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14巻
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冬の足音が聞こえ始めた、とある日の休息日。
俺――フィル・グレスハートは、仲の良い友人のカイル・グラバー、レイ・クライス、トーマ・ボリス、アリス・カルターニ、ライラ・トリスタンとともに、中等部学生寮の裏手にある小屋に集まっていた。
ここは、もともと中等部寮の管理人さん一家が暮らしていた小屋だ。数年前に寮のそばに新しく管理人さんの家が建てられたため、空き家になったところである。
空き家になったばかりの頃、生徒総長のライオネル・デュラント先輩が、友人のライン・マクベアー先輩に鍛錬用にと貸し、さらにマクベアー先輩が去年中等部を卒業する際に、俺に鍵を譲ってくれた。
高い塀に囲まれた3LDKの広い庭付き物件で、改装も自由にしていいと言われている。
カイルたちに手伝ってもらいながら、暇を見てちょこちょこリフォームしに来ているんだよね。
三国王立学校の交流会や、ステア遺跡の探索の件があって作業が少し遅れてしまったけど、ようやく完成が見えてきた。
直近の悩みは、このリフォーム完成後に行う披露パーティーのこと。
規模はどのくらいで、誰を呼んでどんなおもてなしをするか、なかなか悩ましい問題だ。
俺たちがリフォームの仕上げをしつつその相談をしていると、訪問者が現れた。
扉を開けてみると、ティリアのイルフォード・メイソンとサイード・ウルバンだった。
イルフォードは学生ながら、世界各国から依頼が殺到する芸術家。彫刻、絵画、服飾などなど、天才ゆえになんでもできちゃうすごい人だ。
サイードはイルフォードと仲の良い後輩で、面倒見が良い性格ゆえの苦労人である。
イルフォードが浮世離れしているところがあるからか、よくお世話をしている姿を見かける。
サイードにとってイルフォードは尊敬する先輩だし、性格的に放っておけないんだろうな。
そんな二人組が訪ねてきたのは、イルフォードの依頼品に関することでだった。
依頼品のヴェール制作に行き詰まっているので、この小屋の内装を見てインスピレーションを刺激したいのだそうだ。
ここのリフォームは俺の趣味満載で、前世の知識を活かし和室やお風呂を作っているんだよね。
イルフォードには、和室の装飾をお手伝いしてもらった恩がある。お役に立てるなら嬉しい限りだ。
絵画は完成期限を設けない場合があるらしいけど、ヴェールやドレスなどの場合は舞踏会やパーティーなどに向けて依頼されることが多いもんね。期日に間に合えばいいけど。
ふいに気になった俺が、期日を尋ねてみると……。
サイードから、『期限は今度の冬まで。依頼品を着用するのはグレスハート皇太子妃になるルーゼリア王女殿下』だという答えが返ってきたのだった。
……今度の冬に、ルーゼリア王女にヴェール。
それってもしかして、ルーゼリア義姉さんのウェディングヴェールでは……。
タイミング的に考えてそうに違いない。
数ヶ月後、我がグレスハート王国で、グレスハートの皇太子であるアルフォンス兄さんと、コルトフィア王国ルーゼリア王女の婚姻式が行われる。
今、国ではその準備で大忙しなんだよね。
次代の国王となるアルフォンス兄さんの結婚。しかも、相手は大国コルトフィア王国のルーゼリア王女となれば当然だろう。
二人の婚姻、二国の結びつきは、他国へのお披露目もかねて盛大にしなくてはいけない。
それに、ルーゼリア王女には妹を溺愛する三人の兄がいるから、何か粗相があったら大変なことになりそうだもんなぁ。
新しい義姉さんを実家に連れ帰られないためにも、絶対に失敗はできないのだ。
雪が高く降り積もった頃、ステア王立学校は二ヶ月の冬休みに入るので、俺とカイルとアリスもグレスハートに帰国して、婚姻式のお手伝いをしようと思っている。
いや、俺の場合はもうすでに、ここステアから手紙などで連絡して、できる限り婚姻式の準備を始めている。
ただ、俺の担当は観光関係が主で、服飾関係はノータッチだった。
婚姻式の衣装は、父さんと母さんとアルフォンス兄さんが、コルトフィア王家やルーゼリア王女の意見を聞きつつ進めているはずだ。
ティリアは織物や服飾で有名だし、ティリア皇太子妃となったステラ姉さんもいる。
だから、多分ウェディングドレス等はティリアに頼むんじゃないかと予想していたけど、まさかイルフォードにヴェールを依頼しているとは……。
どういう関わりがあったのかな。ティリアのアンリ皇太子の推薦とか?
