好きになった女子が愛人にしかなる気がないと言っていたので、形だけの彼女を作って愛人として付き合ってもらった。

無自信

文字の大きさ
35 / 60

第35話

しおりを挟む
 次の日の火曜日、この日から期末試験1週間前なので部活が休みになる。

だから、ナツキも授業が終わったら時間があるので、俺とキョウヘイとカジワラとハタケの4人で放課後やってる勉強会に誘おうかな?と考えた。

しかし、ナツキは俺とキョウヘイとは幼馴染で仲がいいが、カジワラとハタケとは1,2度会ったことがあるだけの関係なので、いくらナツキのコミュニケーション能力が高いと言っても、親しくない人と一緒に苦手な勉強をやるのは厳しいかな?と考え直して誘わなかった。

いつもの4人で放課後試験勉強していたが、いつも通りカジワラはキョウヘイにしか質問しなかった。俺はもう諦めて黙々と勉強して、時々分からない問題をキョウヘイに聞いたり、ハタケがキョウヘイの代わりに俺に質問してきた問題の解き方を教えたりした。

そんな中、カジワラが、「イチノミヤくん、これ分かる?」と聞いてきた問題を見たキョウヘイが、「うーん?ちょっと分からないな。」と答えた。キョウヘイにも分からない問題ってどんな問題だ?と思って、チラッとのぞいてみると、保健体育の問題だった。

そうだった。期末試験だから保健体育や家庭科の試験もあるんだった。全然やってなかった。俺もやらなくちゃ!
英語の問題集を片付けて、保健体育の教科書をロッカーまで取りに行った。教科書と資料集を取って戻ってくると、キョウヘイがカジワラに、「俺、教科書手元にないから調べようがないし、教科書持ってるセイに聞いてみたらどう?」と提案してくれた。

「そうだね。トツカくん、これ分かる?」と、カジワラはキョウヘイの提案を受け入れて俺に質問してきた。

ナイス!キョウヘイ!と心の中でキョウヘイに感謝しながら、俺は、「どれどれ?どの問題?」と聞き返した。

「この問題なんだけど?」

カジワラが指差していたのはサッカーのルールに関する問題だった。俺も何となくしか理解していなかったので、すぐには答えられなかった。しかし、俺はすぐに資料集を開いて、サッカーのルールを調べ、カジワラに教えてあげた。

「分かった。ありがとう!トツカくん!」

カジワラに頼られる時間はあっという間に過ぎてしまったが、試験勉強をしていて初めてカジワラに頼られたのですごく嬉しかった。

このあとも昨日と同じく午後5時まで試験勉強をしたのだが、カジワラがまた俺に質問してくることはなかった。

午後5時になると、試験勉強をやめて下校の準備を始めた。俺はどうせカジワラたちとは一緒に帰れないし、ナツキも待ってるだろうと思ったので、下校の準備をすると、「それじゃ、また明日。」と言って、一目散に帰宅した。


 俺が帰宅すると、すぐにスマホにラインのメッセージが来た。

ナツキから「帰って来たよね?今からセイの家に行ってもいい?」とあった。

それを見て俺は「OK」という意味のスタンプを送った。

スタンプを送ってから数分後、家のチャイムが鳴った。玄関に向かうと、先に来ていた母さんが玄関のドアを開けていた。

「あら?ナツキちゃん!久しぶりね!どうしたの?」

「お久しぶりです。セイのお母さん。今日はセイと一緒に試験勉強をしようと思って来ました。」

「そうなのね。セイ!ナツキちゃんが来てるわよ!」

「分かってるよ!ナツキ、早く上がって来いよ。」

俺は母さんとナツキが話しているのが何だか気恥ずかしくて、すぐに離れさせようとナツキを俺の部屋に呼んだ。

「うん。お邪魔します。」

ナツキは脱いだ靴をちゃんとそろえてから階段を上がってきた。俺はナツキが部屋に入るとすぐにドアを閉めた。ナツキが俺の横を通って部屋に入って来た時、以前勉強を教えた時みたいに、シトラス系の香りがした。俺がその香りに気を取られていると、ナツキが、「セイ、どうしたの?」と尋ねてきた。

