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道具 その3
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雨が止む気配がない。ティアに聞いたところここまで降るのは珍しくないらしくいまは雨季にあたる時期らしい。
四季はなく比較的暖かい地域のようだ。
この村の人はほとんどの人は雪を見たことがなく雪を知らないらしいがそれを知るのはまた別のお話。
「なにか飲む?私、飲物淹れるのとてもうまいんだから」
「じゃあ頼めるか?」
ティアは足早に飲物を淹れに行った。
(ええ子や…雨よ…ありがとう)
あまりにも良くできた子なので静也は涙を浮かべ窓から見える土砂降りの雨に少し感謝している。
このときだけは雨に、雷に感謝した。
しかし、ここまでくるとなにかしてやりたくなる。
なにかしてやれないだろうかと思うが、どうにも思い浮かばない。前世でここまで出来の良い妹や弟が居なかったのでティアになにかしてやりたくなったのだ。
考えているとティアがティーセットに紅茶を淹れて持ってきてくれた。
「はい、安い茶葉だけど美味しくなるように淹れてきたよ!」
(こんなにも良い子がここに居たなんて…俺はこの日のために生きてきたのかもしれない…)
とんでもない勘違いをしているが感動を通り越してもはやキモい
「ありがとう…本当に良い子だな。」
前世ならきっとお縄ものだっただろう。
「ぇっ!いや、そんなことないよ…」
(んもぅ、照れちゃってる。可愛いな。)
「と、ところでシズヤの兄ちゃん!」
ティアが畏まって静也を見る。決意のようなものがティアの目に宿っている。
「こ、ここ、これからも…こ、ここに、来て、くれる?」
その発言で静也の心を射止めた。射止めるのに充分だった。
感動に静也の目からは涙が流れていく。
「もぢろん!(天使はここにいた。)」
静也にはティアから後光が差しているような幻が見えている。
あまりにも無垢な様子をみて静也は目から滝のように涙を流した。
(こんな妹が欲しかった…むしろ娘にしたいくらい…)
涙を流している静也をティアは心配そうに慰めている。
その現実に気付くと静也は涙を拭った。
「ありがとうな、もう大丈夫だ。」
と静也は大丈夫だとティアに伝える。
「そう?ならいいんだけどさ…」
ティアが淹れてくれた紅茶を一口飲み落ち着く。
砂糖が入っていないがくどい苦味はしない、むしろ紅茶の香りが鼻の奥まで通り抜けるようにも感じられる。熱いのはしょうがない。
「とても美味しいよ。本当に上手に淹れられるんだな。」
舌の上が火傷してしまったが問題なく紅茶の香りを楽しめた。
「へへへっ!お母さんにも上手って言われるよ!」
(本当に微笑ましい限りだ。こんな子を育てられていいなぁ…)
訳のわからない嫉妬に心を焦がしていた。
「ねぁ、シズヤの兄ちゃん、雨、止まないね。」
それを言われてまた窓の外を眺める。土砂降りの雨は未だ止む気配がしない。通り雨であって欲しかったりこのままでいてほしいと思ったり、静也は心が揺さぶられていた。
すると、扉から一人の人が入ってきた。
土砂降りの中で歩いていたのだろう、びしょ濡れで道具屋に入ってきた。
「ただいまー…すごく降ってきたよー…ってお客さん?!」
どうやらティアの知り合いのようだ。
「お帰りお姉ちゃん。そこから動かないでね、タオル持ってくるから」
ティアは急ぎ足で店の奥に入っていく。
(お姉ちゃんってことは…そういうことだってことはわかる。)
ティアが居なくなってティアのお姉さんと二人、気まずいと思っているのは二人とも同じだった。
「あ、あのーお客さんですよね?」
ティアのお姉さんが話しかける。
「はい、これからお世話になると思います。私水鏡静也と申します。」
「あー、これはご丁寧にどうも。私は聞いてたと思い話すけどティアの姉の『アン』です。よろしくね」
その瞬間二人は何かを感じ取り、二人は顔を見るとうなずいた。
((同志だ))と。一体何の同志かは追々わかる。
ドタドタとティアの足音が近づいてくる。
「お姉ちゃんタオルもってき…なんでシズヤの兄ちゃんと握手してんの?」
静也とアンはいつの間にか握手していた。
「あ、ほんとだ。タオルありがと、ティアふいて~」
(?!なに?!ティアにタオルでふいてくれる?!)