そんな推測を立てていた俺は、ある可能性に気がついてハッと息を呑む。
イルフォードに依頼された理由って、まさか……。
俺はゴクリと喉を鳴らし、おそるおそる尋ねる。
「あの、ちょ、ちょっと、すみません。小屋の中を案内する前に、もう一度詳細を伺ってもよろしいですか?」
俺は小屋の中にイルフォードとサイードを招き入れ、ダイニングテーブルの席に二人を座らせた。
「グレスハート皇太子の結婚式話、私も聞きたいです!」
「俺も新しい皇太子妃がどんな女性か気になる」
ライラやレイたちも揃って席に着くと、サイードは少し笑ってイルフォードに向かって聞く。
「小屋見学でお世話になるんですし、経緯を話してもいいですよね?」
イルフォードがコクリと頷くのを見て、アリスはキッチンへと向かう。
「じゃあ、お茶を淹れますね」
「あ、そうだね。なら、僕も一緒に……」
手伝おうかと思ったら、アリスは軽く手を前に出して制止のポーズを作る。
「先にフィルとカイルが、準備してくれたでしょ。一人でできるわ。すぐに持っていくから、お話ししていて」
俺が早く話を聞きたいという気持ちを、察してくれたのだろう。
「ありがとう、アリス」
感謝しながら、俺とカイルとトーマは席に着いた。
イルフォードと一緒に部屋の中を見回していたサイードは、席に着いた俺たちに気がついて話し始める。
「詳細といっても、話せることはあまりないんだ。グレスハート国王陛下からティリア国王陛下に宛てた書状の中で、イルフォード先輩にヴェールを依頼したい旨が書かれていたそうなんだよ。アルフォンス殿下はティリアに滞在されていたこともあったから、その時にイルフォード先輩の服飾技術の高さをお知りになったんだろうな。君たちもイルフォード先輩の刺繍の素晴らしさは、見て知っているだろうけど」
「は、はい。それはもう充分に」
先日の交流会最終日に、仮装パーティーが開かれた。海賊やお姫様、着ぐるみや剣士などなど、普段できないような衣装を身にまとい楽しむパーティーだ。
俺の衣装は古代人の衣装。前世の古代ローマ人の服に似た、とてもシンプルな衣装だった。
目立ちたくなかったから、簡素で地味な出来栄えに満足していたんだけど……。
なぜか話の流れで、交流会前にステア入りしていたイルフォードが、その衣装をアレンジすることになったんだよね。
お手伝い日数も少なかったというのに、衣装にふんだんに刺繍を入れてくれた。
その衣装は灯りの下に立つと、金糸と銀糸の刺繍が立体的に浮き上がり、眩しく光り輝く仕様になっていた。
「フィル様の衣装、すごかったですよね……」
その当時のことを思い出したのか、カイルが暗い表情で呟き、レイとライラとトーマが深く頷く。
「まさに神様降臨って感じだったもんなぁ」
「光り輝いていたわよねぇ」
「祈っている人もいたね」
……全部事実だから、何も言えない。
「正直あの衣装は国に持って帰りたかったよ」
サイードから心底羨ましそうな目で見つめられ、俺は口元を引きつらせる。
そんな目で見ないでください。俺の衣装に施された刺繍技術は、ティリアの刺繍美術館に飾られる国宝レベルらしいから、気持ちはわからないでもないけど。
「あれはこの子にあげたからダメだよ」
イルフォードに優しく言われ、サイードはため息を吐く。
「わかってますよ」
そう。その国宝級の衣装は、俺が個人的にもらうことになったのである。異例のことだ。
もともと仮装パーティーは、在庫処分に困った洋服をリメイクして有効活用しようと考えついたもの。だから、個人で用意した衣装以外は、来年以降にまた着られるよう学校の倉庫で保管される。
だが、あの衣装は俺のサイズに合わせてあるので着られる人が少なく、あまりに完成された衣装ゆえ手直しして使うこともできない。
何より一番問題なのは、衣装の保管場所だ。
国宝級の品となれば学校の倉庫ではなく、もっとセキュリティのしっかりしたところじゃないといけなくなる。
結局、イルフォードの希望もあって、特別に俺が衣装をもらい、召喚獣のテンガの能力で実家に送ったのだった。
実家に送られた衣装を見て、父さんたちは度肝を抜くくらい驚いたみたいだった。
