好きになった女子が愛人にしかなる気がないと言っていたので、形だけの彼女を作って愛人として付き合ってもらった。

無自信

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第52話

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 次の日の夏期講習が終わった後、キョウヘイと弁当を食べていると八木が「おーいトツカ!お前に用があるって言う女子が来てるぞ!」と教室の出入り口から大声で伝えてきた。

俺はそれを聞いて、ハナザワさんかな?スマホでメッセージを送ってくれても良かったのに。と考えながら八木の方へ近づいて行くと、俺に用事があるという女子がハナザワさんではないことに気付いた。

俺に用事があると言って、やって来たのは女子バレー部でナツキの後輩のミナとかいう女子だった。

ミナとかいう女子は明らかに機嫌が悪そうに、「トツカ先輩ですね?ちょっと話があるのでついて来てもらえますか?」と言ってきた。

有無を言わさない雰囲気を漂わせていたので俺は逆らわずに、「はい。」と答えた。

「こっちです。ついて来てください。」

「はい。」

俺の様子を見た八木はこの前のハナザワさんの時とは違い、「変なことするなよー!」と茶化してくることはなかった。


 「ここまでくれば他の人に聞かれることはないから、安心して話ができます。」

ミナとかいう女子が俺を連れて来たのは、俺がいつも他人に聞かれたくない話をするときに使っている第3特別教室だった。

どんな話をするつもりなんだろう?まあ、100%ナツキにかかわることだろうけどな……。

俺とナツキの関係はまだバレてないと思うけど、このミナとかいう女子がどこまで知っているか分からないから気を付けて発言しよう。

俺が気を引き締めていると、ミナとかいう女子が、「話というのはナツキ先輩のことについてなんですけど……。」と用件を話し始めた。

「ナツキ先輩、今度の日曜日に家庭の事情でどうしても外せない用事ができたから部活を休ませてほしいと顧問の相川先生に話していたんですけど、トツカ先輩は知っていますか?ナツキ先輩の用事が何か?」

ミナとかいう女子の発言を聞いて、やっぱり今度の日曜日はズル休みだったか。でも、そのことを正直に話す必要性はないし、話したらナツキの部活内での信頼が揺らぐかもしれないので、ここは知らないふりをしておこう。と考えた俺は、「いや、知らないよ。」と答えた。

「ナツキ先輩と幼馴染のトツカ先輩も知らないんですか?」

「幼馴染だからって何でも知ってるわけじゃないよ。」

「ふ~ん?そうですか?」

ミナとかいう女子は全く俺の発言を信用してない様子だった。

「それなら、質問を少し変えます。2,3週間前の日曜日もナツキ先輩は同じ理由で部活を休んでいたんですけど、2回も部活を休む理由を幼馴染のトツカ先輩は知らないんですか?」

うわー!やっぱりこの前のデートした日もズル休みしていたのか!ナツキの奴!どうしよう?2回も部活を休む理由を幼馴染の俺が知らないっていうのはおかしいのかな?でも、もう知らないで押し通すしかないよな。2日連続で休んだわけではないもんな。

「そうなんだ?それも知らなかったよ。」

「いつも部活終わりに一緒に帰っているのに?」

「え!いや、いつも一緒に帰ってるわけではないよ。たまたま一緒に帰った日もあっただけであって……。」

「バレてないと思っているならそれは間違いです!私は知ってますから!ここ最近ずっとナツキ先輩とトツカ先輩が昇降口で待ち合わせて一緒に帰ってることを!」

そこまで知られていたのか。もう正直に話してしまうか?いやでもさっき自分でも言ったけど幼馴染だからと言って何でも知ってるわけじゃないよな。それに仲のいい幼馴染だから話せないこともあるはずだ!そこを切り口にしてみるか!

「例えそうだとしても、幼馴染だからって何でも聞いてるわけじゃないよ!幼馴染だから話しづらいこともあるだろ!」

「……それもそうですね。まあ、私の本当の用はナツキ先輩の部活を休む本当の理由を聞くことではないんで、それはもういいです。納得はしてないですけど。」

納得はしてないのかよ!ていうか、本当の用事って何だ?これ以上のことを聞かれたら、正直嘘をつきとおす自信がないんだが。

「ナツキ先輩とトツカ先輩の関係が本当はどんな関係でもいいんです。ただ、ナツキ先輩が部活をズル休みしそうだったら止めてほしいんです。ナツキ先輩はバレー部にとって、とても大事な人なので。お願いします!」