完全に静也はティアにベタ惚れしていた。
「もー、しょうがないな~」
アンの顔も勝利に酔った、そんな顔をしている。
一方の静也は人に向けるような顔をしていない。嫉妬と恨みのこもったそんな視線を送っていた。
四季はなく比較的暖かい地域のようだ。
この村の人はほとんどの人は雪を見たことがなく雪を知らないらしいがそれを知るのはまた別のお話。
「なにか飲む?私、飲物淹れるのとてもうまいんだから」
「じゃあ頼めるか?」
ティアは足早に飲物を淹れに行った。
(ええ子や…雨よ…ありがとう)
あまりにも良くできた子なので静也は涙を浮かべ窓から見える土砂降りの雨に少し感謝している。
このときだけは雨に、雷に感謝した。
しかし、ここまでくるとなにかしてやりたくなる。
なにかしてやれないだろうかと思うが、どうにも思い浮かばない。前世でここまで出来の良い妹や弟が居なかったのでティアになにかしてやりたくなったのだ。
考えているとティアがティーセットに紅茶を淹れて持ってきてくれた。
「はい、安い茶葉だけど美味しくなるように淹れてきたよ!」
(こんなにも良い子がここに居たなんて…俺はこの日のために生きてきたのかもしれない…)
とんでもない勘違いをしているが感動を通り越してもはやキモい
「ありがとう…本当に良い子だな。」
前世ならきっとお縄ものだっただろう。
「ぇっ!いや、そんなことないよ…」
(んもぅ、照れちゃってる。可愛いな。)
「と、ところでシズヤの兄ちゃん!」
ティアが畏まって静也を見る。決意のようなものがティアの目に宿っている。
「こ、ここ、これからも…こ、ここに、来て、くれる?」
その発言で静也の心を射止めた。射止めるのに充分だった。
感動に静也の目からは涙が流れていく。
「もぢろん!(天使はここにいた。)」
静也にはティアから後光が差しているような幻が見えている。
あまりにも無垢な様子をみて静也は目から滝のように涙を流した。
(こんな妹が欲しかった…むしろ娘にしたいくらい…)
涙を流している静也をティアは心配そうに慰めている。
その現実に気付くと静也は涙を拭った。
「ありがとうな、もう大丈夫だ。」
と静也は大丈夫だとティアに伝える。
「そう?ならいいんだけどさ…」
ティアが淹れてくれた紅茶を一口飲み落ち着く。
砂糖が入っていないがくどい苦味はしない、むしろ紅茶の香りが鼻の奥まで通り抜けるようにも感じられる。熱いのはしょうがない。
「とても美味しいよ。本当に上手に淹れられるんだな。」
舌の上が火傷してしまったが問題なく紅茶の香りを楽しめた。
「へへへっ!お母さんにも上手って言われるよ!」
(本当に微笑ましい限りだ。こんな子を育てられていいなぁ…)
訳のわからない嫉妬に心を焦がしていた。
「ねぁ、シズヤの兄ちゃん、雨、止まないね。」
それを言われてまた窓の外を眺める。土砂降りの雨は未だ止む気配がしない。通り雨であって欲しかったりこのままでいてほしいと思ったり、静也は心が揺さぶられていた。
すると、扉から一人の人が入ってきた。
土砂降りの中で歩いていたのだろう、びしょ濡れで道具屋に入ってきた。
「ただいまー…すごく降ってきたよー…ってお客さん?!」
どうやらティアの知り合いのようだ。
「お帰りお姉ちゃん。そこから動かないでね、タオル持ってくるから」
ティアは急ぎ足で店の奥に入っていく。
(お姉ちゃんってことは…そういうことだってことはわかる。)
ティアが居なくなってティアのお姉さんと二人、気まずいと思っているのは二人とも同じだった。
「あ、あのーお客さんですよね?」
ティアのお姉さんが話しかける。
「はい、これからお世話になると思います。私水鏡静也と申します。」
「あー、これはご丁寧にどうも。私は聞いてたと思い話すけどティアの姉の『アン』です。よろしくね」
その瞬間二人は何かを感じ取り、二人は顔を見るとうなずいた。
((同志だ))と。一体何の同志かは追々わかる。
ドタドタとティアの足音が近づいてくる。
「お姉ちゃんタオルもってき…なんでシズヤの兄ちゃんと握手してんの?」
静也とアンはいつの間にか握手していた。
「あ、ほんとだ。タオルありがと、ティアふいて~」
(?!なに?!ティアにタオルでふいてくれる?!)
完全に静也はティアにベタ惚れしていた。
「もー、しょうがないな~」
アンの顔も勝利に酔った、そんな顔をしている。
一方の静也は人に向けるような顔をしていない。嫉妬と恨みのこもったそんな視線を送っていた。
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