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16巻
16-1
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俺――フィル・グレスハートは今、ステア王立学校の長期冬休み期間を利用し、グレスハート王国に帰郷している。
兄であるグレスハート王国アルフォンス皇太子と、コルトフィア王国ルーゼリア王女の婚姻式の準備を手伝い、お祝いするためだ。
ただ、それにかかりっきりだったわけではない。
婚姻式の準備の合間に、友人のレイとトーマとライラを連れ、グレスハートの王子として街や村を案内して回った。
そう、学校で俺は王子という身分を隠しているんだけど、今回ついに俺がグレスハート第三王子かつ日干し王子であることが、レイたちにバレちゃったんだよね。
そして俺に続いて、カイルも自分が俺の従者であることや獣人であることを告白した。
獣人は、ルワインド大陸で忌み嫌われる存在だ。
ライラはルワインド出身だし、レイがルワインドのザイド伯爵家子息だと知った直後だったから、身の上を明かすのは、すごく勇気がいったと思う。
俺とカイルの身分が知られたことで、もしかしたら皆と友達でいられなくなってしまうかもって不安になったけど、皆は受け入れてくれた。
ふざけあったり、軽口を言い合ったり、俺たちの仲は相変わらずだ。
いや、むしろ、お互いの事情を知って、前よりももっと絆が強くなった気がする。
そんな皆と一緒に山神祭りに参加したり、レイたちのお父さんたちと新施設を視察したり、劇を見に行ったり、グレスハートでのたくさんの楽しい思い出を作ることができた。
そして、一番の目的だった婚姻式も、無事に終わった。
大聖堂で永遠の愛を誓う二人はため息が出るくらい美しかったし、そのあとに行われた各国の王侯貴族を招いてのパーティーも大好評だった。
国民たちに向けてのお披露目だって、大成功――……だったと思う。
俺が鉱石を使って巨大な虹を作ったせいで会場はちょっと騒然としちゃったけど、皆には気づかれなかったし。
虹を作ったのは俺からアルフォンス兄さんとルーゼリア義姉さんへの、婚姻のお祝いの気持ちを表すためだったんだから、父さんも今回は大目に……見てくれるよね?
グレスハート城の敷地内にある温室で、俺は一つため息をついた。
ここは静かだけど、城下町は賑わっているんだろうなぁ。
婚姻式が終わったあとも、グレスハート国内では未だお祭り騒ぎが続いている。
話題に上がるのは、もちろん婚姻式でのことばかりだ。
アルフォンス兄さんやルーゼリア王女の仲睦まじい様子や、二人の婚礼衣装とヴェールが美しかったという話。……それから、国民のお披露目の際に現れた、巨大な虹の話。
この世界では古き時代に虹信仰があり、今でも虹を神聖なものと考える人は多い。
婚姻の日にそんな虹が現れたので、人々は『アルフォンス皇太子とルーゼリア皇太子妃の婚姻が神に認められた』『神に祝福されたお二人だ』『虹は神様からグレスハート王国へ贈られた祝辞だ』と盛り上がっているのだ。
う~ん。やりすぎちゃったかなぁ。
でも、あの時、虹を見たアルフォンス兄さんやルーゼリア義姉さんは嬉しそうだったよね。
見に来てくれた国民たちも、皆喜んでくれていた。
そんな皆の表情を見ることができたのだから、虹を作ったことに後悔はない。
まぁ、ちょっと大きく作りすぎちゃったかな、とは思っているけど……。
招待客が帰ったあと、父さんに呼び出しを受けた時のことを思い出し、俺はため息を吐く。
いやぁ、久々にかなり怒られた。『いくらお祝いしたいからといって、あんな大勢の前で巨大な虹を作る者がおるか!』ってさ。
あの虹を作り出したのが俺だと気がついたのは、以前俺が虹を作ったのを見た父さんとヒューバート兄さん、ダグラス宰相とグランドール将軍、俺の護衛であるスケさんカクさん、そしてカイル。