「いや、ナツキからいい匂いがするなと思ってさ。制汗剤の匂いか?」

「制汗剤?違う違う。ボディミストだよ。」

「ボディミスト?」

「香りが付いた化粧水みたいなものだよ。」

「ふーん。そうなんだ。」

ナツキもなんだかんだ言っても女子なんだよな。そういえば、ナツキの今の服装もTシャツにジーンズというカジュアルな服装だが、ちゃんとコーディネートされている気がする。夜に窓越しに話すときに着ているジャージ姿に比べるとかなり女子っぽさを感じる。

「早く試験勉強始めよう。聞きたいところがたくさんあるんだから。」

「ああ、そうだな。」

急にナツキに女子っぽさを感じて、少し照れくさく感じたが、試験勉強を始めてしばらくするといつの間にか感じなくなっていた。

ナツキはハタケよりも勉強ができないので、質問してくることはハタケよりも基本的なことだったので教えるのは楽だった。途中、母さんが飲み物を持ってきたが、試験勉強をしている俺たちを見て、少しがっかりしているようだった。

午後7時くらいまでナツキと一緒に勉強した。

「そろそろ帰るね。今日はありがとう。また明日もよろしく!」

「ああ、また明日な。」

そう言ってナツキが帰ったあと、晩ご飯を食べて、日付が変わるまで試験勉強をした。


 次の日の水曜日から金曜日までの3日間の放課後は午後5時まで俺、キョウヘイ、カジワラ、ハタケの4人で試験勉強をして、午後5時に下校して家に帰ってきたら、俺の部屋でナツキと試験勉強をするという代わり映えしない日々を送った。

カジワラは俺と2人きりで試験勉強はしないと言っていたので、午後5時になるとナツキと試験勉強をするために、まっすぐ家に帰った。

代わり映えしないといったが、少しだけ変わっていったところがあった。それはうちを訪ねて来るナツキの服装だった。水曜日は火曜日とあまり変わらないTシャツとジーンズだったが、木曜日はTシャツの上に薄いカーディガンを羽織って来て、金曜日は太くてゆったりしたジーンズをはいていた。

ナツキが段々とおしゃれになっていって少し戸惑ったが、やめさせる理由がないので何も言わなかった。ナツキも何も言わなかったので、たぶん何も言わないのが正解なんだろう。と思ったが、ナツキはほんの少し機嫌が悪いように感じた。

一応自分で服を選んで買っている俺だが、こだわりのブランドやコーディネートがあるほどファッションに興味があるわけではないので、女子のファッションなんかは余計に分からなかった。なので、寒くないのに薄いとはいえカーディガンを羽織る理由が分からなかったため、「そんなの着て暑くないのか?」とナツキに聞いてしまった。するとナツキは笑いながら、「これUVカットの機能があるから着てるんだよ。」と答えた。

へぇー。服っておしゃれに見える以外にも着る理由があるんだなぁ。だが、ナツキの家から俺の家までの距離しか外を歩かないのに、UVカットの機能は果たして必要なのだろうか?それはUVカットの機能だけでなく、カーディガンを羽織った方がおしゃれに見えるためという理由もあるんだろう。でも、ナツキは何でおしゃれに見えてほしいと思ったのだろうか?見るのは俺と母さんぐらいなのに……。うーん?これ以上は考えない方がいいかもしれない。

妙な忌避感を抱いたため、それ以上このことを考えるのはやめた。ちなみにナツキがはいていた太くてゆったりとしたジーンズはバギーパンツという種類だということを教えてもらった。