さっきまでと雰囲気が変わり、ミナとかいう女子は俺への怒りというよりかはナツキを心配する気持ちの方が大きくなっているようだった。

「分かった。その時はちゃんと注意するよ。」

「ありがとうございます。では、私はこれで失礼します。」

そう言うと、ミナとかいう女子は第3特別教室を出て行った。俺はというと、このことをナツキに話すかしばらく悩んで一人佇んでいた。


 ミナとかいう女子と別れた後、自分のクラスに戻るとすぐにホームルームが始まり、文化祭の出し物についての話し合いが始まった。前日に伊東が宣言していたのにもかかわらず、クラスの奴らは新しい案を提案しなかったので、展示か劇のどちらかにすることに決まった。

今の俺はナツキのことが気になって、もう文化祭の出し物が展示だろうが劇だろうがどっちでもいい気持ちだったが、一応展示に1票入れておいた。

結果としては得票数が多い何かの展示に決まった。開票を終えると伊東が、「何かの展示に決まったので、来週までに何を展示するか考えておいてくれ。来週の金曜日になっても決まらなかったら、提案者のトツカの意見のバルーンアートに決めるから。」と宣言した。

このクラスのやる気のなさを考えると十中八九バルーンアートに決まりそうだなと俺は感じていた。


 文化祭の出し物についての話し合いが終わった後、いつもの4人で集まって今日の話し合いについて話し合った。

「1票差で負けるなんて、ミーちゃん惜しかったね。」

「……うん。そうだね。でもいいんだ。思ったよりクラスの人たちの支持を得られたから。」

「そんなもんか?1票差で負けたら、もう少しだったのに!って普通悔しく思わないか?」

キョウヘイが聞かなくていいことをハタケに聞いたので、カジワラが、「イチノミヤくん、ひどーい!そんなデリカシーのないこと普通聞く?」とキョウヘイを責め始めた。

「正直に疑問に思ったことを聞いただけなんだけど、気に障ったのなら謝るよ!ハタケごめん!」

「全然気にしてないから大丈夫だよ。今のところ悔しいって気持ちより、思ったよりクラスの人たちの支持を得られたことが嬉しいって気持ちの方が勝ってるから。」

「ホントに?デリカシーのないイチノミヤくんのことが許せないなら正直に言いなよ?」

「ホントに大丈夫だから!心配してくれてありがとう。レーちゃん。」

カジワラとハタケの仲が深まったり、カジワラのキョウヘイに対する株が下がったりしてる中、俺はまだナツキのことが気になっていたので話にほとんど混ざらなかった。

俺がほとんど話に混ざらないまま4人での話は終わり、俺は図書室へ向かった。図書室でハナザワさんと合流して、ハナザワさんのお薦めの本を読もうとしたが、やっぱり集中出来ず、2時間くらい図書室にいたが2,3ページしか読み進められなかった。

図書室が閉まると、ハナザワさんと一緒に昇降口へ向かった。

「トツカ先輩、今日何かありました?」

「え!何でそんなこと聞くの?」

「今日のトツカ先輩、なんか変だったので。」

キョウヘイやカジワラ、ハタケに気づかれなかったので、ハナザワさんにもバレてないだろうと思ったが、俺が悩んでることをハナザワさんにはバレていたらしい。

「ちょっと悩み事があるだけだよ。ごめんね。心配させたかな?」

「悩み事ですか?それって私が聞いてもいいやつですか?」

「うーん。ちょっと言いづらいかな。ごめんね。心配してくれてるのに。俺だけの悩みじゃなくて、もう1人……いや、たくさんの人にかかわる悩みだから話せないんだ。」

「そうですか。分かりました。」

ハナザワさんは俺の役に立てないからか、悲しそうな顔をしていたが、それ以上聞いてくることはなかった。

昇降口でハナザワさんと別れた後、部活終わりのナツキと合流して一緒に帰宅した。

ナツキは自分のクラスの文化祭の出し物が劇に決まったことや部活中に起こったちょっとしたアクシデントのことを楽しそうに話していたが、俺はそれに愛想笑いをすることしか出来なかった。ナツキが部活をズル休みしようとしている話をいつ切り出せばいいか、それだけしか考えていなかった。

「日曜日のデートの時、行きたい場所決まったよ!○○公園はどう?公園ならお金がかからないもんね。」

ナツキが日曜日のデートの話を始めたので、俺は、今言うしかない!と覚悟を決めたが、口から出たのは、「……公園なんかでいいのかよ?ナツキは楽しいのか?」という本心とは全く別なことだった。

「楽しいよ!セイと一緒にいられるなら、どこだって楽しいよ!」

嘘が一つもないような笑顔でナツキは答えた。

「そうか。それならいいんだけどな。」

ナツキの笑顔を見た俺はどうしてもズル休みのことを口に出せなかった。

「それじゃあ、日曜日は○○公園に行くってことでいいよね?」

「うん。いいよ。」

俺はミナとかいう女子だけでなくバレー部の全員に責められる覚悟を決めた。
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