あと、虹を作るのを見たことがないはずなのに、アルフォンス兄さんは気がついたみたい。
アルフォンス兄さんは天性の察しの良さに加え、俺の能力を高く評価し、俺の行動を熟知している。俺に対するブラコンセンサーを備えているから、アルフォンス兄さんは特別なんだ。
だけど、ブラコンセンサーのない普通の人は、絶対に気づいていないと思う。
こちらの世界の人は虹ができる原理も知らないと聞いたし、それ以前に鉱石は威力が弱いということが常識だとされている。
きっと『フィル殿下が虹を作りだした』どころか、『人が鉱石を使って巨大な虹を作った』とすら思わないだろう。
現に過去二回、虹を作ったことがあるが、全然バレなかったもんね。
だから大丈夫だという確信の元、虹を作ったんだけど……。
うーむ、やはり巨大すぎたのがよくなかったなぁ。
国民たちのお祝いムードに当てられて、テンションが上がりすぎちゃったかも。
俺が眉を寄せて改めて反省していると、カイルが心配そうに尋ねてくる。
「フィル様、どうかされましたか?」
近くにいたガルボも、二メートルほどもある大きな体を屈めて俺の顔を覗き込んでくる。
「元気がないようですが、大丈夫ですかぃ?」
「婚姻式が終わったばかりで、お疲れなんじゃないですか?」
隣にいたマルコも、そう言って表情を曇らせる。
彼らは王宮温室管理者の、サルマン親子だ。
厳つい顔で大岩のような体格なのが、父親のガルボ・サルマン。温和な顔で背は高いが細身なのが、息子のマルコ・サルマンである。
俺がカイルとヒスイを連れて温室に来たのは、父さんから『婚姻式でやりすぎたことを反省しているなら、ガルボの手伝いをしてこい』と言われたからだ。
なのに、考え事をしていたせいで、余計な心配をさせちゃうとは……。
「ごめん。大丈夫だよ」
俺はそう言って、ガルボたちに笑ってみせる。
反省も大事だが、今はお手伝いに集中しないと。
気合を入れ直していると、ガルボの背後から妖精が顔を出した。
【本当に平気? 無理したらダメよ?】
この子は、緑の妖精のミム。
ミムはもともと森に棲んでいたが、ガルボの傍にいるのが居心地が良いからって、この温室に居ついているのだ。
ガルボたちにはミムの存在を伝えているが、残念ながら彼らにはミムの姿も見えていないし声も聞こえていない。
【ガルボもマルコも頑張りすぎて、立ったまま寝ている時があるんだから】
ミムにそんなことをバラされているとは、二人とも思っていないだろうなぁ。
俺はくすっと笑って、ガルボたちを見上げる。
「本当に大丈夫。ちょっと考え事をしていただけだから。それで、僕たちは種の育成をお手伝いすればいいんだよね?」
俺が改めて尋ねると、マルコはまだちょっと心配そうにしつつも頷いた。
「はい、そうです。クロフォード侯爵様から種をいただいたので、こちらの温室で育てることになりました」
最近は石鹸やマクリナ茶や干物などの交易品が増えているけれど、グレスハートの産業の主軸は農業。
王宮の温室では花を育てる以外に、自国や他国の作物を研究している。
森に自生していたマクリナの栽培を成功させたのも、カンカン草の苗を増やして管理しているのもここである。
カンカン草はステア王国の固有種で、水に浸すと熱を発し、お湯に変える植物だ。
大きなお風呂を作るためにステア王国より譲ってもらったが、グレスハートでは外来種にあたるから、管理する必要がある。
作物の研究も大事だけど、そのせいで自国の農作物に影響が出ることは決してあってはならないからね。
「おじい様にいただいて、この温室で育てることになったってことは、他国の植物なの?」
俺の質問に、マルコはコクコクと頷く。
「アウステル王国原産の作物だそうです」
「アウステル王国?」
聞いたことがない国名だな。地図にそんな国、載っていただろうか。
