでカジワラがハタケに劣ってると思うなよな!」と反論した。

「それはごめん。そうだよね。好きなるにはいろんな理由があるよね。それでカジワラさんに振られたこととここ最近帰りが遅いことは関係あるの?」

「それは……カジワラには振られたけどまだ俺はあきらめてないんだ。それでカジワラを振り向かせるためにキョウヘイと特訓しているんだ。」

「特訓?どんなの?」

「それは言いたくない。もう少し形になったら話すよ。」

「分かった。セイが私に話したくないことを話してくれたんだから、これ以上は聞かない。」

「あと、このことは……。」

「うん。誰にも話さない。」

「それじゃ、おやすみ。」

「おやすみ。」

俺は窓を閉めてカーテンを閉めた。ナツキにカジワラに振られたことを話してしまったぁ~!と後悔する気持ちもあったが、どちらかと言えば、話したことによってすっきりする気持ちの方が大きかった。
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