君は僕だけの

アラレ

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13時55分

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それから歩いてほんとにすぐ、5分くらいのところにあった居酒屋に入った




「…うわ」

「今日人多いですね~」



俺の不満は美咲あおいが代弁してくれたようだ



「2名様ですか!すいませんー、カウンターしか空いてないんですけど…」


「大丈夫です」




まぁ、ゴールデンウィーク前だししょうがない



「先輩ごめんなさい、人混み苦手なのに!味は保証します!!」



顔の前で手を合わせこちらを覗き込む美咲あおいに気にしないでと返し、ちょうど2席しか空いてなかったカウンターに腰掛ける





「…先輩そっちで大丈夫ですか?」


というのは、美咲あおいは端っこで、俺がその横に座っていて、その俺の横に髪の長い泥酔女が座っているからだ



「いいよ、寝てるっぽいし」



「まだ6時すぎなのに、やば笑」





とりあえずビールを頼み、一息つく






「先輩って~元カノさんのどんなとこがいいんですか?」



「…またその話?」



「だって、6年も好きってそうとう可愛い子じゃなきゃ無理でしょ!」


そうかな

まぁ確かに、会えるならまだしも、全く会わない状態で6年もってのはあんまりないことなのか


「普通だと思うよ
そりゃ俺から見たら可愛いけど、それはそういうものでしょ」


「…意外と冷静なんですね


じゃあ、どうして?」




「うーん…」


どこが好きかなんて、もう今更そんな次元でもなくて、


でもひとつ、言えるとしたら



「…あいつといる時は、いつでも楽しかった」




「え、それだけ?」



「…悪いかよ」


美咲あおいの拍子抜けした顔に恥ずかしくなってそっぽを向いたところで、ビールと、一緒に頼んだ焼き鳥が運ばれてきた






「でも、見つけてもどうやって連れて帰るんですか?拒否られたらどうにもならないじゃないですか」




「スタンガン持ち歩いてんだよね」




言おうかどうか迷ったが、嫌われたら嫌われたで逆に好都合だと思い、周りがうるさいのもあって、彼女にだけ聞こえる声でそう告げた



「…やっば笑
そこまで来ると逆に尊敬します」



「…」


彼女が俺を嫌って、付きまとわなくなるのを期待したが、それは虚しく終わったようだ











「…たしかに、おいしい」

「でしょー?!よかったあ」




7時を前に、酒が進んできた客たちは次第に騒がしさを増していく




ふと、隣の泥酔女が起き上がり、コップに残っていた酒を飲み干したのを気配で感じた


そいつからは明らかにやけ酒のオーラが出ており、面倒に巻き込まれないようにと、美咲あおいに促されるまま少しだけ椅子ごとそいつから距離を置いた




「吉高先輩って~下の名前なんて言うんですか?」

そう聞いてきた美咲あおいに今頃?という目線を向ける


「だ、だって先輩名札つけないし!

あ、知ってると思いますけど私はあおいです!呼び捨てしていいですよ♡」



この甘ったるい声にもここ1ヶ月足らずでだいぶ慣れたようだ



「じゃあ、美咲で」


「それ苗字じゃないですかあ!
てか結局、先輩の名前は??」









「…伊央」











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