君は僕だけの

アラレ

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そして、来たる2度目のバレンタイン





今年は本気





あれから伊央の人気はじっくりと上がっていき




朝からいろんな女の子にチョコをもらっていた








「いつ渡すの」


「カナ!部活終わりかな…」




若干勇気なくなってきたけどね


もらいすぎでしょ伊央のやつ








「…めっちゃもらったね」



「…あー、うん」





帰り道、いつもちっさいリュックしか持っていない伊央は、貰ったチョコを紙袋にいれて肩からさげていた





いろんなのがあるけど、中にいくつか本気っぽいのがある




「よかったね~」



半ばいじけてみると




「…結希は?ないの?」





伊央もいじけたように返してきたのが可愛いくて、ついなごむ







「…はい」




私は今日ちゃんと言えるのだろうか





え、え、どこで言おう


タイミング難しい



やっぱり電話で言おうかな







「…あ、クッキーだ」



「うん、今年は伊央、チョコはいっぱいもらうだろうなと思ったから」




「ありがとう」




よかった、嬉しそうだ





カナと一緒にいろいろ考えて、計画も立てた




けど、いざとなると…









「じゃあ、また明日」




あーあ、家に着いてしまった




「…うん、送ってくれてありがとう」






伊央の背中が去っていく


寒いからか、少し早足で





「…伊央!」



名前を呼べば、すぐにこちらを振り返る







「ん?なに」






「…あのね、」





胸が破裂しそうだ




私が好きって言ったら、


どんな顔するかな



喜ぶ?それとも、困る?








「…伊央、いつもありがとう」






私の勇気はこの程度 






「えー、なんだよ急に

こっちこそ、これからもよろしく」





「…うん!じゃあね!」





ばか、ばか、私のばか
 




ガチャン





「おかえり~、て、あら」






家に入ってすぐ部屋にひきこもった




自分が情けなくて







またこのまま




明日からもいつも通り






伊央はもてるし、あのチョコのなかの、本気チョコを渡した人はすごいいい子かもしれない




勝てる自信がない



こんなに傍にいるのに












「ちょっと、結希、帰ってくるなりなに?」



「…お母さん」




「伊央くんに振られたの?」





「…言えなかった」



お母さんに伊央が好きって言ったことはないけど


もうそんなのどうでもいい






「はぁー、あんたあんなに頑張ったのに」



「…」




「でも、クッキーと一緒に手紙入れることも出来たのに、それをしなかったってことは、直接言いたかったからでしょ、」




「…そうだけど」






「一瞬の恥と一生の後悔、どっちがいいの」







「…お母さんちょっと行ってくる」




「行ってらっしゃい」






最後の最後でお母さんに背中押されるなんて



なんて情けない娘だ




だけど、ありがとう







娘は一瞬の恥を晒してきます

















ピンポーン





「はぁーい、あら、結希ちゃんどうしたの?」



「伊央ママこんばんわ!伊央います?」



「うん、2階の自分の部屋に、どうぞあがって」




「ありがとうございます!!」





人んちの階段をドタドタ駆け上がる迷惑な客の私に、伊央ママは後ろから頑張ってね、と声をかけた


伊央ママにもバレてることが確定


でもいい、これも恥のうち





ガチャ


「伊央!」



勢いよくドアを開けると、今帰ってきたばかりなのか、ちょうど学ランを脱いだところ




「え、結希?!びっくりしたぁ」




「好き!」



「えっ…」



「伊央が好きなの!


友達としてじゃなくて、


ああいや、友達としても好きだけど、えっと…」




「ふっ…」




あれ?笑うとこ?



「…伊央?」



「分かるよ、ちゃんと



俺も好き、結希と同じ意味で」








「…ほ、ほんとに?」





「うん笑
すーごい勢いで入ってくるからびっくりしたわ」



「ごめんなさい」










よかった、ちゃんと伝わった





「でも、伊央ほんとに私のこと好きなの?そんな素振り全然ないけど…」




「俺が人間関係めんどくさいの知ってるでしょ、

好きじゃない人とこんな毎日一緒にいない」




「…そっか、」















「ごめんね、俺から言えなくて


結希がもしこのままでいいなら、俺もそれを壊さずに、大切にしたいって思った」






なんだ、そっか、考えてることは一緒だった





この日から、私達は付き合い始めた



記念日は2月14日


覚えやすいってすばらしい



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