92 / 106
苦悩
しおりを挟む
ダンさんのところで修行をすること二ヶ月目。
以前より体つきが良くなり、柔軟性が高いバランスの取れた筋肉を獲得した。
二ヶ月の間、未だに身体を鍛えるだけだ。
はじめの頃よりかなり厳しいメニューになっているため、依然苦痛が絶えない。
時折わざと骨を折られたり、外されたりし、痛みに耐える修行もした。
はじめの頃は外されただけで、鼻水流しながら泣いていたのが懐かしい。
しかし、この順応性はおかしなものだ。
外されるだけなら入れれば良い、折られたならそこまでだが。
防御力ではなく耐性が高くなった。
「まぁ、予定よりかは落ちているが、粗方身体はできてきたか。…んー、時間を巻こう。もっとハードにするからついてこいよ。」
「うげぇ…。」
「本格的な対人戦闘にも馴れて貰わないと困るからな、でも未完成な状態で戦わせて変な癖つけられても困る。…あ、シズヤ、ちゃんと傘を使わない生活をしてんだろうな?」
「勿論ですよ。指ひとつたりとも触れてませんよ。」
「うむ、良い心がけた。」
「良く言うよ…。指ひとつでも触れたらボコボコにするって言ったのはあんたでしょうが…。」
ダンさんの鋼鉄が如く強い硬度をもつ拳骨が俺の頭に落ちる。
視界に電撃が走り、頭を手で押さえる。
「何するんですか!いったいなぁ!」
「生意気なこと言えるようになったのは良いが、俺を怒らせるなよぉ?」
「勝手に怒ってんのはあんたでしょうが!って、タンマタンマ!マジでフルスイングはヤバい!」
ダンさんは身体を捻り、全力のフルスイングフックをかまそうとする。
流石にダンさんの全力パンチを生身で受けてタダで済むわけがない。
「問答無用!痛みに慣れろ!このモテ男がぁ!」
「ただの嫌味やないかい!」
視界に電撃が走ったの同時におれの意識は闇に消えた。
「おー、やっと起きたか。お前、気絶して三十分経ったぞ。村の外だったら死んでたかもな。」
「…自分でやらかしたくせに…」
「んん?何か言ったかなぁ?」
「なんでもございません!」
根っからのパワーにはやはり勝てない。
ダンさんと同じ域に到達するのに一体どれ程かかるのか。
その頃に傘を持つとどうなるのか、気になってしまった。
だが、約束(無理やり)があるため、そうそう簡単に傘を召喚できない。
早く傘を持ち、どれほどまで強化されるのか気になる。
「さてシズヤ、これからはきちんとした防具を選ばなければならない。防具はお前の命を守ってくれる命綱だ。適当に選んだものが粗悪なものならお前の命綱は簡単に言えばただの蜘蛛の糸。だが、きちんとしたものを選べばそれは荒縄と同じような強度をもつ命綱となる。」
「はぁ。」
「最近の奴等は防具をファッションの一部だとおもいがちだ。『びきにあーまー』?、『金ぴか』?、何もわかっちゃぁいない。見たくれなんて二の次、三の次でいいんだ。必要なのは利便性、使いやすさだ。如何に良い装備でも自分に合わなきゃ意味がない。着たのはいいが動けなくちゃあそれこそ意味がない。そうだろう?」
「はい。」
「体術は必然的に使用することになる。だからよく身体を使う。動きが阻害されるような防具を着けて戦えば本来の能力が引き出せないことくらいわかるよな?それも踏まえて防具を選んで欲しい。そんなことで死んでいった者も居るんだ。そこは肝に免じておけ。」
「はい。」
ダンさんの真剣な表情に俺までもが真剣になる。
色々な経験をしてきた人が、そうまでいうのだ。
これは今後とも真剣に考えなくてはいけないな。
「さて、昼飯だ。身体作りの一環だ。きちんと食べろよ。」
「ダンさんの奢りですか?」
「馬鹿野郎、お前は滅茶苦茶食うから、うちの女房に怒られたらどうするよ。」
「ははは、うちのノーナも同じようなもんですよ。女は強いですねぇ。」
「は、良い得て妙だな。」
いつもの行きつけの酒場で昼飯をとって、また地獄の修行が再開するのだった。
ーーーノーナsideーーー
シズヤは今日も組合でダンと言う男と修行をしに行っている。
強い男は魅力的だ。
妾は、シズヤが強くなるのには賛成だ。
しかし、しかしだ。
毎日毎日、ボロボロになって帰ってきているのだ。心配にもなる。
暇なときに妾は覗きに行くのだが、なんとも無様な姿を見せるシズヤがそこにあったのだ。
聞くところによると元が弱いらしい。傘を持つことで強化されるようだ。
妾を救った英雄はまだ未成熟だったようだ。
強さも以前よりも、格段に変わる。
自信が付いてきたのか、以前よりも堂々としておる。
これより強くなったシズヤを見るのが待ち遠しい。
妾も負けてられないのだ。
だが、だがひとつ、妾は許せないことがひとつある。
それは昼飯だ。
ルターを使いすぎだ!家計簿を組むのは妾なのだぞ!
