エリート外科医の蕩ける治療

あさの紅茶

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14.だって心配になっちゃった side杏子

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そんな穏やかな日々を送っていたある日、外科に通院中でうちの店の常連である後藤さんが、「聞いてよ杏子ちゃん」と興奮気味にやってきた。

「林先生がね、体調崩されて長期入院になったんですって」

「えっ。そうなんですか? それは大変だ」

「外科医なんだから、自分のことちゃんと把握しなくちゃねぇ? きっと働きすぎたのよぉ」

「お医者さんって常に忙しそうですもんね」

「それでね、今日林先生の代わりに診てくれたのが、なんと女医さんだったのよ」

「あ、清島先生じゃないんですね」

以前にも林先生がお休みだったとき、後藤さんは清島先生に診てもらったと言っていたから、てっきりそうなのかと思ったのに。

「マリエ先生って言ってね、これがねえ、ものすごい美人なのよぉ。外科じゃなくて美容外科の先生の間違いないじゃないのって聞いちゃったわよ」

「そんなに美人さんなんですか? わー、見てみたい」

「しかもね、清島先生とできてるんじゃないかって、その話題で持ちきりよ」

「え……」

「なんでも、昔の知り合いとかなんとか? 清島先生が呼び寄せたとか? まー、噂話だけどねぇ」

「あはは……後藤さんそういう話好きですよねぇ」

なーんて、後藤さんに話を合わせて笑ってみたものの、心の中は一瞬にして大騒ぎになった。後藤さんはひとしきり喋った後、「ゴシップが私の元気の秘訣」と言いながらいつも通りお弁当を買って元気よく帰って行った。

その後は立て続けにお客さんが来て、しばらくの間はその話が頭からスポンと抜けていたのだけど……。

千里ちゃんと心和ちゃんが揃ってやって来て、またふっと思い出される女医さんの話。

「杏子さん、お弁当を――」

「ねえねえ、外科に女医さんが来たって本当?」

「あー、そうらしいですね。何か臨時だとか?」

「清島先生とできてるって」

「ええっ?」

「外科に通院してるお客さんが言ってたの」

「いやいや、杏子さん落ち着きましょうよ」

「そうですよ。清島先生と物産展デート行ったんですよね?」

「それは……楽しかった。でもほら、火のないところに煙は立たないって言うでしょ」

「私たちのところには、その噂話は届いてないですね」

「そうなんだ……」

これは安心してもいいのだろうか。いや、でも気になってしまう。例え一真さんとマリエ先生が何でもないとしても、同じところに美人さんが来たなんて聞いてないし、彼女として知る権利はあるよね?

「直接清島先生に聞いたほうがいいですよ。噂なんてあることないこと尾ひれがついて、好き勝手広がりますし」

「うん、そうだよね……」

「それにしても杏子さん、清島先生のこと大好きなんですね」

「はっ!」

「私たちはそっちの方が興味あります。物産展デートの詳細求む」

「はわわ~」

千里ちゃんと心和ちゃんに揶揄われ、恥ずかしくなって変な汗が出る。二人の尋問をかわしながらいそいそとお弁当を用意し、慌ただしい時間を終えた。
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