首を傾げる俺に、ガルボは楽しそうに笑う。
「物知りなフィル様でも、知らないんですね。いや、俺も軽く聞いたことがあるくらいなんですがねぇ。グラント大陸の東にある島国だそうでさぁ」
島国か。それなら知らないのも仕方ないかもしれない。
こちらの世界地図は、測量も大まかで、まだ曖昧な部分があるんだよね。
グラント大陸、ルワインド大陸、デュアラント大陸の三大大陸内にある国は描かれていても、島国が地図から省かれていることはしばしばある。
旅人の旅行記だって三大大陸のものがほとんどで、島国全般の情報が少ない。もしかすると、地図の制作者自身が小さい島国の存在を知らないのかもしれない。
「侯爵様のお話では、その国はあまり外交を行っていないそうなんです。だから、こうして固有の作物の種をいただくのも中々ないことなんですよ。しかも、たった一度の外交で自国で育ててもいい許可をいただくなんて、普通ありえません」
興奮したように話すマルコに、俺はゴクリと喉を鳴らす。
「おじい様、向こうの王様に気に入られたのかな?」
貴族でありながらフレンドリーで気さくな性格の、俺のおじいさん。
老若男女や身分に関係なく、関わった相手を魅了し、仲良くなってしまうのだ。
俺の推測に、カイルが至極真面目な顔で言う。
「ご隠居様なら、その可能性はありますね」
レイがここにいたら、『フィルのおじいさん、やっぱり人タラシだ』って言っていただろう。
ガルボはウキウキと、大きな体を左右に揺する。
「侯爵様に感謝しねぇと。アウステル王国の作物を育てられるなんて、なかなかねぇですから」
まるで子供のような喜び方だ。
マルコは胸に手を当てて、安堵したように微笑む。
「いただいた種は三十粒しかないので、フィル様がお手伝いに来てくださって助かりました。育て方はアウステル王国からいただいた資料を読んだので知っているのですが、土や水が違うと上手く育たないことがありますから。少し不安だったんです」
父さんもガルボたちが不安だと思って、精霊を召喚獣にしている俺をここに派遣したんだろうな。
「どこまで力になれるかわからないけど、精一杯協力させてもらうよ。ね、ヒスイ、カイル」
俺がヒスイたちに同意を求めると、ヒスイはにっこりと笑った。
【はい。成長を促進するお手伝いなら得意ですわ】
カイルもポンと胸を叩いて言う。
「雑用でしたら、俺に任せてください」
すると、ガルボは深々と頭を下げる。
「ありがとうごぜぇやす! どうぞ皆様のお力を貸してくだせぇ!」
体の大きいガルボは、声も大きくて迫力がある。
初めて会った時も、この声の大きさに驚いたんだよなぁ。
当時のことを思い出して、俺はくすっと笑う。
「さあ、頭を上げて。僕らがお手伝いできる時間は限られているから、さっそく取り掛かろう」
今年は記録的な大雪で雪解けが遅いため、冬休みが長くなっている。だけど、もうそろそろ学校へ行く準備を始めないといけない。
まぁ、レイやトーマやライラやミゼットのように、一旦自国へ帰ったあとに船や馬車で学校へ向かうわけではないから、まだ余裕があるけどね。
お辞儀をしたままだったガルボは、俺の言葉を聞いてバッと頭を上げる。
「そうでした! おい、マルコ! さっそく作業開始だ。奥から苗を持ってこい!!」
「わ、わかった!!」
指示を受けたマルコは大慌てで苗を取りに走り、しばらくして長方形のトレーを抱えて戻って来た。
「とりあえず、試しに半分だけ種を植えてみて、発芽したのがこれです」
言いながら、マルコは畑の前にトレーを置いた。
トレーには、小さな苗ポットが十数個並んでいる。
俺とカイルは傍に座って、苗ポットを見下ろす。
「わぁ、元気な新芽だ」
葉っぱに枯れた部分もないし、茎もしっかりしている。
ヒスイも新芽を見て、満足そうに微笑んだ。
【問題なく成長しているみたいですわね】
