君は僕だけの

アラレ

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16時30分

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「あーーーさすがに疲れたねぇ

明日は筋肉痛確定だわ」 



「だね、仕事どうしよ」



「ほんとだ、湿布買ってかえらなきゃ」








昔は夕方までずっと出来たのに、さすがにそんな体力はなくて


3時という早さで帰宅を決めた







「待ってて」



湿布と、ついでにいろいろ買ってくる




そう言って出ていった伊央を車で1人待つ






伊央ってタバコ吸わないのかな




しばらくボーっとしてたら、ふと気になった




吸ってるの見たことないけど、実は外では吸ってるとか?




そう思って、ちょっと魔が差して、灰皿を開けてみた





「…え」




そこにはたしかに入っていた






タバコの吸殻








ではなくて









女物の口紅









ピッ





伊央が車の鍵を開ける音に、咄嗟に口紅をポケットに隠して灰皿を閉めた







おいーーーなんで隠したのー!!






「さ、帰ろっか」



「…うん!」



幸い、怪しまれることはなかった



けど、持ってきてどうするのこの口紅!








…誰のだろう




今は彼女いないって言ってたし…










「ね、ねぇ伊央」


「んー?」




「伊央ってさ、いつから彼女いないの?」





そういうと伊央はちょっといじけてしまって、私はあせる





「話聞いてた?俺、結希としか付き合ったことないって」






言ってたけど!!!!!


覚えてるけど!!!!!




「そ、そっか!」






隠したい相手ってこと?






それとも、もしかしたらこれは




相手の人から私への攻撃…?





それはありえる…








でも、そんな相手がいるならなおさら




なんで昨日、私にキスしたの








今日一日楽しくて忘れてたけど



やっぱり無視できないよ









「よし、降りよっか」



マンション下の駐車場に到着し、伊央が自分のシートベルトをはずす






もしかしたら、ほんとに覚えてないのかもしれない




お酒を飲んで酔ってたのかもしれない






それでも、もし覚えてるなら



何か、意味があるなら







「…伊央!」



「、なに?」



伊央が驚いたようにこちらを見る



私も伊央をしっかり見る






「…昨日、どうして私にキスしたの」



大丈夫、もっと恥ずかしいことは昨日全部言った!








「え?!何言ってんの?」






やっぱ覚えてるないかああああああ!!


てかむしろ私の記憶違いの方がありえるわ!!





ひーーーーー恥ずかしい!!




「そんなの好きだからに決まってんじゃん」

「だよねー!ごめんねー!

って、」



「…」


「え?!!?!」






今、私のこと好きって言った?





えーなになに、どういうこと





「…待って、知らなかったの?」




「知らないよ!!」





なに?!私が悪いのか!


え?言われたっけ?わかんない!








「…そっか、なるほどね

そこまで鈍感だとは…」





伊央はそう言ってハンドルに顔をうずめてため息を着く






あれ?なんで伊央が落ち込んでるの






と思ったらぱっとこっちに向き直る








「ま、許可なくしたのは悪いかもしれないけど、俺は謝らないよ」



「…ん?」


どういうこと?




「だって結希あのとき避けられたでしょ、でも避けなかった


だから、いいでしょ?」










「……はい」




ちょっと呆れたような、でも真面目な顔で、どんだけ可愛い言い訳だよ









心臓ばっくばくな私を他所に、伊央は私の返事を聞いてすぐ満足したように、車を降りる






たしかに、私あのとき避けられたわ



なんで避けなかったんだろう








それに、じゃああの口紅は?











結局誰のものなのか聞けなかったそれは部屋の引き出しに隠した







「…何やってんだ私」










「…結希?ご飯」



「はい!今行きます!」

















次の日起きると、やはり体に激痛が走った





「伊央~、大丈夫?」




「やばい」


伊央も同じのようだ







バスケってほんと全身運動なんだよなぁ










「じゃ、行ってくるね」




「ん、行ってらっしゃい」






そう言って半分ドアを開けて、もう一度閉める





「ん?」



振り返った伊央に忘れ物?と言うより先に、




私は引き寄せられ、伊央に抱きしめられた







「ん?え?なに?え?」





「結希、好きだよ」




離したと思ったら今度は、真っ直ぐ目を見てそうつぶやく





「え、えーーー、なにそれ」



「っはは」




恥ずかしさに耐えられず目をそらすと、

そんな私が面白かったのか今度は笑い出す






「なんか、結希が思った以上に鈍感で、俺の気持ち全然伝わってないみたいだったから」




「はい?!」




「だから今日からは、がんがん攻めるから、覚悟してね」




「ちょ、伊央!」




頭が追いつかない私を他所に伊央はさっさとドアから出ていった






私はしばらくそこに立ち尽くしていた




(今日からはがんがん攻めるから)





「えーーー!!!なにがんがんって!!

さっきのほんとに伊央?!?!」




でもはしゃぐと体が痛すぎて

すぐに正気に戻った









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