せめて千ルターまでにして欲しいものだ。
今はまだ余裕があるが、後々金に困るかもしれぬ。
だから前々からきちんと管理しておくのが良い。
今日もまた覗きに行ったが、やはり昼飯で使いすぎだ。
まったく…
そんなところも妾は好きなのだがな。
以前より体つきが良くなり、柔軟性が高いバランスの取れた筋肉を獲得した。
二ヶ月の間、未だに身体を鍛えるだけだ。
はじめの頃よりかなり厳しいメニューになっているため、依然苦痛が絶えない。
時折わざと骨を折られたり、外されたりし、痛みに耐える修行もした。
はじめの頃は外されただけで、鼻水流しながら泣いていたのが懐かしい。
しかし、この順応性はおかしなものだ。
外されるだけなら入れれば良い、折られたならそこまでだが。
防御力ではなく耐性が高くなった。
「まぁ、予定よりかは落ちているが、粗方身体はできてきたか。…んー、時間を巻こう。もっとハードにするからついてこいよ。」
「うげぇ…。」
「本格的な対人戦闘にも馴れて貰わないと困るからな、でも未完成な状態で戦わせて変な癖つけられても困る。…あ、シズヤ、ちゃんと傘を使わない生活をしてんだろうな?」
「勿論ですよ。指ひとつたりとも触れてませんよ。」
「うむ、良い心がけた。」
「良く言うよ…。指ひとつでも触れたらボコボコにするって言ったのはあんたでしょうが…。」
ダンさんの鋼鉄が如く強い硬度をもつ拳骨が俺の頭に落ちる。
視界に電撃が走り、頭を手で押さえる。
「何するんですか!いったいなぁ!」
「生意気なこと言えるようになったのは良いが、俺を怒らせるなよぉ?」
「勝手に怒ってんのはあんたでしょうが!って、タンマタンマ!マジでフルスイングはヤバい!」
ダンさんは身体を捻り、全力のフルスイングフックをかまそうとする。
流石にダンさんの全力パンチを生身で受けてタダで済むわけがない。
「問答無用!痛みに慣れろ!このモテ男がぁ!」
「ただの嫌味やないかい!」
視界に電撃が走ったの同時におれの意識は闇に消えた。
「おー、やっと起きたか。お前、気絶して三十分経ったぞ。村の外だったら死んでたかもな。」
「…自分でやらかしたくせに…」
「んん?何か言ったかなぁ?」
「なんでもございません!」
根っからのパワーにはやはり勝てない。
ダンさんと同じ域に到達するのに一体どれ程かかるのか。
その頃に傘を持つとどうなるのか、気になってしまった。
だが、約束(無理やり)があるため、そうそう簡単に傘を召喚できない。
早く傘を持ち、どれほどまで強化されるのか気になる。
「さてシズヤ、これからはきちんとした防具を選ばなければならない。防具はお前の命を守ってくれる命綱だ。適当に選んだものが粗悪なものならお前の命綱は簡単に言えばただの蜘蛛の糸。だが、きちんとしたものを選べばそれは荒縄と同じような強度をもつ命綱となる。」
「はぁ。」
「最近の奴等は防具をファッションの一部だとおもいがちだ。『びきにあーまー』?、『金ぴか』?、何もわかっちゃぁいない。見たくれなんて二の次、三の次でいいんだ。必要なのは利便性、使いやすさだ。如何に良い装備でも自分に合わなきゃ意味がない。着たのはいいが動けなくちゃあそれこそ意味がない。そうだろう?」
「はい。」
「体術は必然的に使用することになる。だからよく身体を使う。動きが阻害されるような防具を着けて戦えば本来の能力が引き出せないことくらいわかるよな?それも踏まえて防具を選んで欲しい。そんなことで死んでいった者も居るんだ。そこは肝に免じておけ。」
「はい。」
ダンさんの真剣な表情に俺までもが真剣になる。
色々な経験をしてきた人が、そうまでいうのだ。
これは今後とも真剣に考えなくてはいけないな。
「さて、昼飯だ。身体作りの一環だ。きちんと食べろよ。」
「ダンさんの奢りですか?」
「馬鹿野郎、お前は滅茶苦茶食うから、うちの女房に怒られたらどうするよ。」
「ははは、うちのノーナも同じようなもんですよ。女は強いですねぇ。」
「は、良い得て妙だな。」
いつもの行きつけの酒場で昼飯をとって、また地獄の修行が再開するのだった。
ーーーノーナsideーーー
シズヤは今日も組合でダンと言う男と修行をしに行っている。
強い男は魅力的だ。
妾は、シズヤが強くなるのには賛成だ。
しかし、しかしだ。
毎日毎日、ボロボロになって帰ってきているのだ。心配にもなる。
暇なときに妾は覗きに行くのだが、なんとも無様な姿を見せるシズヤがそこにあったのだ。
聞くところによると元が弱いらしい。傘を持つことで強化されるようだ。
妾を救った英雄はまだ未成熟だったようだ。
強さも以前よりも、格段に変わる。
自信が付いてきたのか、以前よりも堂々としておる。
これより強くなったシズヤを見るのが待ち遠しい。
妾も負けてられないのだ。
だが、だがひとつ、妾は許せないことがひとつある。
それは昼飯だ。
ルターを使いすぎだ!家計簿を組むのは妾なのだぞ!
せめて千ルターまでにして欲しいものだ。
今はまだ余裕があるが、後々金に困るかもしれぬ。
だから前々からきちんと管理しておくのが良い。
今日もまた覗きに行ったが、やはり昼飯で使いすぎだ。
まったく…
そんなところも妾は好きなのだがな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる