傘使いの過ごす日々

あたりめ

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先輩の存在

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本日の収入は約57000ルター。
宿代が60ルター、軽く二年と半月分宿に泊まれる。
勿論、そんなに泊まるわけではないが。
本来の目的は家を買うことであって、宿に永住する訳ではない。

今日買い取ってもらったのは376体中30体、また明日に30体買い取ってもらう。
この調子なら10日もしないうちに、最低目標の50万ルターには到達する。
しかし、静也は家を『買う』ことにこだわっていたのか、『借りる』ということが眼中になかった。
もし静也が『借りる』を選択していたのなら、月に家賃を払うので済んでいたのだが…
そんなこともつゆ知らず、静也は浮かれていた。


後日、静也は組合に寄り、依頼を受けるつもりだった。
また、雑務系依頼と討伐、もしくは採取系の依頼を受けようと考えていた。
勿論、稼ぎに行くのもあるが、経験や体験はなによりも大切なことだ。

「おはようございます、シズヤさん。組合長室に行ってもらえますか?」
「え?はい。今すぐにですか?依頼を受けてからでは…」
「今すぐに、お願いしますね?」

有無を言わさぬエリナの雰囲気に気圧され、言いなりになるしかなかった。
足早に組合の2階真っ先に目が行ってしまう派手な扉の前に移動した。
ノックをして、入室の許可をとろうとすると

「失礼しま…」
「おおー、そんな仰々しいことせんでええ、早う入れぃ。」

ロイドが扉から待ってましたと言わんばかりに出てきて、静也を室内に入れた。
室内にはザークとダンの二人がいた。

「お、来たか…待っておったぞ、シズヤ殿」
「昨日のこと殆ど覚えてないが、お前が勝ったと聞いている。」

ダンを見るからに、何の問題はなかった。

「あ、ダンさん…昨日のは大丈夫ですか?血を吐いてたので内臓の方は」
「なぁに、それなら治っておるぞ?儂の回復魔法を掛けてやったからの、治ってないわけがあるまい。」

と、ロドムは自慢げに言った。

「ほんじゃぁ、本題に入りうかの…シズヤ君の昇級じゃ。」
「まぁ、飛び級試験でしたからね。これで、石級ってことですか?」
「いや、金か銀かで迷っているんだ。」

静也は驚いて飛び跳ねた。思わず立ち上がり、

「はい?!金?!銀?!なんでそんなに飛ぶんですか!?普通は一個上の級になるもんじゃ無いんですか?!」
「『普通』はな、だがお主は違うだろ?『普通』の枠に入らんだろ。元金級の冒険者のダンをほぼ無傷に近い状態で気絶させられる奴を『石級』で収められる訳がないだろう」
「そうだ、自分で言うのもあれなんだが、これでも結構強い方なんだぞ?しかもその俺に最初から本気出させて、あまつさえ倒す始末だ。」

はぁ、と溜め息をはく。

「で、ですが、わざわざ自分を呼ぶということは、何かの話し合いに交ざらなければならないと言うことですよね?」
「だいたい正解じゃ。まあ、儂達とひみつの約束を守れるかってのを聞くだけなんじゃけどな?」
「内容によります。流石にはい、そうですかで頷ける訳がないですよ。」
「あー、まぁ、お前が銀、もしくは金級冒険者になると同時に組合の組員のような立ち位置に属することになる。それでこの組合の…、まあ他のところの組合でも言えるが、秘匿された情報を知ることになる。それを死んでも黙って洩らさないことを誓えるかっていうのと、お前が阻止したスタンピード時の人員の一人になって逃げずに村を守ってもらうということだ。」
「………成程」
「すぐに答えを出せとは言わん。けどお主にはそれほどの力があることを免じておくんだ。」
「まぁ、儂としては、是非とも組員になって貰いたいのじゃが…」
「「はぁ…」」


(力…か)

静也は依頼を眺めながらそんなことを思っていた。
確かに静也とて強さに憧れることを忘れていなかった。
誰かを守れる存在に憧れていた。
組員になるのも別に構わないとも思っている。しかし、なぜかなろうとは思えなかった。

「おい、シズヤじゃないか?」

思い詰めていると後ろから聞いたことのある声がし、振り替えるとそこにはアレンがいた。

「あれ、アレンさん、どうしたんですか?」
「おいおい、他人行儀じゃないか?アレンでいい。あとそんなに畏まることないだろ。お前に話しかけたのは偶々見かけたからだ。暇だし一緒に依頼を受けないか?」

アレンはとても馴れ馴れしく静也の肩を組んできた。
そこで静也はアレンにあることを聞こうと思った。

「あ、なら調度良い。聞きたいことがあるんだ。アレンは銀級の冒険者だろう?元老達に組員に誘われただろう?」
「ああ、確かに誘われて組員になったな。それがどうしたんだ?」
「組員になっても良いんだけど、何故か入ろうとは思えないんだ。組員になろうと思えた理由を教えてほしい。」
「あー、わかる、確かに怖いもんな組員になって貰う時の誓約ってやつ、わからない分なお怖い。でも、別に死に行けって言うのはないぞ?むしろ雑務みたいだ。理由か…なんとなくで入ったのが殆どだな。」
「そうなのか?君が言うんだから間違いないな。」
「おうよ、それでどの依頼を受ける?俺はこの…」


アレンの選んだのはグロール魔樹海の近く(入ったすぐそこも含む)にいる魔物を狩るという依頼だった。
まだ静也は気づいていないがグロール魔樹海が彼のトラウマの地であることに。
依頼はすぐに受け、直ぐに向かうことになった。
アレンの準備が終わるまで関所の外で待つことにした。傘ストレージに色々入っているから準備が少なくて済んだのだ。


「すまねぇ、待ったか?準備が結構かかった。って、お前は結構軽装だな。」
「あ、いや、俺は傘の能力で道具とか傘の中に仕舞えるんだ。」

アレンの防具はプレートアーマーという軽鎧の1種を纏っている。見るからに年季の入った物だというのが見てわかる。
得物は腰に片手剣と背中に一本両手剣を携えている。
それを見て誰もが剣士だと思うほどしっくりくるほど似合っている。

「それじゃあ、いくぞ。」

そうしてアレンと依頼を受け、魔樹海へと向かうのだった。
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