傘使いの過ごす日々

あたりめ

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解体教習 一日目

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「それじゃぁ、まずはこのエプロンを着て。汚れてもいい服を持ってきているならそれに着替えてからでもいいよ。でもエプロンを着るのは絶対だからね。」

静也は使い込まれてきたであろうエプロンを渡され、更衣室に案内されそこで着替える。

「それじゃぁ、次に手洗いうがいをしな。その次に帽子とグローブを着けてもらうからね。」

言われた通り手を洗い、口をゆすぎ清潔に。
その後帽子とグローブを着ける。

「よし、着けたね。それじゃぁ、解体所にいくよ。血とかは大丈夫だよね。冒険者なんだから。」
「はい」

この世界に来てから血や臓物といったグロッキーになりやすいものに慣れてしまったので、魔物の何が出ようと平気でいられる精神力を手に入れていた。

解体所はいつも買い取りしてもらっているところの裏片、控え室のようなところではなく、離れのようなところに大きめの建物が建っていた。
そこからは鉄の臭いが漂っていた。
魔物を殺したときの何倍も強く匂っていた。

「まぁ、臭いはあたしも苦手だよ。そんなときはマスクとか着けるけどね。あんたは大丈夫だろう?」

耐えられない程ではないので大丈夫だ。
嫌なものだな。慣れというのは…
と静也は一人、黄昏ていた。

解体所は常に血を流すために水が流れていた。
解体をしている人は鑑定士の何倍もいる。
黙々と解体作業をしている。なれた手つきの解体は一種の芸術にすら感じられた。

「ほれ、呆けていないで付いてきな。」

今だけジョアンが男らしく見れる。
黙ってジョアンに付いていくと一人の男がいる所へ連れられた。

「『ヨー』、あんたこの子に解体教えてやって。」
「えぇー、ちゃんと手当は出るよね?タダじゃ働かないよ?俺は。」
「はいはい、ボーナス分は出してやるよ。」

ヨーという男は飛びはね喜びを表現している。
静也はそれを傍目に呆然としていた。
ジョアンはそれじゃ、と言い残し去っていった。
ジョアンが去っていくもヨーは喜びの舞を止めないので静也は声をかける。
それでやっとヨーは静也の存在に気付いた。

「お、悪い悪い。俺はヨー、解体職人五年目のまだまだあまちゃんだけどよろしくな!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「さっそくだがお前にも解体を手伝って貰おうか。」

静也は驚嘆の声をあげた。

「ハハハ!冗談だ!さっそくだが解体の基本を教えるぜ?」

切り替えの早いひとだな、と静也はおもった。

「解体をするときには解体用のナイフが一番だ。他のだと刃が磨耗して使い物にならなくなりやすいからな。まぁ、一番はやっぱりマジックアイテムになるんだかよ…それはいいな。」

ヨーはアイテムポーチからおもむろに一体の魔物を取り出した。
大きさは鶏位の魔物、大して強くはないが数が多いことから鶏卵を目的にした捕獲が多い。
そんな魔鶏は首が落ちた状態で取り出された。

「初心者は先ずは毛や羽を剃るかむしるかして解体しやすいようにするといい。ナイフの磨耗の一位はこの毛や羽のせいだからな。ま、剃らない方が高く売れるときが多いから頑張って覚えると得だぜ。」

ほらよ、とヨーは言い静也に魔鶏を渡す。

「先ずは羽をむしれ。それからだ。」


魔鶏の羽はかなり簡単にむしれた。
むしった後にチキン肌が露になる。

「次だ。次は内臓を取り出す。まぁ、最初だし内臓がどんくらいにあるかってのを知ってもらうわ。だから、縦に胸からケツまで切り込んでもらう。そして切り込みを開いて内臓を取り出す。もしも、内臓にまで刃が入ったりしたらそこから糞が出たりするから臭くなったり食べれなくなったり品質が悪くなるから気をつけろー。」

ヨーはナイフを静也に渡した。
静也は躊躇していた。
内臓に傷が付くとダメになると聞いたからだ。
失敗するのが怖いのだ。
恐る恐る静也は魔鶏に切り込んでいく。
肉を切る感覚、内臓を傷付けてはいけないという緊張で静也は冷や汗をかいていた。


終始ヨーにワンツーマン状態で教えてもらった。
前世のスーパーで見かける手羽先や、鳥もも肉、むね肉、鶏皮といったものに変わっていくのを自らの手でやったとなるとすこし達成感があった。

この世界に来てから暫くする。
そのせいか生物の生き死にをかなり身近に感じている。
そしてそれを糧にしている。
そう思うと解体の罪悪感なんて感じなくなった。
むしろ生きる糧になってもらっているので感謝している。

「また明日も来るんだろ?」
「え?いいんですか?」
「教習を受けてるんだろ?教習は今日一日だけじゃないぞ。」

初耳、そんなことジョアンから一言も聞いてない。

「また10000ルター払わなきゃいけないですか?」
「いや、教習は今日、明日、明後日の三日間で10000ルターだからまた払う必要はない。」

静也は安堵の息を吐く。

「ジョアンの姉御は大切なこと殆ど言わないからな。本当に迷惑してるぜ。あーいうのには気を付けろよ。って、どうしたんだ?シズヤ…」
「誰が迷惑だって?」

ヨーは振り替えると後ろにジョアンがいることに気付いた。
ジョアンの眼光は人を殺せるんではないかと思うほど鋭い。
まるで刀のような…そんなことを思わせる眼光をヨーに向けていた。
傍らでいた静也ですらその眼光の被害を受けた。
確実に強くはなっていたはずの静也、しかし精神的にはまだ未成熟、下手な威圧ですらまともに受けてしまうだろう。

ジョアンはヨーの服の首根っこを持ち上げ解体所の奥へと行った。
暫くするとヨーの悲鳴が聞こえた。
静也は向かうことをしなかった。厄介ごとになると察したからだ。


「いやーすまないね。話そびれてね!」

豪快に笑うジョアン、静也は渇いた笑い声を出すので精一杯だった。
ヨーの悲鳴を聞いてから静也のジョアンに対する印象がかなり変わった。

ジョアンは静也にヨーのことをべらべらと話していた。あいつは私を怖い怖いって言うもんだからすこしギャーギャー言うんだよ、と自分は怖くないアピールするも説得力は皆無。
他の解体職人が凄く怖がっていたからだ。
尋常じゃ無いほど怖かったのか、気を紛らす為にか、調教された結果か、解体に無言で勤しんでいた。

その時の表情は世界の終わりを見たかのような表情だったのを鮮明に覚えている。

「それじゃあ、明日もまたここにきておくれ。」
「はい、わかりました。」
「解体は覚えちまえばどうってことないから頑張って覚えるんだよ。この教習が終わる頃にはスキル<解体>を修得すると思うけど、個人差があるから早く修得するやつもいればいつまでたっても修得しないやつもいるからね。最終日に修得してなくても基本を覚えてりゃ修得できるだろうから明日も頑張るんだよ」
「はい。」

静也はそのまま帰ろうとしていたが咄嗟に思い出した。

「あ!魔牛買い取ってください。何体ならいけますか?」

ジョアンは覚えてたか、と悔しそうな表情をしていた。

「とりあえず40まででお願いするよ。」
「はい、お願いします。」


今日の収入
解体の知識
ジョアンの本性(?)
67000ルター
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