傘使いの過ごす日々

あたりめ

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飛び級試験の噂は組合の中だけではなく、村中に広まっていた。
そして「飛び級試験の試験官の『爆炎のダン』を倒したシズヤ」の名は広まっていた。
そして、更にここから静也の噂が大袈裟になっていく切っ掛けとなる出来事が

飛び級試験が終わった後、魔牛を買い取って貰いに向かう。

「ジョアンさん、買い取りをお願いしたいんですが、結構多いけど大丈夫ですか?」

カウンターにいる者はかなり少なく円滑に買い取って貰えると思った。

「ああ、これはこれは噂のシズヤさんじゃないかい。何を狩ってきたんだ?」
「魔牛『アングリーブル』なんですけど、378体いるんですけど…」
「魔牛?!さ、378?!冗談だろう?!」

ジョアンが真偽を疑っている目を向けるので首を左右に振り、本当のことだと伝える。
するとジョアンは溜め息をはき、

「なんか他のやつと違う雰囲気を纏ってるから、違うんだろうと思ってたけど、ここまでとはね…」
「で、買い取りできますか?」

ジョアンは唸り声をあげて少し考えると

「すまないね…こんだけ多いと一日やちょっとでは買い取り切れないよ。何日か分けて持ってきてもらって大丈夫かい?」
「はい、そういうことでしたら全然構いませんよ。今日は何体までなら買い取れますか?」
「今日は一先ず、30を買い取るよ。先ずは鑑定して貰わないとね。」

と言って、裏方から鑑定士を2、3人ほど呼んできた。

「傷を見る限り、一撃で逝ってるなぁ、しかもどれを見ても叩きつけられたものか、大きな穴が空いてるものばかり…」
「ちょっ!見てくれよこいつを!『アングリーブル・リーダー』がいる!」
「おいおい…こいつは確かにリーダーだな」

鑑定士達はとても生き生きしていた。

時間からして約20分、ジョアンが静也の名前を呼んだ。

「鑑定が終わったよ。リーダー級の魔牛がいたからちょっと高めに買い取ったよ。これで文句ないね?」

証文には買い取り額56700ルターと書かれていた。

「こ、こんなに…」
「魔牛は肉が人気でね、どこで売ってもこんなもんさ。しかもリーダー級がいるんだ。さぞかし旨い肉なんだろうね。」
「その、リーダー級って高く買われるんですか?」
「ああ、魔獣や魔物の級位も高ければ、肉は旨いし、魔石の質も高くなる、だから高く買い取って貰えるのさ。」
「成程…ありがとうございます。」
「良いってことよ。だけどこれが10分の1にも満たないとなると、かなり儲けたね。流石は噂に名高いシズヤさんだ。」

とジョアンは茶化す。

「で、その魔牛共、どこで討伐したんだい?」
「ハナル平原です。」
「は、ハナル平原?!すぐそこの?!しかも378も?!スタンピードじゃないかい!」
「すたんぴーどってのかは知らないですが、村の方へ走って行ったので、さすがにやばいと思ったので討伐してきたんです。」
「…あんたはこの村の英雄だよ!一人でスタンピードを阻止したんだからあんたは英雄だよ!」

感極まったのかジョアンの口から英雄という単語が何度も飛び出た。
周りにいた者も、それを聞いていたのか話がどんどん広まって行った。
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