 土曜日、授業は午前までなので、午後からはキョウヘイたちとみっちり試験勉強しようと考えていたが、キョウヘイが午後から予定があるらしく、授業が終わるとすぐに下校してしまった。それでも俺とカジワラとハタケの3人で試験勉強しよう。と2人に提案したら、ハタケは了承してくれたのだが、カジワラが難色を示した。

「俺と2人きりじゃないんだからいいじゃん?一緒に試験勉強しよう。」と説得してみたが、カジワラは、「うーん?でも、トツカくんと一緒に試験勉強しても、私にメリットがあるとは思えないんだよね。それなら気の置けないミーちゃんと2人で試験勉強した方がはかどる気がするし、やっぱりトツカくんとは一緒に試験勉強しない。」と拒否した。

そんなに長い付き合いではないが、俺が理解しているカジワラの性格上、これ以上何を言っても無駄だと思い、「そっか。それじゃあ俺は帰って勉強するよ。カジワラ、ハタケ、また来週な。」と言い残して下校した。とぼとぼと帰宅するとすぐに自分の部屋に向かいベッドに少しの間、横になっていると、家のチャイムが鳴った。

すぐにナツキだなと予想し、玄関に向かうと、すでに母さんがドアを開けてナツキを迎え入れていた。ここ数日続いたことなので、ある程度は慣れたが、まだ少しこの状況は恥ずかしく感じた。ナツキがうちに来ることが高校生になったらほとんどなかったからだ。さっさとナツキと母さんを離れさせようと、「ナツキ!早く上がって来いよ!」とナツキに早く俺の部屋に来るように言った。

するとナツキは、「うん。分かった。お邪魔します。」と脱いだ靴をそろえて階段を上がってきた。ナツキが俺の部屋に入るとすぐに部屋のドアを閉めた。今日も俺の横を通り過ぎた時、ナツキからはシトラス系の香りがした。

「今日は早かったね。キョウヘイたちと試験勉強してくるものだと思ってた。」

「うん。そのつもりだったんだけど、キョウヘイの都合が悪くてさ。だから今日はすぐに帰って来たんだ。」

「そうだったんだ?まあ、私としてはセイと一緒に試験勉強する時間が長くなって嬉しいけどね。」

「そ、そっか。それじゃあ、さっそく試験勉強始めるか。」

そのあと俺とナツキは夜7時まで試験勉強をした。途中、いつも通り母さんが飲み物を持ってきたが、俺たちがまじめに勉強しているところを見ると、いつも通りがっかりして部屋から出ていった。

「それじゃあ、また明日ね。」

試験勉強を終えてナツキを玄関で見送った。

「ああ、また明日。……あ!そうだ!明日は市立図書館に行って勉強するか?ちょうど本を返しに行こうと思っていたんだけど。」

「そうなんだ。私は構わないよ。」

「それじゃあ、そういうことで。」

「うん。おやすみ~。」

「おやすみ~。」

ナツキが玄関のドアを開けて出ていったのを確認してから、自分の部屋へ戻ろうとするとリビングのドアから母さんがのぞいていた。

「何してんの?母さん?」

「セイ、あなた、ナツキちゃんと付き合ってるの?」

「は?母さん何言ってるんだよ?ナツキと俺は付き合って……。」

ちょっと待てよ。ナツキは形ばかりとはいえ俺の彼女なんだよな。てことは、ここは付き合ってるって言った方がいいのかな?でも、ここでナツキと付き合ってると言ったら、カジワラを家に連れて来る事ができなくなるよな。てことは、付き合ってないっていた方がいいのか?うーん?どっちなんだ?分からない。あー早く答えないと母さんに邪推されてしまうかもしれない。えーい!ここは……。

「付き合って……ないよ。」

自分で口に出したことなのだが、自分でもそれを聞いてすごく心が痛んだ。

「そっか。付き合ってないのか。残念。」

母さんは冗談で俺に聞いただけなのだろう。すぐにリビングのドアを閉めて戻って行った。だけども俺はこの日、なかなか眠れないほど自分の発言を悔やんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...