ははは、そうだよね。学校行事の仮装衣装を受け取ってみたら、国宝級の品が送られてきたんだから。俺だってきっと同じ反応をする。
おかげで、仮装パーティーのことを細かく説明することになっちゃったよ。
説明後の父さんの手紙は、きっとお小言いっぱいかなと思ったら、たった一言。
『フィル、帰ったら話がある』
怖い。むしろその一言のほうが怖い。
神様みたいに皆から拝まれた件は伏せたのに……。なんで。
父さんから手紙をもらった時のことを思い出し、気持ちがズーンと沈む。
そんな俺の前に、アリスがティーカップを置いた。
優しい香りのブレンドティーだ。
「どうもありがとう」
お礼を言うと、お茶を配り終えたアリスは、空いている席に着いて微笑む。
俺は一口お茶を飲んで、イルフォードたちに最も聞きたかったことを尋ねる。
「それで、あの……その依頼って、いつ頃入ったんですか?」
もしかして、実家に衣装を送ったことがきっかけではないだろうな?
ドキドキと答えを待っていると、イルフォードは視線を少し上げて考えてから言う。
「……夏休みが終わってから」
ということは、ルーゼリア王女との結婚が正式に決まり、グレスハートに帰国してから父さんが依頼を出したのか。つまり、交流会前! やった、セーフ!
あ~、焦ったぁ。俺が衣装を送ったことが原因かと思った。
俺がホッと胸を撫で下ろしていると、イルフォードは何かを思い出したのか「あ……」と声を漏らす。
「そういえば、交流会から帰ったあと、追加で刺繍を入れてほしいってお願いが届いた」
……やっぱり、俺のせいじゃん。
落ち込んだ俺は、頭を抱える。
「なんでフィル君が落ち込んでいるんだ?」
不思議そうなサイードに、アリスがチラッと俺を見て困り顔で笑う。
「交流会のフィルの衣装はすごかったので、その話題がどこかから伝わったんじゃないかって思っているのでは……」
俺をフォローしてくれたアリスの言葉に、サイードは笑う。
「ははは、まさか。それはないよ。海を越えて話が伝わるには、時間が短すぎる」
あるんですよ。話っていうか、衣装を送っちゃったんで……。
沈む俺に向かって、イルフォードはふわりと笑う。
「そうだとしても、作り直そうと思っていたから……大丈夫」
「そうそう。今回はちょっとすんなりいっていないみたいでね。すでに何度か作り直しているんだ。イルフォード先輩は作業が早いから、制作に入れたら大丈夫だと思うんだけどね」
そう言いつつも、サイードは少し憂いのある顔で微笑む。
「僕にできることがあったら協力します」
作り直す予定だったとしても、追加の指定が入ってしまったのは、やっぱり俺のせいだ。
イルフォードに調子を戻してもらうためにも、ヴェールを制作してもらうためにも、できる限り協力しなくちゃ。
「ありがとう。心から感謝する。なるべく早く制作に入ってほしいからね」
安堵するサイードに、俺たちは大きく頷く。
イルフォードの制作スピードは知っているけど、早くできたらもっといい。
しかし、協力するっていっても、俺に何ができるかな。
インスピレーションを刺激するためにこれから小屋を見学してもらうとして、服飾関係のことは素人だ。
俺に何か手伝えることはあるだろうか。
俺は腕組みして、考え込む。
そもそも、イルフォードの作りたいヴェールってどんなものだろう。
「あの……何枚かはヴェールができているんですよね? どういうところが、イルフォードさんの求めているヴェールと違うんでしょう? どういったヴェールが作りたいんですか?」
服飾や芸術のことはさっぱりだが、求めている方向性だけでも聞きたい。
すると、イルフォードは鞄から木のファイルに挟まれた紙を、慎重に取り出す。
上質な紙で、女性の人物画が写実的に描かれていた。
うっわ! 上手な絵。まるで写真みたいに精巧だ。
だけど、この女の人って――――。
俺がよく見ようと目を凝らしていると、横にいたレイがぐっと身を乗り出す。
「なんて綺麗な人なんだ! この美人はどなたですか?」
興味津々で尋ねたレイに、イルフォードが答える。
「ルーゼリア王女殿下」
やっぱりルーゼリア王女!