【当然よ。芽が出るまで、私がちゃんと見張っていたもの】
ミムは腰に両手を当て、誇らしげに胸を張る。
「これは、なんという植物なんですか?」
カイルが聞くと、ガルボは俺たちに作業用手袋を渡しながら答える。
「タタルっていう豆でさぁ。若い時期に収穫すれば青タタル豆、葉っぱが枯れる時期に収穫すれば完熟タタル豆が収穫できやす。侯爵様のお話ですと、青タタル豆と完熟タタル豆は見た目が全然違うそうで」
「味もかなり違うそうですよ。同じ調理法でも、まったく異なる料理になるんだとか」
ガルボとマルコの説明に、カイルと俺は「へぇ」と頷く。
「果物の中には、未熟なものをおかずとして、完熟したものをデザートとして食べるものがありますよね。そういう品種に、近いものでしょうか」
「味が違うっていうのは面白いね。料理するのが楽しみ」
豆は煮ても炒めてもいいし、ペーストにもしやすいから、いろいろな料理に使える。
品種によって味や食感も変わるので、収穫できたらいろいろ試してみたいな。
「今回は次の種を増やすため、青豆を少しだけ採って、残りは完熟させてから収穫する予定です」
マルコの説明に頷きつつ、俺は尋ねる。
「種ができたら、またこの小さい畑に植えるの?」
すると、ガルボは首を大きく横に振った。
「いえ、豆は同じ畑では連作できねぇんです。今回栽培が成功したら、次は広い畑に植えて、さらに増やそうかと思ってるんでさぁ」
「あっちの畑で、すでに準備中です」
マルコはにこっと笑い、少し先にある何も植えられていない畑を指さす。
その畑では、土モグラ数十匹が、こちらの畑同様に畝を作っていた。
畑の中心で指示を出しているのは、マルコの召喚獣のメイベルだ。
メイベルは、周りで作業をしている土モグラたちに向かって叫ぶ。
【豆は、水はけが命なんだ。マルコ様の言っていた通り、ちゃんと畝を作るんだよ!】
【【はい! 姉御ぉ!】】
土モグラたちは作業をしながら、威勢よく返事をする。
召喚獣契約は基本的に一対一で行うことが多いんだけど、動物によっては群れのリーダーと契約すると、その群れも一緒に召喚獣になる場合がある。
土モグラはそのグループ契約タイプの動物だ。
それにより、群れのリーダーであるメイベルと契約したマルコは、間接的にその群れも動かすことができるのだ。
すると、メイベルが俺たちの視線に気づいた。
嬉しそうに、マルコの元へ駆け寄ってくる。
【マルコ様ぁ! 作業は順調に進んでます!】
メイベルはキラキラした目で報告する。
俺はその表情に小さく笑って、マルコに通訳する。
「メイベルが、作業は順調だって言ってるよ」
それを聞いて、マルコは笑顔でメイベルの頭を撫でる。
「そうか。知らせてくれてありがとう、メイベル。大変だろうけど残りの作業もよろしくな。さっきフィル様に、動物用のお菓子をもらったんだ。作業が終わったら、皆にご褒美としてあげるよ」
労いの言葉に感動したメイベルは、マルコの脚にしがみつく。
【マルコ様、お優しいぃぃ。マルコ様に褒められることこそ、無上の喜びですのに! 皆のためにお菓子もくださるなんてぇ!】
メイベルのマルコ一筋っぷりは、相変わらずだなぁ。
「お菓子を持ってこられたのは、フィル様なんだが……」
ボソッと呟くカイルを、俺は笑って「まぁまぁ」と宥める。
マルコの脚にピッタリとくっついていたメイベルは、キリッとした顔でマルコを見上げる。
【マルコ様、待っていてください! 私、頑張ります!】
そう宣言すると、作業中の土モグラたちの元に戻りながら叫ぶ。
【いいかい、皆! ご褒美をくださるそうだ。手を抜いたら承知しないよ!】
マルコに対する言い方に比べると、ずいぶんと厳しい言い方だ。
しかし、発破をかけられた土モグラたちは、作業スピードを上げる。
【はい! 姉御ぉ!!】
【わかりました! 姉御ぉ!】
土モグラたちのメイベルへの忠誠も、全然変わらないなぁ。
