好きになった女子が愛人にしかなる気がないと言っていたので、形だけの彼女を作って愛人として付き合ってもらった。

無自信

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第11話

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 次の日の日曜日、天気は雨だった。

キョウヘイの用事がなかったとしてもシュート練習はできそうになかった。俺は自室にこもって中間試験の勉強をしていた。キョウヘイがいないと難しい問題は解けそうになかったので、教科書や資料集、辞書などを見れば答えが何となく分かる古文や漢文、英語や歴史などの文系科目の問題集を解いていた。

といってもスケジュールを管理してくれるキョウヘイがいなかったので、俺が得意な(好きな)科目の歴史ばかりやってしまった。さすがにヤバいと思って英語の問題集を開いたが15分もやると集中力が途切れてしまって、気付いたらベッドに横になってスマホで漫画を読んでいた。

俺って誰かに見てもらっていないと勉強できないタイプなのかなぁ?キョウヘイと一緒に勉強している時はちゃんと集中できていたのになぁ。と自分で自分に呆れてしまった。

スマホを手放して天井をボーっと見ていたらあることに気が付いた。キョウヘイと一緒に勉強していた時はシュート練習もしていたので平日は30分、土曜日は1時間しか続けて勉強していないが勉強する科目を2,3度変えていたことに気が付いた。しかも俺の集中力が途切れてきた時にキョウヘイが「別な科目やるか?」と提案してきていた。

そういえば、キョウヘイが「集中力が途切れたら別な科目をやるといいぞ。」と言っていた気がする。よしっ!試してみるか!俺はベッドから起き上がり、机に向かった。それからは集中力が途切れたら別な科目を勉強するようにした。ずっと同じ科目を勉強するよりは勉強時間が続いているような気がした。この日は他にやるべきこともなかったので、ほとんど自室にこもって勉強していた。


 次の日、朝のホームルームで6月にやる球技大会の出場種目を決めるので、午後のホームルームまでに出たい種目を決めておけと担任に言われた。俺は当然バスケ一択だが、競合相手は多そうだった。2時間目と3時間目の間の休み時間、俺とキョウヘイとカジワラとハタケは球技大会で何に出たいか話した。

「俺とキョウヘイはバスケに出たいと思ってるけど、カジワラとハタケは?」

「私とミーちゃんは卓球にしようと思ってる。バスケとバレーは私たちの運動神経じゃ、他の人たちの迷惑になっちゃうからさ。ねっ、ミーちゃん?」

「うん。あ!もちろん、卓球に運動神経がいらないって言ってるわけじゃないよ!でも運動神経がない私たちじゃ、団体競技は無理かなって思ってさ。」

「そっか。全員出たい種目に出られるといいな。」

「そうだね。そろそろ3時間目始まるね。席につかないと。」

そこで会話は終わり、俺たちは自分の席に戻った。


 3時間目、4時間目の授業が終わり、お弁当を食べた後、俺とキョウヘイはカジワラがカウンター係をやっている図書室へ向かった。

 図書室のドアを開けて雑誌などが置かれているスペースを通り抜けていくと、図書委員が本の貸し出しを行っているカウンターがあった。俺はすぐにカジワラを見つけたので話しかけようとカウンターに近づいて行こうとしたが、すぐにキョウヘイに左肩を掴まれて止められた。

「何するんだよ!」

俺が止められる理由が分からず、少し苛立ちながら尋ねた。

キョウヘイは図書室の中なので小さいが聞き取れるくらいの声で、「セイの方こそ何やってんだよ!カジワラは図書委員の仕事をしてるんだぞ!話しかけても会話をしている暇はないんだぞ!」と俺に忠告してきた。

「じゃあ、どうやってアピールするんだよ?」

「だから土曜日に言っただろう?カジワラの好きな小説を借りてアピールすればいいんだよ!カジワラの好みは本当に知らないのか?」

「そうだったな。昨日カジワラとの今までの会話を思い出して、何とか1つカジワラの好きな小説を思い出したよ。」

「へー。それじゃあ、それを借りようか?まあ、学校の図書室にあればの話だけどな。」

「たぶんあると思うぞ。推理小説だから。」

俺の発言を聞いてキョウヘイは目を皿にしていたが、すぐにため息をついて、「お前なぁ、思い出したって言ってもその程度かよ!ジャンルだけじゃ幅が広くて、借りようとした小説がカジワラの好きな小説か分からないだろ!」と怒ってきた。

「仕方ないだろ。何とか思い出したのがそれだけだったんだから。それに推理小説だったら何でも好きかもしれないじゃん。」

「はぁ~。まあ、その可能性に賭けるしかないか。じゃあ、面白そうな推理小説を探そう!」

俺とキョウヘイは分かれて面白そうな推理小説を探し始めた。
昼休みも残り15分ほどだったので急いで探したが、急ぐと焦りが生まれてきてどの推理小説がいいのか全然分からなかった。

もうこうなったらカジワラにお薦めの推理小説を聞いたらどうだろう?いやいや、それは本末転倒だ。そういえば、入口の辺りにお薦めの本を紹介してる棚があったな。そこに推理小説があるかもしれない。とりあえず見てみるか。

俺は入口付近にある、たぶん図書委員の人がお薦めしてる本が並んでいる棚のところ行ってみた。図書委員が書いたPOPを見てみると今月は直木賞受賞作を紹介しているみたいだった。紹介されている小説に推理小説はないのかな?

