傘使いの過ごす日々

あたりめ

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解体教習 二日目

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二日目の朝、いつものように太陽の日が静也の泊まっている宿の中を満たす頃に目を覚ます。
陽の光は寝覚め一番に見ると爽快な気分になる。

そろそろ宿の期間も終わりをむかえようとしている。
明日か、明後日、もしくは今日中には家を借りようと思っているのだ。

いろいろ身支度を済ませた静也は解体所に向かう。
解体所への道中のこと、あの男に久しぶりにあった。

「あ、シズヤはん。お久しぶりですわ。あの時はほんま助かったで。」
「…約束しましたよね。あの件が終わったら全部なかったことにするって。」
「ええやんか、あの時の仲なんやけん。それよりシズヤはん。あんた家さがっしょっるんちゃうか?」
「…まぁ、そうですけど。確かにあの時言いましたからね。覚えてたんですね。」

あの時とは、マグルを倒した時の事だ。

「あたりまえやろ。ほんでな、いい物件があるんや。村の中心区に近くて前の所有者に情報の代わりに譲ってもらったんや。あ、安心してぇな、別にいわくつきではないけんな。月3000ルターで借りることもできるで。買うんやったら200万ルターいるんやけどな?」

前に不動産で見た物件より高い、そうそう手がだせるようなものではないが借家でなら不可能ではない。
丁度家が欲しかったところなので嬉しい提案だが、静也はガランの言っていることに裏があると思い引け気味だ。
裏の稼業、いわば表にできないことをしているということ。因縁を持たれることが多いのが確かだ。
そんな奴が紹介する物件に疑いを持たないわけがない。
もしかすると、自分がそいつらの標的になりえない。

静也は断るつもりだった。

「シズヤはん、あんたの思うことはわかる。裏稼業のやつが紹介する家なんて大丈夫なんか?ってな。」
「…わかっているならどういて」
「少しでも恩を返したいんや。あんときはシズヤはん10万ルターだけもらって帰ったやん。そんだけじゃ恩は返せへん。やけん、シズヤはん。迷惑やとは思うけど、俺達の恩返しを受けてくれはせんか?」

静也は困惑していた。
静也の思う裏稼業の人間は終わったことは終わりにするものだと思っていたからだ。
前世からそういう知識に疎いせいもあって、無知だった。そもそも興味がなかったのが大きいのだが。

しかし目の前にいる男は終わったことを今なお恩に感じている。静也がもらった10万ルターでは恩を返せないと思い、静也が悩んでいることで少しでも恩を返せるように手伝うのだ。静也の思っていた人間と違っていた。
こんなできた人間がいたんだ。いままでなにか勘違いしていたのかもしれない。
静也のガランに対する印象が大きく変わった瞬間だった。

「わかりました。物件は実際見れますか?」
「シズヤはん!…もちろんや、今からでも見に行くかいな?」
「いえ、今日明日解体教習を受けるんで明後日くらいにでも。」
「あい分かった!ほな明後日またここで会おうな!」

そういってガランは嵐のように去っていった。
静也はボケーとしていたがすぐに解体教習に行かなければいけないことに気づき走って解体所へ向かう。


解体所に付いた。既にほかの職人たちは働いていた。
静也はジョアンに挨拶を交わす。

「おはようございます。」
「おはようさん、それじゃあ今日も着替えて手洗いうがいをしな。」
「はい」

静也は昨日と同じように手洗いうがいをして、エプロン、グローブを装着する。

「お、シズヤ、おはようさん。今日も俺が教えてやるぜ。」
「おはようございます、ヨーさん。」

更衣室の扉を開けヨーは、静也の前に姿を現した。
既にエプロンやグローブは赤黒い液体が付着していた。
もう、なにかしら解体したようだ。

「今日は昨日の魔鶏とは違い、大きいのを解体するぞ。お前もお馴染み魔牛だ。」
「かなり大きいと思いますけど…大丈夫なんですかね…」
「なぁに、やることは昨日とそう変わらねぇ。皮を剥いで内臓を取り出してバラす。な?簡単だろ?ま、一回目は俺がやるから見てみて流れを捉えたらいい。」

静也はヨーに連れられ解体所へと向かう。


「今日のは大きくて尚且つ重い。だから機械を使う。サバイバルならこういうのは無いがそれに似たものはあるから買うといいぞ。」

ヨーが運んできたのは、クレーンのようななにかだった。
釣り掛けが二本、上下にクレーンが移動するような仕掛け、らしい。
回りにも何名もの人が使っている。

「んじゃあやるから良く見とけよ。」

ヨーはアイテムポーチから魔牛を取り出した地面に下ろす。
途端にヨーは魔牛の頸元の皮だけを裂き喉元をかっ切った。
すると血が滝のように流れ出す。
血抜きの行程だ。これをしないと肉が臭くなるので解体では必須行程である。

血がある程度流れると魔牛の頭をナイフ一本で切り落とした。
ホースから水を流し魔牛の血を大雑把に流した。
さらに魔牛の両足を関節のところで切り折り曲げもぎ取った。
脚のところは血が流れない。

喉元の皮にナイフの刃をあてお尻に向かって走らせる。
皮だけを切ったので血は流れない。
そして、脚から皮を少しずつ、見ると皮の下の脂肪と思わしきものをナイフを押しあて皮だけを削いでいた。
途中、ノコギリのようもので胸骨をゴリゴリと削って開いた。

10分もしないうちに皮を剥いでしまった。
ヨーは皮の無い肉と脂肪が付いたそれをクレーンで吊り上げた。
腹部にある脂肪をナイフで削いでいき、腹部を開く。
すると魔牛の内臓が血と共に落ちてくる。
内臓全てを引きずり出すと、ホースで水を出し血を流した。

背中からまたノコギリのようものでギコギコ、ゴリゴリと背骨を真ん中から真っ二つにした。
それを終えると肋骨の下の部分に切れ込みを入れる。
それを基準に切り離す。

アイテムポーチにそれらを仕舞うと

「これで魔牛の解体を終わり。な?簡単だろ?」

ヨーの一連の動作は静也が見ていても無駄がなく、終わったことに気づかないくらい達人の粋のものだった。
解体に有した時間はおおよそ20分。
これを自分がするのかと思うと自信が無くなる。
しかも終始グロッキーなものだったため、意気込みは低く引け気味だ。

「安心しろ。俺が教えるんだ。失敗こそなけりゃ不安も無いだろうが。どれだけかかろうがいい。やるのとやらないのとでは大きな差がある。お前がそれをどうするかだ。」

ヨーは念押しに静也にやるか?と聞く。
静也は息を吸い込み気を落ち着かせる。

「やります。魔牛の解体やります!」
「よし!時間をじっくり掛けてやるからわからないところがあれば何でも聞いてくれ。」

魔牛の解体に静也は2時間有した。
明日はもっと大きいのが来るのかなと、静也は明日のことを考えながら、もう一体魔牛を解体し始めた。
最終的に、魔牛を一体解体するのに50分で終わらせられるようになった。
グローブは血まみれになり、着け心地は最悪、あまりにも自分がやっていることがグロテスクで何度も吐きそうになった。


「お疲れさん。お陰でこっちの仕事が減ったよ。」

ジョアンはやってやったという顔で静也に言う。
静也は自分が仕事の手伝いをやらされていたのに気付き肩を落とした。
やられるだけでは性に合わないと、静也はジョアンに昨日よりも多く魔牛を渡した。

ジョアンも肩を落とした。
本日は魔牛を50体買い取ってもらった。


本日の収入

魔物解体の心得
91500ルター
してやった気分
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