「おぉぉ、噂に聞くルーゼリア王女様かぁ。凜として綺麗な人だなぁ」
レイはデレッと目尻を下げる。
「絵も上手だね。生きているみたい。誰が描いたんだろう」
「本当ね。有名な画家か、王家お抱えの宮廷画家が描いたのかしら?」
トーマとライラの疑問に、イルフォードがさらに答える。
「アルフォンス皇太子殿下」
さらっと言われたので、理解するのが遅れた。
一呼吸間があいて、イルフォードとサイード以外の全員が叫ぶ。
「「アルフォンス皇太子殿下!?」」
合わせたみたいに、皆の声がピタリと揃った。
「え? え? アルフォンス皇太子殿下って、あのアルフォンス皇太子殿下?」
「嘘でしょ。並の画家よりも上手だわ。すごい才能ね」
衝撃の事実にレイは困惑し、ライラは感嘆の息を吐く。
本当に驚いた。アルフォンス兄さんが器用で、なんでもできるのは知っているけど、絵も上手だったとは……。
そういえば、前にヴィノに乗った少年の像をデザインしたことがあったよなぁ。
そのデザイン画を見たことがあったけど、モダンアートっぽいデザインだったから、そっちのほうが気になってあんまり意識してなかった。
今思えば美術的センスがないと、ああいうのも描けないよね。
すごいなぁ。まさに天才。才能の塊。
ステラ姉さんも「才能がありすぎるのも困ったものだわ」とか言っていたっけ。
う~ん、俺が知らないだけで、他にもまだ隠している才能がありそう。
「素晴らしい絵ね。ルーゼリア王女殿下の人柄が表れているかのよう」
アリスは絵を見つめ、柔らかく微笑む。
「うん、本当だね」
ルーゼリア王女は真面目で、思ったら一直線な人だ。だけど、平民にも気さくで優しい。
アリスの言うように、この絵の王女は眼差しや口元に、その人柄が表れていた。
そして、彼女への愛情も強く伝わってくる。
「ああ、そうか。フィルたちはルーゼリア王女殿下をご覧になったことがあるんだよな」
レイに聞かれて、俺とアリスとカイルは頷いた。
俺が王子であることはレイたちにまだ明かしていないのだが、家族とコルトフィア旅行に行き、コルトフィア国民に向けて行われたアルフォンス殿下とルーゼリア王女のお披露目式を見たことは話していた。
「あ、うん。この絵のままの方だよ」
「凜とした表情もそっくりだ」
カイルが言い、アリスが微笑む。
「お披露目式の時のルーゼリア王女殿下、綺麗だったわよね」
この絵があれば、実際に会っていなくとも雰囲気は充分に伝わるだろう。
「そっかぁ。この方の花嫁姿はさぞ綺麗だろうな」
レイはマジマジと絵を見つめ、息を吐く。
すると、イルフォードは懐からメモを取り出し、携帯用の羽根ペンで流れるようにデザインを描き始めた。
「ドレスはこんな感じ」
簡易的に描かれたのは、シックなマーメイドラインのドレスだ。
「婚姻式のドレスですか?」
「わぁ、素敵なドレス」
アリスとライラが目を輝かせると、イルフォードは小さく頷いた。
「そう。王女殿下の好みもあって、こういった形の優美なドレスで装飾が少ない。その代わり、布は光沢のある白を使っている」
ルーゼリア王女に似合いそうなデザインだ。シンプルなのが好きって言っていたし。
「このドレスもティリアに依頼がきているんだ。選りすぐりの職人を招集し、アンリ皇太子殿下が中心となって制作している」
サイードの説明に、俺たちは「おぉぉ」と声を漏らす。