POPを1つずつ見ていくと、1つだけ推理小説を紹介しているものがあった。「東〇圭吾」の「容疑者〇の献身」という作品だった。「東〇圭吾」は聞いたことあるな。しかも、直木賞受賞作なんだから面白いに違いない。よしっ!これを借りよう!そう思って、その本に手を伸ばすと他の人の手とぶつかった。

うわっ!こんな漫画みたいなことあるんだな。と思いながら、手がぶつかった人の方を見ると、髪型が三つ編みの眼鏡をかけた女子だった。さらに上履きの色を見ると1年生だということが分かった。

俺が何も言わずに見ていたからか、三つ編みの女子は少し怯えながら俺のことを見ていた。あ!早く何か言わないと俺が威圧しているように彼女は感じてるかもしれない。と思い、咄嗟に、「ごめんごめん。どうぞ。」と言いながら俺は本を譲るようなジェスチャーをした。

すると三つ編みの女子も「いえ、私は大丈夫ですのでどうぞ。」と言い返してきた。

「いや、俺のことは気にしないでいいから。どうぞ。」

「いえ、私の方が手を伸ばしたの遅かったですから。どうぞ。」

お互いに譲り合ってどっちが本を借りるか決まらなかったので、俺は正直に、「俺絶対この本を読みたいと思っている訳じゃないんだ。何か面白い推理小説はないかなと思って探してたらこの本を見つけて、たまたま手に取ろうとしただけなんだ。だから俺のことは気にしないで。」と打ち明けた。

しかし三つ編みの女子は「でも……。」と言ってなかなか踏ん切りをつけられずにいた。

「そうだ!キミ、推理小説に詳しい?詳しいんだったらこの本以外で面白い推理小説を俺に教えてくれない?俺はそれを借りるからさ。」

「そんなに詳しいわけじゃないですけど、『東〇圭吾』のガリレオシリーズに興味を持ったのなら、1作目の『探偵ガ〇レオ』を読んでみるといいと思います。確か、こっちに……。」

三つ編みの女子が本のある場所に連れて行ってくれるみたいなので、「場所まで教えてくれるの?ありがとう。」とお礼を言った。

「これです!これ!」

三つ編みの女子が指差すところに目的の本があった。

「ありがとう。それじゃあ、俺はこれを借りるから。」

「はい。それじゃあ、私はこれで。本譲ってくれてありがとうございました。」

「こっちこそありがとう。」

俺は三つ編みの女子にお礼を言って、薦められた本を手に取り、カジワラのいるカウンターまで行った。

「この本貸してくださ~い。」

「トツカくんが図書室に来るなんて珍しいね。しかもガリレオシリーズ借りるなんて。どうしたの?急に推理小説に興味がわいたの?」

「まあ、そんなとこ。カジワラはこれ読んだことある?」

「あるよ。すごく面白かったよ。この小説の犯人はね~……。」

「ちょっと!ネタバレ禁止!読む楽しさ無くなるじゃん!」

「アハハ!冗談だって!そういえばさっきの女子とは仲良くなれた?」

「え!」

「ほら、さっき本を取ろうとして手がぶつかっていた女子だよ!仲良くなれた?」

俺はさっきの三つ編みの女子とのことを一部始終カジワラに見られていたのだと思うとすごく恥ずかしい気持ちもあったが、もしかしてカジワラは俺が他の女子と仲良くなることを気にしているのかな?と考えると少し嬉しい気持ちもあった。

「気になる?」

「うん。少しね。だってトツカくんは早く誰かと付き合わないと私と付き合えないよ。私いつまでも待つつもりはないからね。」

予想だにしないカジワラの返答にショックを受けて俺はそれ以上何も言えなかった。

借りた本を受け取って、他の人の邪魔にならない所で立っていたら、キョウヘイが俺の肩をポンポンと叩いた。「セイ!良さそうな推理小説見つけたぞ!」

そう言われて振り向いた俺の顔を見たキョウヘイは、「どうした?何かあったのか?」と俺を心配してきた。

「キョウヘイ……実は……。」

俺がさっきカジワラに言われたことをキョウヘイに伝えようとしたら、キョウヘイが見つけて持ってきた本が目に入り、「キョウヘイ、面白いんだろうけど、『江戸川〇歩』はないと思うぞ。」と先にキョウヘイが見つけてきた本についてダメ出しをしてしまった。

「そうかな?カジワラ、『名探偵〇ナン』好きだったじゃん?だからいいかな?と思ってさ。」

「そうだけど、『〇ナン』が好きだからと言って『江戸川〇歩』も好きだとは限らないぞ。」

いくら言っても、キョウヘイは最後まで納得してない様子だったが、俺は「もう本は借りちゃったから。」と言って、キョウヘイの薦めてきた本は借りなかった。
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