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──コンコン
「奥様、旦那様がいらっしゃいました。」
「遅くなってすまない。今仕事がや「お父様!!」
エリックは、ハロルドが入ってくるなり駆け寄って抱きついた。
ハロルドは自然とエリックを抱き上げた。その顔には、常にある眉間のシワがない。
……笑ってる??
ハロルドは微かに笑っているようにみえる。
「今日はね、お母様とずっと一緒に遊んだんだ!昨日はお父様と1日遊べたし、明日は3人で遊びたい!」
「……そうか。」
ハロルドはシャルロットをみる。
返答の助けを求めてるのかしら…
「…ええ、そうね。お父様の空いた時間に一緒に遊びましょうね。」
「本当?約束だよ?」
「…あぁ。約束するよ。」
「やったー!あ…ごめんなさい。お父様とお母様、お話するんだよね?終わったら来るね!」
エリックはアンナと部屋を出た。
「君といたいと言うかと思ったが…。」
「リックには、ハロルド様が仕事終わったら二人で話したいことがあるから、と伝えていたんです。」
「…そうか。」
シャルロットとハロルドは向かい合わせに腰を掛けた。
「…日記、読みました。」
「…あぁ。………その………。」
「一つお聞きしても宜しいですか?」
「……あぁ。」
「ハロルド様は私が離縁したいと申したら離縁なさるのですか?」
「………そのつもりだ。いや……、本音をいうと離縁したくない。…君が俺のことをどう思っていたのか知りたくて読んだ。君も俺に一目惚れをしたと書いてあった。嬉しかった。………後悔したよ。もっと早くに自分の気持ちを伝えられていたら5年もの間ろくな会話もしないで……君に寂しい思いをさせなかったのに。」
「…そうですね。以前の私は寂しかったと書いてありましたね。」
「……すまない。」
「…いえ。私が目を覚ましてからは寂しい思いはしていません。もちろん、初めは戸惑いましたが…リックも覚えていなくてもなついてくれていますし、屋敷の皆さんもよくしてくれます。それに……ハロルド様も。」
「え……?」
「こうして会いにいらしてくれています。」
「…今の君からしたら知り合ったばかりの男だ。その…嫌じゃないのか?」
「そうですね…そうなんですけど。上手く言えないのですが、ハロルド様のことが気になるんです。ハロルド様が一目惚れしたと聞いたときもとても嬉しいと感じましたし、少なくとも寂しい気持ちはないですね。あ、ただ……。」
「ただ……?」
ハロルドの眉間にシワがよる。
「君って呼ばれるのはちょっと寂しいですね。」
「……は?」
ハロルドは予想外のことを言われて間の抜けた顔をした。
「これから家族、夫婦として付き合っていくのに以前のような関係はお互い望んでないようですし、名前で呼んでほしいです。」
「……離縁は?」
「したいと思っていませんよ。」
「そうか…。その…ありがとう。」
「いえ、お礼を言われるほどでは。」
「……シャル。」
「え?」
「その……ずっといないところではシャルって呼んでたんだ。恥ずかしくて本人には言えなかった。」
ハロルド様、拗らせすぎね…
ふふっ、耳が真っ赤。
「愛称で呼んでもらえるなんて思っていませんでした。嬉しいわ、ハル。」
シャルロットはハロルドをみて微笑む。
「!!!!」
その時、
────コンコン
小さな音のノックが。
「お父様、お母様もう入ってもいい?」
「…えぇ、大丈夫よ。」
アンナとエリックが入ってきた。
「お話し中に申し訳ありません。エリック様が眠くなったようなのでお連れしました。」
「ちょうど話終わったところよ。ありがとう。」
「お父様!今日からお母様とまた一緒に寝るんです。」
「そうみたいだな。…良かったな。」
ハロルドは優しい顔をしてエリックの頭を撫でた。
「うん!いっぱい一緒にいたら仲良くなれるってお母様が言ってたから、お父様も一緒に寝たら仲良くなれるよ!」
「……え?」
ハロルドの撫でていた手が止まる。
「……いや。あ……い、い、や、嫌じゃない。いや、違う…その、あれだ!仕事がまだ残ってるから今日はもう失礼するよ。」
ハロルドの顔はみるみるうちに赤く染まっていく。
(……子供ってすごい!!旦那様がしどろもどろになってる!後でロバート様(執事)に報告しないと!!)
アンナは以前の夫婦仲、ハロルドのヘタレっぷりを知っているのでハロルドの前で笑いを堪えるのに必死だった。
「…………また明日。おやすみ、リック、…シャル。」
ハロルドは慌ただしく出ていった。
その姿が可笑しく、シャルロットとアンナは顔を見合わせて笑った。
ふふっ、また耳まで真っ赤だったわ。
……可愛い人ね。
その日、エリックは久しぶりに母親と一緒に寝ることができた。
「おやすみ、リック。」
ハルは、私の気持ちだけ日記で確認したのね。レイチェルのことやメモ書きのことは知らないようだったわ。今は…言わなくてもいいかしら。
翌日から家族3人で過ごす時間は増えていき、その1ヶ月後には、エリックの願いで、3人で寝るようになった。
記憶は戻っていない。ハロルドのいるときに定期的にしていたテオドールの訪問診療も今はしなくて良いほどシャルロットは良くなった。
日記のメモ書きに書かれていたことを警戒し、テオドールとは訪問診療の他では接していない。
そして、シャルロットが目を覚ましてから3ヶ月が経ったある日。
レイチェルがハロルドのいない日を狙ってやってきた。
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