好きになった女子が愛人にしかなる気がないと言っていたので、形だけの彼女を作って愛人として付き合ってもらった。

無自信

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第20話

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 試合が終わってコートを出ると、応援してくれていた同じクラスの人たちがキョウヘイの周りを囲んだ。

「やるじゃん!イチノミヤ!」

「カッコよかったよ!イチノミヤくん!」
など口々にキョウヘイを称賛した。すぐ気が付いたが、前の試合で八木を囲んでいた人数より多かったので、応援に来てくれた人も前の試合より増えたみたいだ。一応俺と八木も1本ずつシュートを決めていたが応援してくれていたクラスメートの目には俺と八木は入らないようだ。

まあ、クラスメートに褒められたくて頑張ったわけではないからどうでもいいっちゃどうでもいいのだが、この感じだとカジワラの反応も予想できてしまう。

「トツカくん、お疲れ!」

俺が意気消沈していると、カジワラたちの方から労いの言葉をかけてきた。

「ああ、カジワラ、ハタケありがとう。」

「やるじゃん!トツカくん!またシュート1本決めてたじゃん!」

「……別に無理して褒めてくれなくてもいいよ。」

俺はせっかくハタケが褒めてくれていたのに、ひねくれた意見を言ってしまった。すぐに後悔したのだが、ハタケはあまり気にしていないみたいで、「そんなことないよ!普通にすごいと思ったから言ってるんだよ!ね!レーちゃん!すごかったよね?」と本気で褒めていることを強調してきた。

「うん。確かにすごかったよ!あのほぼ膠着状態の時にシュートを決めたのは。でもトツカくんには悪いけど1番すごかったのはイチノミヤくんかな。あの逆転の3ポイントシュートはカッコよかったよね!」

「確かにイチノミヤくんの方がすごかったけど、トツカくんも頑張ってたと思うよ!」

「もういいよ。ハタケ。キョウヘイはすごい奴だって俺も思ってるから。ホント、顔も頭も良ければ運動神経もいいキョウヘイが俺なんかと友だちでいてくれる理由がよく分からないよ。」

俺が自虐的にそう言うと、ハタケが「友達になるのに容姿や能力は関係ないと思うよ。それよりも気が合うとかの方が大事だと思うよ。」と諭すように言ってきた。

ハタケの言葉にハッとした俺は、「ごめんごめん。本気で言ってた訳じゃないんだ。もう言わないよ。」と謝った。

「何を本気で言ってないって?」

俺は背後から急に話しかけられたのでパッと後ろを振り向くと、そこにはやっとクラスメートから解放されたキョウヘイが立っていた。

「なんでもないよ。キョウヘイには関係ないことだよ。」

「本当か~?怪しいな~?カジワラ、ハタケ、ホントに俺には関係ないのか?」

「ホントだよ。イチノミヤくんには関係ないことだよ。ね!レーちゃん?」

「うん。そうそう。イチノミヤくんには関係ないことだよ。」

俺の発言にカジワラとハタケは合わせてくれた。それでもキョウヘイは少し疑っている様子だったが、「まあいいか。それなら。」と渋々納得していた。

話が終わるとキョウヘイは急に申し訳なさそうな顔をして、「セイ、ごめん!」と俺に謝りだした。俺が訳が分からず、「急に何だよ?何で俺に謝るんだよ?」とキョウヘイに理由を尋ねた。

「さっきの試合の最後でセイにパスしなかったからだよ。ホントにごめん!」

「いやいや、あれはしょうがないって。俺さっきの試合、シュートの成功率低かったし、俺がシュート決めても同点で延長になるだけだったしさ。キョウヘイがシュート決めてくれたおかげで勝てて良かったと思ってるよ。だから謝るなよ!」