アンリ義兄さん自らとはすごい。アルフォンス兄さんのお嫁さんだから、特別にだろうか。
ティリアの国民は、老若男女問わず裁縫や編み物を嗜む。それは、王族であっても同じ。
アンリ義兄さんはティリアでもトップクラスの裁縫の腕前を持っているんだよね。
ステラ姉さんのウェディングドレスもアンリ義兄さんの手作りだったし、俺もクッションとか手作りのものをいくつかもらったことがある。
アンリ義兄さんに憧れているティリアの職人も多いって、スコット・ベイル先輩も言っていた。
「イルフォード先輩は制作途中のドレスを見せていただいたそうで、それはそれは素晴らしい品だそうだ。まぁ、アンリ皇太子殿下が手掛けたドレスだから、間違いないだろうけど」
サイードは少し誇らしげに、口角を上げる。
その口ぶりからすると、サイードもアンリ義兄さんに憧れている一人なのかも。
「当初考えていたデザインは、長いヴェール。ドレスのラインにも合うし、ヴェールを引いて歩けば刺繍も綺麗に見える。理想的なヴェールだ」
使用予定の大聖堂には長い通路があって、そこには濃い青の絨毯が敷かれている。
刺繍の入った白いヴェールが青の絨毯に広がる様子は、映えるに違いない。
「いいですね。きっと綺麗だと思います。……って、あれ? 当初のってことは、デザイン変更したんですか? 理想的なんですよね?」
俺が首を傾げると、イルフォードは表情を曇らせる。
「このデザインのヴェールを作るには、生地の薄さと柔らかさ、何より軽さがないといけないんだ。軽くするために、生地の織り方や刺繍方法を変えてみたけど上手くいかなくて……」
「刺繍をするとそのぶん糸を使うから、重みが増すんだ。他に最適な素材があればいいけど、都合良く見つかるわけないし、時間もない。だから、今はデザインそのものを見直しているところなんだ」
渋い顔をするサイードに、イルフォードはため息を吐く。
「刺繍を少なくしたデザインにしたり、ヴェールの長さを調整してみたり。そうやって何個か作ってみたんだけど、やっぱり理想としているものとは違って……。いろいろ考えていたら、わからなくなってしまったんだ」
イルフォードは悲しげに、長いまつ毛を伏せる。その表情は、憂いが一層深く見えた。
「ちなみに素材は何を使っているんですか?」
ライラが尋ねると、イルフォードが顔を上げて答える。
「前に使った素材は、ルネーラ兎の毛糸や、クレマチナの茎の繊維からとった糸」
どっちも聞いたことがない素材だ。
すると、ピンときていない俺とカイルに、トーマが教えてくれた。
「ルネーラ兎はティリア高地に棲む兎だよ。夏前に抜ける冬毛で、とても繊細な毛糸を作ることができるんだ」
その説明に、ライラはコクコクと頷く。
「ヴェールを作る時に使う高級毛糸よね。柔らかいんだけど、確かに長いと重みが出そう」
「反対にクレマチナの糸は、軽いけど硬いのよね。薬草を調べている時に、植物の本で読んだことがあるわ」
アリスたちの説明に、知識のない俺とカイルは「へぇ」と感心する。
アリスは薬師に興味があるらしく、よく植物の本を読んでいる。トーマはいつも動物の研究をしているし、ライラは将来商人を目指して様々な商品を勉強している。
好きなことだからというのもあるが、皆勉強して偉いなぁ。
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