マルコは頑張る土モグラたちから、俺たちへと視線を戻す。
「では、まずはこちらの畑に植えることから始めましょうか」
「肥料とかはいらないの? それ以外にも何か、注意点はある?」
俺の質問に、マルコは優しく答えてくれる。
「すでに石灰を撒いてあるんで、必要ありません。豆は植え初めと、花が咲く時期だけに肥料を足せばいいんです」
ガルボは目の前で二株分の穴を掘って、苗を植えていく。
「植える間隔は少し広めに。……こんくらいですかね。で、穴を掘って、苗を植えやす」
ふむふむ、二十センチから三十センチ幅か。
俺とカイルはお手本となる穴を見ながら、一緒に植えていく。
苗はそんなに多くないので、手分けをしたらあっという間に植え終わった。
マルコは畑に水を撒きながら、説明してくれる。
「豆を育てる上で、水は重要です。豆は地面の浅いところに根を張ります。地表は乾きやすく、地面が乾く度に水を与えなくてはいけません。ただ、余分に水をあげすぎるのも良くないので、畝を作って水はけをよくする必要があります」
その説明を聞いて、俺とカイルは「なるほど」と頷いた。
さっきメイベルが『豆は水はけが命』って言っていたのは、そういうことか。
「植物の種類によって、育て方が違うんですね」
「植物を育てるのは大変なんだねぇ」
カイルと俺がしみじみと呟くと、ガルボとマルコは笑った。
「大変ですが、楽しくもありやす。いい環境を整えてあげりゃあ、植物もそれに応えてくれやすからねぇ」
「綺麗に花が咲いたり、たくさん実がついたりすると、嬉しいですよ」
【いい人たちでしょ。こういうガルボたちだから、ミムもそばにいるのよ】
ミムはそう言って、ガルボの肩にちょこんと座る。
植物に愛情を注いでいるから、緑の妖精に好かれるんだな。
「さて、水やりも終わりました。本来はこのまま、じっくり成長するのを待つだけなんですが……」
マルコに視線を向けられた俺は、コクリと頷く。
「今回は種を増やすのが目的だから、ヒスイの力を借りて成長を促してほしいんだよね」
最適なタタルの栽培方法をいろいろ試すには、まずはたくさんの種が必要になる。
ヒスイの力で早く種が収穫できれば、すぐに研究に取り掛かれるというわけだ。
「はい。よろしくお願いします!」
「どうかよろしくお願いしやす!」
マルコとガルボは、揃って頭を下げる。
「ヒスイ、お願いできる?」
俺がそう聞くと、ヒスイは微笑んだ。
【ええ。充分水を吸っているようですから、大丈夫です。ゆっくり成長を促しましょう】
そうしてヒスイは、植物の成長を促進させ始めた。
急激に成長速度をあげることもできるが、植物に負担がかかりすぎてうまく育たないなんてことも考えられる。
植物の力を見極めながら成長を促すのは、精霊であるヒスイにしかできない技だろう。
俺たちは苗の傍に座り、地面が乾いてきたら水を撒く。
それを繰り返していると、苗がユラユラ動きながら成長し始める。
茎が伸び、葉も増えていく。
すごい。植物の成長を、倍速動画で見ているみたいだ。
小さな苗は、あっという間に二十センチほどの背丈にまで成長した。
「ずいぶん大きくなったね」
俺は成長したタタルの葉や茎を見つめながら、思わず感心する。
「はぁぁ、精霊様のお力はすごいもんですねぇ」
ガルボは感嘆の息を吐き、マルコはそんな父に向かって微笑む。
「親父。この状態なら、明日くらいには完熟タタルが収穫できるかもしれないな」
しかし、明るいサルマン親子とは反対に、ミムは渋い顔をしていた。
【ん~。この子、もう少しあったかくしてって言ってるわ】
苗の周りを飛びながらそう言うミムに、ヒスイも同意する。
【ええ、成長をさらに促すには、あたたかさが足りないようですわね】
カイルも苗を観察しながら、低く唸った。
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