「いや、それは結果論だよ。それに一番良くないのはセイがシュートを入れてくれると俺が信じられなかったことだよ!セイはあんなに一生懸命シュ……。」

「あー分かった!分かった!キョウヘイの気持ちはよーく分かったから、俺がもういいって言ってるんだしこの話は終わりにしよう!」

キョウヘイが特訓の話をカジワラたちの前でしそうになったから俺は慌てて話を遮った。

「セイ!ホントにごめん!」

俺はまだ謝ってくるキョウヘイの肩を叩きながら、キョウヘイは性格もいい奴なんだよなぁ。と思っていた。

 
 「キョウヘイ、もういいから試合を見ようぜ。次の対戦相手がどこのクラスになるか見なきゃ。」

「それもそうだな。でも次の対戦相手は決まってると思うぞ。」

「え?あー、言われてみればそうかもしれないな。さっきから女子の『キャーキャー!』言う声が聞こえてるからな。」

「え?そんな強いクラスがいるの?」

カジワラが俺とキョウヘイの会話を聞いて、疑問に思ったことを聞いてきた。

「とりあえず、試合を見ながら説明するよ。ほら、今ボールをドリブルしている選手のクラスが俺とキョウヘイが次の試合で当たると思っている3-2だよ。」

「あのクラス?そんなに背の高い選手がいないし強そうに見えないけど?」

「スコアボード見てみなよ。」

俺に促されてカジワラとハタケはスコアボードを見た。そして2人とも点数を見て愕然としていた。

「え?まだ5分しか経っていないのに25点も取ってる!相手チームが弱いわけじゃないよね?」

「たぶん3回戦だからそれはないよ。3-2にはすごい点取り屋がいるんだよ。ほら、今ボールをパスカットした人!」

俺がカジワラとハタケに3-2の点取り屋を説明しようと指差した時に、試合を観戦していた女子たちの黄色い声が上がった。

「え?なにこれ?まだ点を取ったわけでもないのに、なんでこんなことになってるの?」

「カジワラ、女子なのに堀田先輩知らないのか?」

「堀田先輩?あー、あの人が堀田先輩なのか。聞いたことはあるよ。元バスケ部なんだよね?」

「そうそう。元バスケ部でシューティングガ……。」

「キャー!!」

俺がカジワラとハタケに堀田先輩の説明をしている最中に堀田先輩が3ポイントシュートを決めて、また周りの女子たちが黄色い声を上げた。

堀田先輩は2年までバスケ部だったが、家の方針から3年では部活をやらずに受験勉強に集中しているらしい。噂では父親が医者で堀田先輩も医者になることを望まれていて、部活は高校2年までと決められていたらしい。身長は180センチいくかいかないかぐらいだが、顔もイケメンで頭も良く、性格もいいらしいので女子人気は高かった。

同じようなスペックの男子なら俺の知り合いにもいるが、そいつは趣味が漫画だから少し残念イケメンだと周りの女子から思われていた。

「でも、いくら元バスケ部の堀田先輩がいるからって、こんなに点を取れるの?」

カジワラがもっともな疑問を聞いてきた。

「確かに堀田先輩しか上手くなかったらこんなに点は取れないと思うけど、3-2の選手は昼休みによくバスケをして遊んでいる先輩ばかりだから、堀田先輩をうまくサポートもできるし自分たちで点も取れるから、まだ6分ぐらいしか経っていないのに点を28点も取れるんだよ。ほらまた決めた。」

俺が説明している間にも堀田先輩がまたシュートを決めて2点取っていた。そして周りの女子たちから黄色い声がまた上がった。

「キョウヘイどうだ?3-2にうちのクラスが勝てると思うか?」

俺は半ば諦めかけていたがキョウヘイに勝機があるか尋ねた。

「セイ……諦めたらそこで試合終了だぞ。」

「キョウヘイ……お前それ言いたいだけだろ?」

俺がツッコむとキョウヘイは照れくさそうに笑いながら、「バレたか。だって一度は言ってみたいセリフじゃん。」と答えた。

「確かに一度は言ってみたいセリフだけどな。」

「だよな。まあ勝てばラッキー、負けて当たり前の精神でやるしかないな。」

「そうだな。」

3-2と3-8の試合は39対2で3-2の勝利だった。残りの2試合も観戦したが、3-2より強いチームはいなかった。


 そしていよいよ準決勝第1試合2-3対3-2が始まった。うちのクラスの出場選手は俺、キョウヘイ、八木、伊東、近藤だった。ちなみにこの試合は俺とキョウヘイと八木が出場するのはすんなり決まった。伊東、近藤、清水が怖気づいて出たがらなかったからだ。でもあと2人は出なくちゃいけないので、仕方なくじゃんけんをして勝った伊東と近藤が出ることになった。

結果から言ってしまうと5対33で俺たちのクラスがぼろ負けした。

調子が良かったのは最初のジャンプボールで八木が勝ったところまでで、あとはいい所がなかった。戦力である八木とキョウヘイが徹底的にマークされて、さらに伊東と近藤という弱点を突かれてしまいぼろ負けした。一応俺のシュートが1回とキョウヘイの3ポイントシュートが1回決まったが焼け石に水だった。試合中は堀田先輩への黄色い声しか聞こえてこなかった。

試合が終わり、コートから出るとハタケとカジワラが近づいてきた。

「お疲れ。トツカくん。イチノミヤくん。強敵相手に頑張ったと思うよ。ね!レーちゃん。」

ハタケが労いの言葉をかけてくれたが、俺は今回の球技大会で全くカッコいい所をカジワラに見せられなかったので落ち込んでいた。

「うん。私も頑張ったと思うよ。あのクラス相手に点を取れたのがすごいと思うよ。」

カジワラも労いの言葉をかけてくれたが俺はそんな言葉より、「カッコよかったよ!」と言ってもらいたかった。

「ありがとな。カジワラ。ハタケ。そう言ってもらえて嬉しいよ。な!セイ?」

「……うん。そうだな。ホントありがたいよ。」

「ちょっと俺とセイは飲み物買ってくるな。ほらセイ行こうぜ!」

キョウヘイが俺のことを気遣ったのかカジワラから離れられる機会を作ってくれた。

「ああ……。」

俺は返事をしてキョウヘイと学校の自販機まで歩いて行った。自販機に着くとキョウヘイが、「いやー、セイは頑張ったと思うよ!球技大会ではカジワラを振り向かせられなかったかもしれないけど、まだ高校生活が終わるわけじゃないんだからチャンスはあるよ!次のことを考えようぜ!」と俺を慰めてくれた。

そんなキョウヘイに向かって俺は3-2との試合が終わってからずーっと考えていたことを口にした。

「キョウヘイ、俺……。」

「ん?どうした?」

「俺、彼女を作るよ!」
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